異界都市日記1
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「新入りってジョニー・ランディス?ジョニー・ランディスなら来ないわよ?ていうか…来れないわ」
「何言ってんだお前、現にここに…!!!」
チェインの言葉に訳が分からないと言いたげに少年の方を見やったザップは、彼が綺麗な土下座をしている光景を見て声を詰まらせる。
「どういう事だ?」
「さっき通達があったのよ。ハドソン川で死体が上がったわ」
「あのな雌犬、こちとら写真を見て…」
「どれよ」
「これだよ」
ザップから手渡された写真を、チェインは画面のそれと比較しようと並べた。結理も横から画像を見て、
「………………」
思わず目を丸くした。死体となったらしい新人、ジョニー・ランディスは、どちらが上か下か分からない顔をしていて、ザップが見たのは引っ繰り返った状態の顔だった。その顔は確かに、土下座をしたままの少年とよく似ていた。
「…あーなるほどって…」
「わー、リアルだまし絵」
「嘘おおおおおおおお無理あるだろこれえええええええ!!!」
あんまりといえばあんまりな間違いに、ザップは信じられないといった面持ちで絶叫した。クラウスも似たような事を思っているようで、何とも言えない表情をしている。
「じゃあやっぱあっちが本名なんだ」
「はあ!?どういう意味だ結理!」
「だってこのお兄さん、さっきダイナーで会った時全然違う名前名乗ってましたもん」
「先に言えこのクソガキ!!」
「言おうとしたとこで邪魔したのザップさんじゃないですか!」
「~~~!オイこら!!これは一体何のつもりだ!?そこへ直れ討ち取ってくれる!!」
「ごめんなさいッ!!」
ザップに頭を踏みつけられている少年は即座に謝罪の言葉を口にして、あの場でどうしても助かりたかったこと、ザップがライブラの名前を口にしたこと、どうしても知りたいこと、知らなければならないこと、裏社会に通じているならばそれを知ることができるかもしれないことを必死の様子で訴えた。少年の言葉を、様子を、嘘とも演技ともすぐには断定できず、一同は数瞬黙る。
「…すまねえ旦那、俺のポカだ」
沈黙を最初に破ったのはザップだった。自分の非を素直に認め、顔をしかめて頭を掻きながら息をつく。
「てめえ爆弾しこたま体に巻いてるとかじゃねえだろうな…何しろこの街で俺達を殺ろうって奴らは引きもきらねえ…」
「っ?テレビが……」
結理の呟きで、全員がその方向を見た。何故か勝手に下りてきて電源の入ったテレビが、砂嵐を数秒映した後に映像を流し始める。
流れてきたのは起動装甲警察隊、通称ポリスーツが容疑者らしき大柄な男を護送車へ押し込もうとしている所だった。アナウンサーが興奮した様子で実況をしている中、男は突然うずくまる。
誰もが護送車に乗るのを抵抗しているのだろうと思った瞬間、画面越しでも聞こえてきた大きなうめき声をあげて、男の身体が真っ二つに割れた。
割れた身体からは幾何学的な文様と一緒に何かが飛び出してきて、手に持っていた刃を振るって辺り一帯を赤に染める。
「うっわ…!」
「白昼堂々街中で召喚魔術か…!」
「おうおう大胆なことで」
「呑気な!!神業どころの騒ぎじゃないぞ!」
「……まさか……」
「ちょっと待って!!画像が変わるわ」
どこか楽しげにぼやくザップをクラウスが叱責してる中、結理は画面を見つめたまま表情を凍てつかせて拳を握りしめた。その間に画面は再び砂嵐となり、次に映ったのは街中ではなくどこかの室内と、その真ん中に座って両隣に女性を控えさせている誰かの姿だった。
『ごきげんよう、ヘルサレムズ・ロットの諸君。私だよ、堕落王フェムトだ』
「やっぱりーーっ!!」
盛大に顔をしかめて結理は叫ぶが、当然ながら画面の向こうの相手に届くはずもなく、堕落王は歪んだ笑みを浮かべて退屈凌ぎのゲームを始めた旨を宣言した。
男から出てきた邪神は堕落王の魔術を用いて半分に割ったままの状態で生かされている。もう半分も街のどこかで召喚の最中で、邪神がその半分と融合した際には尋常でない被害が出るだけではなく、下手をすればこのHLを覆う霧すら斬り裂いてしまう。
残りの半神が組み込まれているゲートは13分に一度、1ナノ秒だけ解放され、斬撃を行う。それを手がかりに、そして制限時間以内にゲートを破壊すればこのゲームは終了する。
それらを、堕落王はまるで世間話のように楽しげな様子で説明した。
「チェイン!!各位に連絡。階上にて反応検出に備えてくれ」
「了解」
「結理、君もチェインと共に感知を。」
「了解しました!」
「ザップは待機。いつでも出られるようにしておき給え」
「おーいす」
リーダーの指示によって各々が立ち位置につく。結理はチェインと共に事務所の上階に上がり、深呼吸をすると静かに意識を集中させた。
あらゆる『気配』を探知する能力を駆使して術式の気配、魔力の気配、あるいは邪神そのものの気配。それらを捉える為に意識の触手を端々まで伸ばす。
「……そろそろね」
「…………っ!!気配が真下から!!」
「え…!?」
ぞわりと、全身が総毛立つ感覚と共に階下から強烈な気配が溢れだした。声を張り上げた結理とそれに反応したチェインは、ほぼ同時にその場から飛び退く。
「何言ってんだお前、現にここに…!!!」
チェインの言葉に訳が分からないと言いたげに少年の方を見やったザップは、彼が綺麗な土下座をしている光景を見て声を詰まらせる。
「どういう事だ?」
「さっき通達があったのよ。ハドソン川で死体が上がったわ」
「あのな雌犬、こちとら写真を見て…」
「どれよ」
「これだよ」
ザップから手渡された写真を、チェインは画面のそれと比較しようと並べた。結理も横から画像を見て、
「………………」
思わず目を丸くした。死体となったらしい新人、ジョニー・ランディスは、どちらが上か下か分からない顔をしていて、ザップが見たのは引っ繰り返った状態の顔だった。その顔は確かに、土下座をしたままの少年とよく似ていた。
「…あーなるほどって…」
「わー、リアルだまし絵」
「嘘おおおおおおおお無理あるだろこれえええええええ!!!」
あんまりといえばあんまりな間違いに、ザップは信じられないといった面持ちで絶叫した。クラウスも似たような事を思っているようで、何とも言えない表情をしている。
「じゃあやっぱあっちが本名なんだ」
「はあ!?どういう意味だ結理!」
「だってこのお兄さん、さっきダイナーで会った時全然違う名前名乗ってましたもん」
「先に言えこのクソガキ!!」
「言おうとしたとこで邪魔したのザップさんじゃないですか!」
「~~~!オイこら!!これは一体何のつもりだ!?そこへ直れ討ち取ってくれる!!」
「ごめんなさいッ!!」
ザップに頭を踏みつけられている少年は即座に謝罪の言葉を口にして、あの場でどうしても助かりたかったこと、ザップがライブラの名前を口にしたこと、どうしても知りたいこと、知らなければならないこと、裏社会に通じているならばそれを知ることができるかもしれないことを必死の様子で訴えた。少年の言葉を、様子を、嘘とも演技ともすぐには断定できず、一同は数瞬黙る。
「…すまねえ旦那、俺のポカだ」
沈黙を最初に破ったのはザップだった。自分の非を素直に認め、顔をしかめて頭を掻きながら息をつく。
「てめえ爆弾しこたま体に巻いてるとかじゃねえだろうな…何しろこの街で俺達を殺ろうって奴らは引きもきらねえ…」
「っ?テレビが……」
結理の呟きで、全員がその方向を見た。何故か勝手に下りてきて電源の入ったテレビが、砂嵐を数秒映した後に映像を流し始める。
流れてきたのは起動装甲警察隊、通称ポリスーツが容疑者らしき大柄な男を護送車へ押し込もうとしている所だった。アナウンサーが興奮した様子で実況をしている中、男は突然うずくまる。
誰もが護送車に乗るのを抵抗しているのだろうと思った瞬間、画面越しでも聞こえてきた大きなうめき声をあげて、男の身体が真っ二つに割れた。
割れた身体からは幾何学的な文様と一緒に何かが飛び出してきて、手に持っていた刃を振るって辺り一帯を赤に染める。
「うっわ…!」
「白昼堂々街中で召喚魔術か…!」
「おうおう大胆なことで」
「呑気な!!神業どころの騒ぎじゃないぞ!」
「……まさか……」
「ちょっと待って!!画像が変わるわ」
どこか楽しげにぼやくザップをクラウスが叱責してる中、結理は画面を見つめたまま表情を凍てつかせて拳を握りしめた。その間に画面は再び砂嵐となり、次に映ったのは街中ではなくどこかの室内と、その真ん中に座って両隣に女性を控えさせている誰かの姿だった。
『ごきげんよう、ヘルサレムズ・ロットの諸君。私だよ、堕落王フェムトだ』
「やっぱりーーっ!!」
盛大に顔をしかめて結理は叫ぶが、当然ながら画面の向こうの相手に届くはずもなく、堕落王は歪んだ笑みを浮かべて退屈凌ぎのゲームを始めた旨を宣言した。
男から出てきた邪神は堕落王の魔術を用いて半分に割ったままの状態で生かされている。もう半分も街のどこかで召喚の最中で、邪神がその半分と融合した際には尋常でない被害が出るだけではなく、下手をすればこのHLを覆う霧すら斬り裂いてしまう。
残りの半神が組み込まれているゲートは13分に一度、1ナノ秒だけ解放され、斬撃を行う。それを手がかりに、そして制限時間以内にゲートを破壊すればこのゲームは終了する。
それらを、堕落王はまるで世間話のように楽しげな様子で説明した。
「チェイン!!各位に連絡。階上にて反応検出に備えてくれ」
「了解」
「結理、君もチェインと共に感知を。」
「了解しました!」
「ザップは待機。いつでも出られるようにしておき給え」
「おーいす」
リーダーの指示によって各々が立ち位置につく。結理はチェインと共に事務所の上階に上がり、深呼吸をすると静かに意識を集中させた。
あらゆる『気配』を探知する能力を駆使して術式の気配、魔力の気配、あるいは邪神そのものの気配。それらを捉える為に意識の触手を端々まで伸ばす。
「……そろそろね」
「…………っ!!気配が真下から!!」
「え…!?」
ぞわりと、全身が総毛立つ感覚と共に階下から強烈な気配が溢れだした。声を張り上げた結理とそれに反応したチェインは、ほぼ同時にその場から飛び退く。