幕間:秘密の任務とお茶会の後で
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「……例えば、偏執王にブローディ&ハマーの奪還を手伝えって言われたら、君はどうする?」
「断ります」
「手伝わなければ君の命がないとしたら?」
「だとしてもです。いくら交流ある人だからって、仲間を売るくらいなら死んだ方がマシです」
「それだよ」
「???」
「前から言ってるけど、君は自分の優先順位が低過ぎるきらいがある」
「……あー……正直それ、自分じゃピンとこないんですよねぇ……」
「重症だな……」
「てゆうか、そんなつもりはないんです。わたしの場合……嫌な言い方しますけど、死ににくいからギリギリまで踏み込むだけなんで。本当に危ないって思ったら踏み込みませんし」
「けど周囲はそう思わないし、踏み込んだ結果を見てると説得力はないな」
「う……」
ばつが悪そうに、若干悔しげに顔をしかめた結理がスティーブンから視線を外した直後、信号が変わり車は再発進した。
「いや、まあ……予想外の怪我はちょいちょいありますけど……一応誤差の範囲内というか何というか……」
「貧血を起こしてぶっ倒れるのも?」
「……スティーブンさんのいじわる…!」
「馬鹿ではないはずなのに肝心な所でヘマをやらかす点を指摘してるだけだよ」
「くぅ…!いやでも、本当に気をつけてはいるんです。言う程考えなしじゃないんです!本当に考えなしだったらとっくの昔にスティーブンさんに氷漬けにされてますって!!」
「正直最近でもオブジェにして飾ってやろうかと思ったことはあるぞ」
「うわ怖い!!さらっととんでもないこと言った!」
「まあ冗談はさておき、自分の頑丈さに胡坐をかいているといつか本当に命を落とすことになる。それは心に留めておいた方がいい」
「ぅぐ…!はい……」
逃げ場のない空間でさらりと恐ろしい言葉を放り込まれた結理は、盛大に顔を引きつらせて悲鳴交じりに返したが、次いで返された指摘にはがっくりと項垂れるしかなかった。
それから、何ともなしに考える。
(優先順位、か……)
よく指摘されるが、やはり自身ではピンとこなかった。自分はただ、目の前にあるやるべきことに向かっていっているだけで、確かにその結果として負傷をすることはそれなりにあるが、五体満足で生きているので十分なのではないかと思っている。
……思っているが、流石にそれを口に出してはいけないことぐらいは分かっていた。
命を捨てようとしているつもりはないが、周囲からそうとられてもおかしくないような行動を取っているのだろうことは、理解しているつもりだ。
結局の所、先程口にした通り自覚している頑丈さ故の行動が、周囲の言う優先順位が低いという指摘に繋がっているのだろう。
「……要するに、怪我しなければいいってことですよね」
「……あー……いや、うん。もうそれでいいか……」
出た結論を口に出すと、スティーブンは何故か、呆れたような諦めたような苦笑を浮かべてため息をついた。
了
2024年8月17日 再掲