異界都市日記19
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着信が入った頃には、霧に覆われた空には厚い雲も立ち込めていた。
「合流できなくてすいません。移動中にちょっと絡まれまして……いえ、大丈夫です。適当に追い払いました。でも……このまま直帰でもいいですか?あ、いや、大したことじゃないんです。いやいや!貧血とかは大丈夫なんで本当に!今も普通に歩いてますよ!本当にヤバかったらちゃんと言いますって!!はい……ありがとうございます。それじゃあまた明日……」
通話を終えた結理は、深いため息をついてから空を仰ぎ見た。霧と雲に覆われている空は夕暮れと重なって暗く、まるで今の自分の心情のようだと皮肉気な苦笑が漏れる。
異界と交わる存在達に言われた言葉は、少女の心に重くのしかかっていた。からかいが含まれていたものもあったが、言葉そのものに嘘や誤魔化しがないことは流石に分かっている。
自分の探しているものは、この世界で得ることはできない。
ならば、この世界にいることは無意味なのだろうか?
また以前のように、転々と異世界を渡った方がいいのだろうか?
そんな問いがよぎった直後に思い出されるのは、この異界都市に来てから交わった者達の姿だった。
(HL(ここ)は今のわたしの居場所で帰る場所……それは多分これからも変わらない。捨てるなんてできないくらい、わたしはみんなが大好きで、大切。でも……)
うつむきながら、無意識にコートの襟を握るように触れる。
雨が降り出したのはそれからすぐ後だった。ぽつぽつと降り始めた雨は、すぐに勢いを増して土砂降りになる。傘を持たない住人達が慌てて走り抜けていく中、結理は雨に打たれながらうつむいたまま歩き続けていた。
「ユーリ!?」
どれ程彷徨っていたのかは分からない。ただ慌てた声に呼び止められて気がつくと、日は完全に暮れていた。自分を呼び止めた相手を見た結理は、呆けた声で名前を呼ぶ。
「…………レオ君……」
「ずぶ濡れじゃんか!どうしたんだよこんなとこで…帰ったんじゃなかったの?」
「……あ……えっと……」
何か答えなくてはと思ったが、言葉は出てこなかった。気まずげに視線を外す少女の姿に何かを思ったのか、レオは結理の腕を掴んで引いた。
「そのまんまじゃ風邪引くから。来て」
「…………うん」