異界都市日記18
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「『血術』……『血の乱舞―レッド・エクセキュート―』!!」
少女を中心に地面から生えた赤い棘が、花が咲いたように四方に伸びた。巨大な赤く鋭い花弁は血界の眷属との距離を更に広げ、観戦していた住人達をかすめる。血界の眷属から注意は逸らさずに、結理は驚いて固まった住人達を一瞥して、告げる。
「失せて。殺すぞ…!」
少女の言葉の圧を感じ取った住人達は、一人また一人と後ずさりを始め、最後には全員が公園の出口に向かって駆け出した。
その様子を眺めていた女は、小馬鹿にしたような笑みをこぼす。
「見ず知らずの他人を助けるなんて、優しい子だね」
「屍喰らい(グール)作られたらこっちが面倒になるんでね」
「成程。それはつまり、」
「っ!」
距離は一瞬で詰められた。咄嗟に赤い盾を展開させながら攻撃を防ぎ、結理は距離を取ろうとするが、女はそれについてくる。振るわれる攻撃を受け流すが、かわしきれずにかすめる刃が傷を作っていく。
「1対1でも持て余す、と判断していいかな?」
「く…!」
指摘には答えず、結理は大ぶりの一撃を沈み込んでかわすと、一気に懐に飛び込みながら腕を振るった。
「『爪』!!」
放った刃爪の一撃は相手の脇腹を深く抉るはずだった。
だが、狙った個所が自分から抉れるように消えたことで、攻撃は簡単にすり抜けた。蝙蝠に似た形を作って本体から離れた血界の眷属の身体が、鋭い刃となって襲いかかる。どうにかかわして致命打は避けられたが、その先でも攻撃が待ち構えていた。
「っ!が…っ!」
避ける先を見越して放たれた薙ぎ払うような痛烈な一撃が結理を捉え、吹っ飛ばした。小柄な体は公園内に設置されていたオブジェを砕き、その先のベンチを破壊しながら激突して止まる。
「ぐ……く…!」
即座に立ち上がって構えようとするが、大きなダメージを受けた体はついていけずに膝をついてしまった。ベンチの残骸を支えにどうにか上半身だけでも持ち上げて前を見ると、女は既にすぐ側まで来て悠然と結理を見下ろしていた。無理矢理にでも立ち上がろうとするより早く、女は少女の首を掴んで無造作に持ち上げる。
「やっぱり同族って言っても、半端者じゃこの程度か。前に会った奴はもっと楽しめたんだけどなあ……」
「……そりゃ、どうも……」
「どうする?さっきの返事、今なら変えられるけど?」
「……はっ……」
尋ねる血界の眷属を見下ろし、結理#はふてぶてしく笑ってみせた。
「何度、聞かれても……同じだ……」
いくつもの傷を刻まれて血を流しながらも、恐れを見せずに射抜くように敵を睨み、言い放つ。