幕間:宵闇の宴
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「あーおいしかったー…!付き合ってくれてありがとねレオ君!」
「いやー、こっちこそありがとうだよ。あんないいとこに誘ってくれた上におごってまでもらっちゃって」
夜の大通りを、結理とレオは満足げな笑顔で歩いていた。ゲットー・ヘイツ近くに最近できたレストランは二人一組でないと入店できないシステムで、できた当初からチェックしていた結理がレオを誘い、二人で食事をしてきた帰りだ。最初は奢られることを拒否したレオだったのだが、結理から何としてもと懇願されたので、次は自分が奢るという約束をしてその場は引き下がった。
「二人一組でしかっていうからもっと気取った所なのかと思ったら、ただのデートスポットだったからねぇ……」
奢ると言い張った結理の言い分はそれだった。実の所システムを聞いていた時点で何となく察していたので、そのお詫びも込めている。
「今度気になる子がいたら誘ってみたら?」
「ええっ!?そんな子いないって…!ユーリこそそういう人いないの?」
「いたらレオ君誘って夕飯なんて行かないよー」
「あーそーだね……」
「え、何?もしかして意識した?」
「店ん中ではちょっとだけね。雰囲気がもろデートスポットーって感じだったし」
「分かる!デートじゃなくてごめんなさいって感じだった!」
レオの言葉に、結理は苦笑を洩らしながら頷いた。予測はしていたものの本当に意識して誘ったわけではないので、あの店の雰囲気は友人同士で行くには中々度胸がいる。味は良かったのだが、恐らくその手の縁がない限りはもう行くことはないだろう。
「……あ、アリギュラさんとかどうかな?このお店オススメだよーって意味もこみで」
「なんでそこチョイスすんの!?いや、まあ……変な騒動起こしてない時は割と普通の女の子だけどさ……」
「普通ではないよね。話すこと8割恋バナだし。その内三分の一ぐらい物騒だし」
「あーうん……ってユーリ、あの人とそんなに会ってんの?」
「レオ君こそ」
指摘し合い、お互いに数秒黙って歩く。
先に沈黙を破ったのは結理の方だった。
「……だって堕落王よりは何十倍もマシなんだもん…!恋バナ付き合わないと堕落王呼ぶって言うんだもん…!!あの二人に揃われたら対処できないし…!!」
「俺なんて問答無用で連れてかれるんだよ…!」
「お互い大変だね……」
はあ、と、二人は同時にため息をついた。また数秒沈黙が流れてから、疲労のような空気を壊すように結理が明るい声と一緒に笑みをこぼす。
「まあ……こうやって話せるのは平和の内だよねえ…!あ、そうだレオ君、ちょっと事務所寄っても……っ…?」
言いながら道路の方を向こうとした結理が、不意に言葉を途切れさせて前方を向いた。レオが怪訝に思うよりも早く、少女が言葉を止めた理由が向こうからやってきた。
数百メートルほど先で、突如として車が吹っ飛んだ。通行人が何事かと見ている間に、近くにいたポリスーツが現場に向かう。
「何だろう?酔っ払いかな…?」
「時間的になくはなさそうだよね……」
どことなく緊張感のない様子で結理とレオは言い合いながら、現場の方に少しだけ近づいた。あまりにも大きな事態ならばライブラへの連絡や、場合によっては自分達だけでも出向かなければならないかもしれない。
そうこうしている内にまた車が一台吹っ飛んだ。今度はこちらへ向かってきたので、結理はレオを引っ張りながら飛んできた車を避ける。車が減ったことで少しだけ開けた視界の先では、道路が凹んでいるように見えた。
「っ!ユーリ!!」
「マジ……!?」
現場の中心に佇む気配に気づいたのはその直後だった。先にそのオーラが『視えた』レオが声を張り上げた時には、結理は表情を凍てつかせながらポケットからグローブと血晶石を取り出していた。
「多分長老級。時間稼ぐから連絡と諱名よろしく」
早口でそれだけ告げて、結理は返事を待たずに血晶石を噛み砕きながら騒ぎの中心へ向かって走り出した。何が起こっているのかまだ分かっていない様子の通行人の間を抜け、引っ繰り返った車を飛び越え、中心地である道路に降り立った。
