異界都市日記9
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「……もう……やだ……」
道の真ん中で座り込んでしまった結理が、がっくりとうな垂れたまま涙声でぼそぼそと呟いた。
「もういい……この際もう血でいい……血を……血をよこせ……わたしの空腹を満たす血を……」
「取ってつけたように自分の設定思い出してんじゃねえよ」
「て、ゆうか!大元はザップさんじゃないですか!!ザップさんがツェッド君に変な嫌がらせするから」
「駄目だーーーーーーーっ!!完 全に!裏目だーーーーーー!!何もかもがーーーー!!」
結理ががばりと立ち上がってザップに噛みつこうとした瞬間、レオが号泣しながら絶叫しだした。
「食神様の機嫌を損ねてしまいました!!」
「何だ食神て」
「……え゛、この世界食神様いるの…!?」
「食べ物で嫌がらせとかするからです!!祟られて当然なのです!!」
「当たり前じゃん!食神様の怒りをかったら……祟りが……っ!!」
「落ち着いて下さいよレオ君。結理さんも何で話が通じてるんですか」
「食罰だ…っ!フゥーーーーード!!パニッシュメン!!パーーニッシュメン!!」
「食神様食神様、懺悔致します。悪いのはわたしではありませんが止められなかった責任の一端があるのは確かです。悔い改めますのでどうか、どうか御慈悲を…!!!」
「まずいぞ」
錯乱したまま踊りだし、しまいには座り込んでぶつぶつ言い始めたレオと、跪いて天を仰ぎ見て何やら祈りだした結理を見て、ザップは顔を引きつらせた。
「こいつらがこんなに追い詰められるのはかなり珍しい」
「そうなんですか。かなり受信というか何故か共通のオリジナル宗教的な事も言い出してますから早くケアしないと」
誰が見ても分かるよろしくない事態に、ツェッドがどこかホーム的な場所はないかとザップに問いかける。これ以上暴れ出さないようにレオを抱え上げようとしたザップは、すぐにその場所に思い当たった。
「つうか…最初からあそこで良かったんじゃねえか」
四人が、正確にはザップに抱えられたレオと、ツェッドの肩を借りてどうにか歩けている状態の結理がやってきたのは行きつけのダイナーだった。ドアが開く音がして顔を上げたビビアンは、いつもと大分様子の違う四人を見て怪訝そうに首を傾げる。
「いらっしゃい…!!…って、あれ?どうしたんさレオ?ユーリも」
「結理さん、結理さん着きましたよ」
「う……あ、ビビアン…?」
疲れ切った表情の結理がビビアンと現在地を認識している間に、ザップとツェッドが真剣な面持ちで周囲を見回す。
「…何なに?何だ?この緊張感」
「大丈夫そうだな…」
「ええ。」
「ちょっと…!!命とか狙われてんなら他行ってくれよ?」
「あー…うん、そうゆうんじゃ、ないから……」
「ほらーレオーしっかりしろ」
「……?いつにも増して変な連中だな。んで、ご注文は?」
「大ハンバーガーと大ミートソーススパと大コーク」
「あ、僕もそれで」
「……同じ物を」
「わたし大チーズバーガーとカルボナーラと大ミルクで」
それぞれすぐにできて満腹になるメニューを注文し、ようやく落ち着けた安堵感から大きなため息をついた。それと同時に結理はぐったりとカウンターに突っ伏す。
だがまだ油断はできない。四人を代表して、ザップが恐る恐るといった風にビビアンに問いかける。
「…時にビビアンちゃん、最近痴情のもつれとか無い?」
「何言ってんだ馬鹿ははー、コーヒーぶっかけるぞ」
「じゃあ、お父さんマフィアの幹部とモメててカチコミとか無い?」
「ええ~~?もしそんな事になったら超あんたが巻き込まれるように超祈るわ」
「…ビビアンちゃん」
「うるさいよー殺すよー」
そんな日常的(?)な会話をしている内に料理ができ上がった。
「はい、お待ちどう。」
カウンターに並べられた馴染みのメニューが、今日はひと際輝いて見えた。
やっと、ようやく、これで等々様々な想いがこみ上げてきて、長い長い今日の全てが今度こそ報われる気がして、知らず知らずの内に涙が出てきた。
「ううっ…ううっうううううぐひっ…」
「うぅ……うう~~~~…!」
「泣ぐなっ…レオ泣ぐな…っ!!」
「結理さん、涙を拭いてください」
「ウワ…何だこいつら気味悪い…」
「聞こえてます」
「い゛ろ゛い゛ろ゛あ゛っだの゛…!!」
「あ、そう」
遠慮なくドン引きしているビビアンの素っ気ない態度も全く気にせず、四人は一斉にフォークを取って誰ともなしに掲げた。長かった時間がようやく終わる。
「それでは」
「いた」
「だき」
「ま」