異界都市日記17
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結局アリギュラは、本当に結理の自宅アパートまでついてきた。色々諦めた結理はシャワーと着替えを貸し出して、念の為に多目に買った総菜と常備菜を簡易テーブルに広げる。
稀代の怪人の一人と部屋着姿で向かい合っておかずをつついてるという光景はシュール過ぎるなと、結理はもう他人事のように思うしかなかった。
「あ~これおいしいかも~今度買ってみよ~」
「今日は買わなかったけど、隣のベーカリーのパイもおいしいですよ」
「知ってる~。向かいのパティスリーもいい感じだよ~?」
「あの辺り最近、区画クジで組み変わったせいかスイーツ通りみたいになってきてますよね」
「今季のデートスポット!とか言ってたね~」
「……そうゆうのやっぱチェックしてるんだ……」
「結理も~いい加減恋しなよ~」
「……ご縁があれば」
「自分から行くの~~!!」
「えー……めんどい」
「気になる奴とかいないの~?いい加減一人ぐらいできたでしょ~?」
世間話が例によって恋バナにシフトされ、結理は面倒そうに眉を寄せながら小判型のコロッケを頬張って、咀嚼しながら数秒黙る。
「……この間人型タイプでそこそこ顔の良い異界系の人に言い寄られて、最初は人当たり良さそうだったから話してみたんだけど、」
「!それでそれで~!?」
「最終的にその綺麗な黒髪を味わいたいって頭から食べてこようとしたから、アゴかち割ってやりました」
「……」
珍しく少女から提供されたお望みの話題に期待満々な表情で食いついたアリギュラだったが、次いで出た言葉には即座に裏切られたと言いたげな様子で口元を歪めた。その反応は見越していた結理は構わずに続ける。
「その前は手首から先を切ってコレクションしたいって人に刃物振るわれたからその刃物で切り落としてあげて……あとは住む世界が違うからせめて思いだけでも知って欲しいとかほざいて花吐く病気感染してきた女の人と最終的に何でか友達になって、目が合うなりわたしに(自主規制)して(自主規制)してグッチャグチャにしたいって言いながら迫ってきた奴はフルボッコにした後丁度通りがかった知り合いのお巡りさんに引き渡して……それから……まあ、似たようなのが片手の指で足りない程度には。恐怖と絶望に歪んだ顔の死体を愛したいって言ってえぐいメンタル攻撃してきたヤク中なんてのもいましたね。あれは最悪だったわ……」
「うぇ~全然恋バナになんないじゃ~ん!」
「こんなんばっかで恋できると思いますか?」
「……いつかいい人現れるって。ファイト」
「まさかの偏執王に慰められた…!」
ごく普通のフォローの言葉を投げられた結理は愕然と目を見開いてから、やや疲れたような面持ちでため息をつきながらパスタサラダをつついた。
「いやでも……やっぱ恋とかそうゆうのはいいですよ。自分の事情考えると相手も限られますし」
「そんなん考えるだけ無~駄~!」
「……行儀悪いですよ」
先端に肉が刺さったままのフォークを突き付けられて一応注意するが、アリギュラは聞くことなく続ける。
「恋ってのはね~人種も種族も関係なく落ちるもんなの~!相手が何だって~自分がどうだって~恋したら押して、押して!押しまくるのよ!!」
「……アリギュラさんが言うと説得力すごいですね」
その結果引き起こされた騒動を思い出しながら、偏執王の迫力に押された結理は若干引きつつも苦笑交じりに呟いた。にんまりと笑い返したアリギュラは、身を乗り出して少女の顔を覗き込む。