異界都市日記10
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組織と呼ぶには小さ過ぎる集団の根城に踏み込むと、例のガスの研究を中心に行っていたのか彼等は慌ててそれらの記録らしいものを持ちだして逃げる者と、こちらへ抗戦の姿勢を向ける者とに分かれた。
そんな中、集団のリーダー格らしい、どこに目が付いているのか分からない球根のような頭をした異界生物が、数時間前同様にレオに狙いを定めた。一斉に殺到する蔦のようなものを、側にいたツェッドが次々に払い落とす。
「あーもー!めんどくさい奴だなあ!!」
「そっくりそのままお返しします。」
「潰れろくそう!!」
わずらわしそうに叫びながら、球根男は頭のてっぺんからひと際大きな蔦を繰り出す。レオを抱えたツェッドが飛び退いた直後、その上を超える形で二つの影が飛び出し、蔦を切り裂いて球根男に蹴りを入れた。
「「見つけたああっ!!」」
「ザップさん!ユーリ!!」
「あれ?君等さっきガス浴びせた奴らじゃん。」
「さっきはよくもやってくれたなあこの球根頭!!」
「……はあ!?戻ってる!?」
びしりと指を突き付けて乱入者の片方が言い放つと、球根男は驚きと戸惑いに満ちた様子で叫び、ごそごそと自分の懐を探りだした。
「ああそうだ。とっくの昔に俺らは戻ってんだよ!」
「そんなわけないだろ!」
「……って…!」
「レオ君?」
『視えて』しまったレオが思わず引きつった声を上げる。それに気付いたツェッドが怪訝そうに隣を見ると、レオは球根男に負けない慌てた様子でこっそりツェッドに耳打ちした。
レオの目に映るザップと結理のオーラの色は、普段の彼等とは異なっている。結理ではなくザップの方が、意識しなくても見えてしまう緋いオーラを纏っていた。
「ザップさんとユーリ……戻ってないです!」
「ええっ…!?」
「入れ替えた奴はこの解除剤を浴びないと戻れないはずなのに!!」
「……成程、それか」
「白状さす手間が省けたぜ!」
球根男が液体の入ったボトルを取り出して突き付けるように見せると、中身が入れ替わったままのザップと結理はにやりと同時に笑みを浮かべて、球根男に向かって地を蹴った。
「うわわわ…!来るな!!」
「『血術―ブラッド・クラフト―』……『爪―クロウ―』!!」
「斗流血法・カグツチ 刃身の四 紅蓮骨喰!」
「ええええええっ!?」
球根男が慌てて下がりながら蔦の攻撃を繰り出すが、それらは全て赤い刃爪に斬り裂かれ、大太刀に薙ぎ払われる。体が入れ替わっているにもかかわらず難なく技を発動させたことにレオが驚いている間に、攻撃が通用しないと判断した球根男が即座に身を翻して逃げ出し、ザップと結理もそれを即座に追いかけた。ツェッドとレオも慌ててその後を追う。
「「待てえぇぇぇっ!!」」
球根男は鈍足というわけではなかったが、距離は即座に詰められた。いち早く追いついた結理が球根男を掴んで転ばせ、ザップが腕を振るって血の縄を飛ばし、球根男を縛り上げる。盛大に転んだ拍子に、球根男の手から蓋の閉まったボトルが離れて宙を舞う。
「魚類!!」
「っ!」
少女の声で放たれた指示を受けて、追いつきかけていたツェッドは反射的に動いた。空中に浮いたボトルに血の糸を絡ませて自分の方に引き寄せ、キャッチする。ボトルには傷一つなく、蓋もしっかり閉められていたので中身も無事だ。
その結果は見ず、縛り上げられて地面に転がった球根男を二人は軽く踏みつけた。
「うぎゅ…!くそ~~~騙されたあ~~~!!」
「騙される方が悪い。で?あの解毒剤は本物なの?」
「さ、さあどうかな…?」
「てめえしらばっくれるつもりか…!」
「まあニセモノでもいいよ」
顔を逸らされながらの回答にザップがすごみ、結理は小さくため息をついてから刃爪を伸ばし、切っ先を球根に少しだけ刺してから、凶悪な笑みを浮かべて踏みつけている足に更に体重をかけた。それを見たザップも似たような表情で血刃を形成すると球根男に突きつける。
「その代わり今ここで切り刻んで腐葉土にしてやっからよお…!!」
「ひいぃぃぃぃぃぃぃ…!!!」
「オラオラとっとと吐けよ球根野郎!それとも皮むいてホイル焼きにしてやろうか!?」
「うわあああ!本物!本物だから刺さないでえぇぇぇぇ!!」
「うわすげえ……片っぽユーリなのにザップさんが二人いるみてえ…」
「何か悪い影響を受けてるんじゃないんですか?これは早いとこ元に戻さないとマズイですよ」
若干楽しそうに犯人を締め上げる青年と少女を眺めつつ、レオとツェッドは感想のような言葉を漏らしていた。