異界都市日記18
名前変換
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「……ぅ……っ……ぃたた……」
目を開けるとそこは知らない場所だった。匂いと雰囲気で病院だということは分かったが、よく世話になっている中央病院とは違うようだ。結理は慎重に起き上がって周囲を見回す。
そこは予想した通り病室で、見覚えのない場所だった。直後に強いめまいがして、頭に衝撃を与えないように慎重にベッドに沈む。
多分、銅像の破片が当たって気絶した自分を誰かが搬送してくれたのだろうと判断して、違和感のある頭に軽く触れると包帯が巻かれていた。今までの経験から絶対安静の重傷ではなさそうだと息をついて、めまいに顔をしかめながら意識を失う直前のことを思い出していた。
(結構いい技だと思ったんだけど、探知使えなくなるのかあ……消費もバカになんないし……)
巨大な銅像を難なく切り裂いた血糸の刃を形成するのには、恐ろしく集中力が必要だった。その集中のせいで周囲の気配を察知できなくなるというのはこのHLにおいては少々、いや大分リスクが高い。上手く行ったと思ったのだが、あと一歩の所で大きな欠点が見つかってしまった。
「あ、気がついた?」
改善の余地はあるだろうかと考えていると高い声で言葉をかけられ、その持ち主が結理の顔を覗き込んだ。白衣を着ているので医者のようだが、眼鏡越しにこちらに笑いかけている姿はどう見ても結理と同じかそれ以下の少女だった。
「……あの……」
「まずここは病院ね。あなた頭に怪我して倒れてたそうよ。それとちょっと重めの貧血の気があるから、後で薬処方するね」
「……はあ……」
「名前は言えるかな?」
「一之瀬結理です。あ、一之瀬が苗字です」
「一之瀬ユーリ…?」
名乗ると少女は驚いたように目を丸くした。その表情の変化に結理も驚いていると、白衣姿の少女は思案するように腕組みをして首を傾げてから、何かに思い当たったようでぽんと手を打った。
「ああ!『彼等』の言ってたじゃじゃ馬バーサーカーちゃん!」
「は…?」
いきなり謎のあだ名で呼ばれて思わず顔をしかめた結理だったが、その内容に色々と心当たりが浮かんで更に顔をしかめた。少女の表情で答え合わせが出来たらしく、女医はにこりと笑った。
「あなたのことは聞いてるわ。私はルシアナ・エステヴェス。ここブラッドベリ総合病院の医者よ」
「ルシ……ああ!わ、わたしも聞いてます!てゆうか……」
聞き覚えのあり過ぎる医師の名と病院名に、結理はめまいも忘れて起き上がって、気まずげに顔を引きつらせた。
「わたし……今日はここと貴女を尋ねる予定でして……」