異界都市日記3
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「…「外」じゃねえかこれ」
「その通りよクソモンキー」
「クソモンキーとか一個一個入れるな丁寧か」
指摘した通り、映像の場所はヘルサレムズ・ロットの中ではなかった。ついさっきあり得ないがいずれあり得るかもしれないと話していた事態が、既に現実になってしまっている。雑言を忘れないチェインに言い返しつつ、ザップはテレビを見たまま顔をしかめた。
「しかしまた早速だな。ジジイども面目丸潰れだ」
「いや、これはむしろ穴開けた連中が凄い。相当な厄ネタだ。とっとと塞がないと取り返しのつかないことになるぞ」
この事態を放っておけば間違いなく世界の均衡は崩れる。それを防ぐべく、秘密結社ライブラは早々に行動に移した。
「取り敢えずチェインは暴力団関係者を」
「はい」
「ザップはその血を分析班に回しプッシャー周りを洗ってくれ。」
「ウース」
「お嬢さんは僕に同行だ」
「…………」
「聞いてるのか結理……」
それぞれに指示を飛ばすが、最後だけ返事がなかった。咎めるように少しだけ険のある声で呼びながら少女を見やったスティーブンは、思わず声を詰まらせた。
結理の隣にいるクラウスが、ディスプレイを凝視しながら凄まじい闘気を放っている。室内の空気も軋むような威圧感に、最初に見たスティーブンだけでなくザップやチェインも何事かと視線を向けた。
「……見事だ…!!…ヤマカワさん…!!」
やがて、ディスプレイから目を逸らさずに、クラウスが静かに力強く呟いた。ヤマカワさん?誰?という空気が流れているが、クラウスは全く気付いていない様子で続ける。
「投了です…!!」
「……はー……」
クラウスの言葉を聞いて、隣に座っていた結理が緊張から解放されたように大きく息をつく。二人がずっと凝視していた画面に映っているのは、二色のボードと駒が並んでいる映像だった。
(((ゲーム…やっとる…!!)))
二人揃って何を熱中しているのかと思っていた面々は、肩すかしをくらったような愕然とした表情になるしかなかった。
「ん?」
不意に袖をくいくいと引っ張られて、ザップはそちらへ視線を移した。袖を引いたのはソニックで、ザップをじっと見上げる目には涙が滲んでいる。最初は何を訴えたいのか分からなかったザップだったが、ようやくそのことを『思い出して』腰を浮かせた。
「ああっ…!!!そうか!!しまった…!!」
すっかり忘れていたが、ザップはレオの顔の上に座っていた。慌てて退くがレオからの反応はなく、ぐったりとしている。
「お!!やべーこれ息してねえぞおい!ギルベルトさんこれ何とかなんねえかちょっとこれ…!」
ドタバタと(主にザップが)騒がしくなった事務所内で、クラウスが静かに立ち上がった。、結理はまだ座ったまま、ディスプレイを凝視している。
「……全く何と素晴らしい一局だったことか…!!」
「やっぱヤマカワさんとの対局は聖域ですねえ……」
「夢中か!!つか余韻か!!」
ザップの突っ込みが届いたかどうかは、定かではない。