異界都市日記6.5
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(……またいる……)
フードで顔を隠した誰かは、それから何度も現れた。道を歩いている時、大道芸の営業をしている時、買い物をしている時等、その距離は徐々に近づいている。ライブラの事務所や自宅へ向かう時は撒いているものの、自宅の方は特定されるのも時間の問題だろう。
ならばぶっ飛ばして警察に突き出してやろう。というのが結理の出した結論だった。
尾行者は気配どころか身の隠し方もなっていない。隠すつもりがないのかもしれないが、付きまとわれて恐怖することを結理に期待しているのならとんだ見当違いだ。
決行を昼に決めて、結理は事務所を出た。大通りに出てしばらく歩くと、早速こちらを凝視する気配がする。気付いていないふりをしながら歩き、何でもない風に目についた横道に入った。気配も予想通りについてくる。
改めて気配を探ってみると、相手は人類のようだった。だが何か、気配の中にノイズのようなものが混じっている。
油断は禁物だと気を引き締め、あらかじめグローブをはめていた両手の掌底同士を打ち合わせた。溢れた血が静かに、素早く両腕にまとわりつき、赤い装甲となる。
「何日も前から何か用ですか?」
横道の終点より少し手前で足を止めた結理は言いながら振り向き、相手の姿を確認する。黒いパーカのフードを目深にかぶっていて顔は見えなかったが、振り向かれることが予想外だったらしくわずかに身じろいでから、意を決したように向かってきた。
こちらを捕まえように腕を広げる動作は、若干のぎこちなさに不釣り合いな程速いが対応できない速度ではない。
「うわっ!えぇっ!?」
迷わず返り討ちの選択肢を取って、無防備に広げている腕を取ろうと踏み出しかけた瞬間、結理は背後から何者かに羽交い締めにされていた。気配を全く感じなかった相手に戸惑っている隙に、正面の相手がこちらを抱え込んだ。地面に押し倒され、目元を覆うように顔を押さえこまれる。
「くっ…!」
引き剥がそうと相手の腕を掴むが、体勢が悪いこともあってびくともしない。頭を握り潰す気なのか何か術を放とうとしているのか、とにかくこの状態をいつまでも続けさせるのは危険だ。
「ユーリ!!」
何かをされる前に術を放とうと魔力を練り上げた所で、聞き慣れた声が結理を呼んだ。乱入者に驚いたらしい相手の力が緩んだ隙を見逃さず、相手との間に手をねじ込み、叫ぶ。
「『風術』!!」
「っ!!?」
手加減なしで放たれた突風は相手を吹っ飛ばした。結理は即座に飛び起きながら、追撃をかけようと吹っ飛ばした相手を見て構える。だが相手は飛ばされた勢いを利用して距離を置き、そのまま逃げ去ってしまった。
「うわあああっ!?」
「っ!レオ君!!」
追いかけようと踏み込みかけた結理だったが、悲鳴を聞いてその方向を向いた。半透明の人の姿をした何かが、レオを取り囲んで今にも襲いかかろうとしている。その何かとレオがいることに驚きながらも、即座に腕を振るう。
「『血術』……『刃鞭―エッジウィップ―』!」
振るわれた赤い棘鞭に薙ぎ払われ、人影が全て煙のように消えた。結理は逃げた気配を辿るが、既に追いつけない距離まで離れている。
「く……レオ君大丈夫!?てゆうか何でここに?」
「たまたまユーリが路地に入ってくのと、それを追いかけてる奴を見かけたんだ。それよりユーリこそ怪我は?何かされなかった!?」
「平気。その前に吹っ飛ばしたから。てゆうか……」
駆け寄ってきたレオに即答してから、結理は表情を引きつらせた。
「今の何だったの…?気配しなかったんだけど……」
「すっげー言いにくいんだけど、ユーリの事羽交い締めにしたのも、同じ奴だったよ……」
「まさか……」
若干青くなった顔で呻きつつ、結理は唯一まともに気配を捉えられた相手が逃げて行った方向を見やる。
「今の……」