異界都市日記7
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「……なまじ戦えるって思ってるからこそ……なのかな…?」
「レノール氏のことかい?」
「はい。だからこの街の空気に気付けないってゆうか……そうなるのも分かんなくはないんですけど……わたしも最初はそうだったし」
「そうか?お嬢さんは割と早い段階で気付いてたと思うけど?」
「でも普通に何も考えずに路地とか入って近道してましたしね。今思うとよく死ななかったと思いますよ」
「君も中々悪運の強い方だからね」
「何も起こらないといいんですけどねぇ……よし、これで」
「あと二枚だ」
「……書類が十枚つづりだったなんてどうして予想できただろうか……!!!」
結理がその『事件』を知ったのは、全てが終わった後だった。
異界人に逆恨みされたフィリップがライブラの者であることを知られ、脳抜きをされてあわや殺されかけた所を、事態を知ったギルベルト、レオ、ザップが敵地に乗り込んで見事に取り戻してみせたらしい。
「ザップさんずるい!!こんなことあったんならわたしに声かけてくださいよ!!」
「アホか!てめえ昨日まで全休だったろうが!だいたい病み上がりが付いてこようとすんな邪魔くせえ!」
「その腕でそれ言いますか!?」
「二人とも!ここ病室!!」
(つか昨日一日ですげえ元気になってる…!)
主にやって来るなりザップに噛みついた結理にレオが言い放つ。どうやら全休である程度回復したらしく、最後に顔を見た時にあった陰りはなくなっていた。注意された##NAME2##はまだ納まりが付かない様子だったが、それ以上声を張り上げることはせずにすぐさま心配そうな表情で病室の主達に駆け寄った。
「何だか日を置く度に酷いことになってません?ギルベルトさん……」
「はっはっは。これ以上酷いことにはなりませんよ」
「後で外傷だけでも治させてください」
「ええ、お願いします」
こればかりは聞いてもらうぞと言いたげに気合が入った申し出に、ギルベルトはにこりと笑って頷いた。結理が安心したようにため息をついていると、ギルベルトは「所で結理さん」と続ける。
「『傷』の方は癒えたようですね」
「え?あ、はい。わたしはもうばっちり完治してます!」
「いえ、そちらではなく、」
「?」
「結理さんは、そうして元気にしておられるのが一番ですよ」
「それはギルベルトさんもですよー!」
またもや気遣ったつもりが逆に気遣われ、結理は苦笑交じりにため息をついてから、その表情のまま隣のフィリップに向き直った。
「でも、二人とも何とか無事でよかったです」
「ええ本当に。ミスタ ギルベルトがいなかったら、私は死んでいました」
結理の言葉に、顔の半分を治療器具で覆われているフィリップは苦笑を漏らした。それから真剣な目で少女を見る。
「結理さん、貴女のおっしゃった意味がよく分かりました。確かに、強さとは一種類ではなかった」
「まあでも……HL(ここ)の非常識には住んでてもついてくの大変ですから、しょうがないと思いますよ?ほら、この間行ったダイナーのお姉さんが言ってたでしょ?生きてるだけでももうけもんだって。生きて反省できたんなら次に活かせばいいんですよ」
笑いながらフィリップに答えた結理は、ふと何かに気付いたようにギルベルトに視線を移した。
「ギルベルトさん、もしかしてレノールさん、このままライブラに正式に入ったりするんですか?」
「いえいえいえいえいえっいーえッ!!!」
少女からぽんと投げ込まれた言葉に、フィリップは慌てて否定の意思を返していた。
異界都市日記7 了
2024年8月11日 再掲