日常に至る経緯2
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「やあ一之瀬結理!怪我の具合は良好のようだn」
「どおりゃあああああああああっ!!」
にこやかに現れた相手を認識した瞬間、結理は全力で拳を放っていた。ずっと必ず実行しようと心に決めていた行動を起こすことに、一切の躊躇いはない。唸りを上げた拳が顔面に叩き込まれ、ぐしゃりと嫌な音を立てて頭が潰れた。
「御挨拶だなあ……せっかく労いに来たというのに」
だが手応えを感じた次の瞬間には目の前の相手は消えていて、背後に現れていた。確かな感触があったのに、まるで夢だったかのようだ。これ以上の攻撃は無意味だと判断したのと、一撃放って少しだけすっきりした結理は、凶悪に顔をしかめたままゆっくり振り返った。
視線の先にいるのは、相も変わらず仮面で顔の半分を覆った堕落王フェムト。
退屈凌ぎに遊ぶように世界を崩壊の危機にさらす相手に、遠慮も躊躇いもなく言い放つ。
「労うつもりなら素直にぶっ殺されてください」
「それは面白い冗談だ」
けらけら笑いながら、先日この世界に来たばかりの結理をゲームの駒に仕立て上げて殺しかけてくれた堕落王は、何の躊躇いもなく彼女の手首を掴むとどこかへ引っ張り出した。前回もそうだが警戒しているのにあっさり間合いに入られ、結理は戸惑いに目を丸くしながら抗議の声を上げる。
「え、ちょ、ちょっと!」
「こんな所で立ち話も何だろう。この先にお気に入りの店があるんだ。さあさあ行こうじゃないか!」
「何言って」
「それとも、今ここでまたゲームでもするかい?」
抵抗しようとする結理に振り向いた堕落王は、蓋をした試験管を取り出して振って見せた。試験管の中には青い液体と、何かの種のようなものが二つ浮いていた。何かは分からないが、中身が外に飛び出せば碌でもないことになるのだけは分かった。
「……く……分かりましたよ…!」
一瞬結理は、構わずこのまま切り刻もうかと本気で考えた。だが恐らく、先程同様何事もなくかわされる可能性が高いことと、『ゲーム』の実行を阻止できる気がしないこと。そして自分の手で騒動を引き起こすわけにはいかないと判断して、仕方なくついていくことにした。