幕間:少女の仕事
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その日結理は、注文していた物を受け取る為に武器庫(アーセナル)のパトリックの工房に足を運んでいた。大通りの裏手にある入口の前でベスパを止めると、聞き覚えのある声で何やら話しているのが耳に入った。
「こんにちわー!ああ、やっぱレオ君とザップさんだ」
挨拶と一緒に扉を開けると、中には工房の主であるパトリックとニーカと共に、予想した通りの二人がいた。
「あ、ユーリ」
「おーユーリ!例の奴ならもうちょっとで調整終わるから少し待ってな」
「はーい」
軽快に笑いかけるパトリックに笑い返して、結理は手近にあった椅子に腰かけた。それから何かに気付いた様子で隣のレオを上から下までざっと見て、わずかに眉を寄せる。
「……レオ君、ちょっと太った?」
「やっぱユーリも思うよな?バーガーばっかじゃ体に悪い!!ザップの言う通り確実に太ってるぞお前!!」
「そっちか……!!」
「そっちって?」
「この間ユーリとジャック&ロケッツバーガー買いに行った時、キノコみたいな異界人と会ったの覚えてる?」
「うん。中々愉快でタフな子だったね」
「そいつと仲良くなったんだけど、ちょっと引っかかること言ってたんだ」
頷いたレオが、ネジという名の異界人から聞いた話を結理にも話した。聞き終わった結理は、驚いたような不可解に思っているような、微妙な表情で頷く。
「ふーん、記憶がねえ……でも、HL(ここ)ならそうゆうこともあるんじゃない?」
「な?お前もそう思うだろ?」
「でもまあ確かに、能力的なのが原因で記憶がなくなっちゃってるんなら、気をつけた方がいいかもしれないけど……」
「ユーリ、できたよ」
「ありがとうニーカ」
「それは?」
「ちょっとね」
レオの問いに明確でない答えを返しながら、結理はカウンターに置かれたやや小ぶりなアタッシュケースを受け取って、その準備をしたニーカに笑いかけた。
「今度またご飯食べに行こう?」
「いいよ。この近くでいい店見つけたんだ」
「うん。楽しみにしてる。じゃあわたしはこれで。レオ君、ちゃんと野菜も食べないとお腹出ちゃうから気をつけなよ?」
「結局そっちか…!」
最終的に気にかけていたことではなく自分の体型についてを比重に置かれ、レオは愕然とした様子でため息をついた。
それから、アタッシュケースを持って出て行った結理を何ともなしに見送りながら、何となくよぎった疑問を口にする。
「……ユーリって、たまにああやって中身の見えないことやってるみたいすけど、何してんでしょうね?」
「そりゃ知らねえふりすんのが正解だ」
「え…?」
こぼれ出た疑問に即答したザップの声は、どこか真剣味を帯びていた。それを感じ取ったレオは怪訝に思いながらも、その空気につられたように居住まいを正す。
「任務内容を詮索すんなっつってんだよ。特にあいつは番頭の補佐的な事も結構やってっから、機密情報に関わるような任務が多いんだ」
「あー成程……」
言われてみれば納得できる。ライブラとしての仕事柄、仲間にすら話してはいけないような内容の任務はそれなりにあるし、レオ自身もいくつか割り振られたことがある。
普段の天真爛漫ぶりと少女の容姿に時々忘れかけることがあるが、結理はライブラ構成員としてはレオよりも先輩だし、こなしている任務数も当然多い。
「スティーブンさんと書類仕事してる時も思いますけど、ユーリって最前線に突っ込んでくイメージ強いから、そういうのと中々結び付かないんすよね」
「まあ、貧血持ちなちんちくりんのくせに基本バーサーカーだからな」
結理に対するザップの評価に、その場にいた全員が同時に頷いた。