異界都市日記13
名前変換
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「――とまあ色々ありましたけど、約束のブツは入手できました」
「きゃ~~~~~っ!!ありがと~ユーリ~~~!!」
「これぜっっっったい!外に出さないでくださいよ?アリギュラさんに横流ししたのバレたらわたしの首が二重の意味で飛びますから。二度とこの手のお願い聞けなくなりますからね…!」
「おっけ~大事にしまっとく~!」
「それとツーショット写真なんかもあるんで、わたしのとこは消すなり加工するなりしてどうぞ」
「そんなことしな~い~!大好きなのの詰め合わせだも~ん」
手渡された写真を歓声を上げながら抱きしめるアリギュラを見やりながら、結理は小さくため息をついた。恐ろしく面倒なミッションをクリアしたと思った矢先に起こった大きな騒動は、どうにも終息した気にはなっていない。
というのも、騒動の元凶であり被害者でもあるリールが未だに行方不明だからだ。リ・ガドの話では術式解除プログラムは成功しているらしいが、肝心のリール本人の安否が確認されていないのでは解決したとは言い切れない。
(レオ君、落ち込んでないといいなあ……)
落ち込むという表現が的確かは分からないが、友人想いのレオがリールの心配をしない訳がない。そんな彼の為にも、せめて生きているかどうかぐらいは分かればいいのにと再度ため息をつくと、それに気付いたアリギュラが怪訝そうに首を傾げてから、無造作に結理の鼻をつまんだ。
「うぎゅ…!」
「な~に考えこんじゃってんの~?恋の悩み~?」
「いえ違います……あ、聞いていいですか?」
「何~?」
「体を強化巨大化する術式でおっきくなった人が、その術式を解除されたら普通に元のサイズに戻りますかね?」
「え~?それがどんな術式かに~よるんじゃな~い?その手のなら~フェムトの方が詳しいから~聞いてみたら~?」
「ならいいです。奴に聞くぐらいなら分からないままでいいです。」
「ユーリほんとフェムトのこと嫌いだよね~」
「嫌いっつーか面倒です。奴が誰にも迷惑かけずに「永遠の虚」の底辺りで永久に大人しくしてるんなら、正直いようがいまいがどうでもいいです」
聞きたくなかった名前を出された結理は、表情一つ変えずに即答した。そんな少女を、アリギュラは楽しげに笑いながら眺めている。視線に気付いた結理は訝しげに眉を寄せて首を傾げた。
「……何ですか?」
「ユーリってさ~アタシのお願いはよく聞いてくれるよね~」
「……何でも聞く訳じゃないですよ?つか、お願いって言うかほぼ脅迫ですけどね…!」
「ブラフって気付いてんでしょ~?」
「……いや、五分五分ってとこですよ実際。本当に堕落王呼ばれたら対応しきれないですし、実際本気で呼ぼうと思ってる時あるでしょ?」
「でも~本気出せば何とかできるじゃ~ん?」
「どう……ですかね…?逃げるぐらいなら出来なくはないと思いますけど……後々余計面倒なことになりそうですし」
「アタシってユーリに愛されてる~」
「………………」
楽しげな笑顔のまま断言の様な問いを放り込んできた偏執王に、結理は数秒程言葉を返せなかった。若干以上迷惑そうな視線を遠慮なく送りつつ思案気に、迷うように顔をしかめる。
「……愛してはいませんね。けどまあ……うーん……色々めんどくさいなあと思う時は多々ありますけど、大好きな人の写真撮ってきてあげたり、息抜きに付き合うぐらいならしてもいいとは思ってますよ。結構…楽しい時もありますし」
アリギュラが唐突に結理の前に現れるのに理由があることは、何となくではあるが最近は分かって来たつもりだ。ちょっとした(結理にとってはかなり大事な時もあるが)お願いがある時かただ会って話したい時か、あるいは……
答え合わせのつもりの言葉に本音も付け加えると、アリギュラはにんまりと満足げに笑った。正解か不正解かは分からないが、彼女が欲しいもしくは予測していた言葉ではあったらしい。
「アタシはユーリのこと愛してるよ~」
「っ!!?」
「ブローディ&ハマーの次くらいに~」
「そ……うですか。それは……ありがとうございます…?」
何でもないように放られた言葉に、結理は何とも言えない表情で首を傾げていた。
異界都市日記13 了
2024年8月17日 再掲