異界都市日記6.5
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「ほっ」
軽い掛け声をかけながら柏手を打つと、宙に浮かんでいたボールが統率された動きで並べられた籠の中に落ちた。一礼をすると周囲から拍手喝采が巻き起こり、置かれた箱の中に硬貨や紙幣が投げ入れられる。
周囲に笑顔を向けてから、結理はもう一度礼をした。
「っ?」
それから顔を上げ、ふと目に入った姿に眉を寄せる。自分がいる公園広場から少し離れた場所に、誰かが立っていた。パーカのフードを目深にかぶっているので顔は見えないが、こちらに視線を注いでいる気配は感じる。
(……誰…?)
気にはなったが、結理はあえて気付かないふりをした。万が一ここで騒動になることを避ける為に、道具を手早く片付けてその場から離れる。
予想通りに相手は少女の後をついてきた。気配を隠すこともしない尾行者は、一定の距離を保っている。
(やだなあ……何だろう?)
心当たりはあるようなないような、といった感じだ。仕事柄誰かの恨みを買うことはあるし、大道芸をしていて難癖をつけられることもある。それ以外でも街中を歩いているだけで声をかけられたり連れ去られそうになることもあるし、それを一蹴して逆恨みをされたことも一度や二度ではない。
ひとまず縁のある場所へ行くことは避けようと判断して、結理は公園の外に止めていたベスパに荷物を乗せて走りだした。
尾行者は、ひとまずはそれ以上追いかけてくることはなかった。