異界都市日記13
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遠目からでも巨大さが分かる人物は、近付くと余計に威圧感を感じられた。
「結理、君は下がってい給え。あれ程の巨体だ、君では相性が悪過ぎる」
「む……了解です。中継代わります」
「頼む」
前に出る前に指示された結理は、若干不服そうに顔をしかめたがごねたりはせずにすぐ様頷いた。クラウスから電話を受け取り、中継を引き継ぐ。
「結理です。ここからはわたしが中継します。クラウスさんともイヤホンで繋がってるんで、そのまま話して大丈夫です」
『了解した。相手の特徴は?』
「さっきクラウスさんが言った通り巨大人物の異界存在です。準人型ってとこですね。目算で……13フィートぐらいはあります」
『巨大人物?13フィート!?準人型(ニアヒューマンタイプ)でそれとはまた随分デカイな』
「ポリスーツ放り投げられるくらいですからねえ……今画像送ります」
(っ!思い出したあの人…!)
驚くスティーブンにそう返してから、結理の記憶がようやく繋がった。以前見た姿とは違い過ぎていた為すぐには思い出せなかったが、顔の特徴は大きくは変わっていない。結理は撮った画像を送りながら、自分の携帯を取り出してかける。相手はすぐに出た。
『……はい』
「あ、レオ君?レオ君の友達の異界の人で、すごいヒョロい人いたよね?」
『リールさんだろ?俺も今スティーブンさんの隣で見てる!』
「だったら話早い!何か心当たりない?強化系の能力持ってるとか」
『いや全然!だってあの人俺より体重ないはずだし、そんな能力持ってるなんて聞いたことないよ!』
『それだ!』
戸惑った様子で即答するレオの声が、何かがぶつかったような音と声で遮られた。携帯を落としてしまったようで遠いが、聞き覚えのない声が必死な様子で何かを話している。
「え……何?レオ君……えっ!?」
呼びかけながら戦況を見ていた結理#は、その光景を見て思わず息を呑んだ。血殖装甲を纏ったブローディ&ハマーと組み合って力比べをしていたリールが、腕を曲げられた次の瞬間に肥大化したのだ。二回り近く大きくなったリールは血槌の腕を握り潰し、ハマーは咄嗟に大きく飛び退いた。勢い余ったハマーを、クラウスが十字の盾を撃ち出して止める。
『……クラウス!!その対象は要注意の可能性がある。無暗な攻撃は控えろ!』
「今確認した。拘束を試みる。結理」
「はい!」
「ブレングリード流血闘術 39式――」
一言の要請に返事をしながら結理もクラウスと共に駆け出した。咆哮を上げながら突っ込んでくるリールをかわし、真横を取りながら魔力を練り上げてクラウスの発動に合わせて術を放つ。
「血契防壁陣―ケイルバリケイド―」
「『氷術』!」
十字の拘束が巨体を取り囲み、直後に放たれた凍結の術が下半身を凍りつかせて固定する。相手の次の動きを注視しながら、結理は先程電話口で断片的に聞こえた言葉と自分で見たものとを擦り合わせる。
(術式とか筋肉がどうとか聞こえたけど……攻撃したらヤバいってことは……再生……いや強化に特化してる?)
「獄長…!!ハマーを連れてここから離脱を…!!」
「貴様はどうするんだ!」
「残って周辺被害を食い止めます。スティーブン、この対象の特殊能力は初めて見るものだ。情報を掴んでいるのなら更に詳細な…」
「っ!クラウスさん!」
「?!!」
唐突な気配の変化に結理が声を張り上げた時には、拘束されていたリールが全身を膨らませていた。凍結の術を重ねようとするが、それよりも早く脱皮をするように自身の身体を破って飛び出し、その際に溢れ出た体液が津波のように襲いかかった。
「うわっ!ぶへっ…!」
避け切れずに押し流された結理が受け身を取りながらもその時見たのは、少女と同じように体液の波をかぶって動きの止まったクラウスと、彼の後ろから飛び出した巨大な赤い影だった。
「クラウス兄ちゃん危なーーーーーーい!!」
「っ!待ってハマーさん!攻撃しちゃだっ!?」
飛び出したハマーを見てぎょっとして止めに入ろうとした結理だったが、立ち上がろうとして赤い水たまりに足を取られて滑って転んだ時には、既に攻撃が放たれた後だった。
「僕の百裂拳」
連続で放った拳は反撃も許さずリールを打ちのめし、吹っ飛ばす。盛大に飛ばされたリールはどこかに落ち、霧と砂埃が辺り一帯に立ち込めた。