異界都市日記13
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「いたたた……!」
「結理!」
「だ、大丈夫です……って……ヤバいですクラウスさん…!!」
打った個所を押さえながら起き上がり、駆け寄って来るクラウスに返していた結理は、巨体が飛ばされて落ちた方角を凝視して愕然と顔を引きつらせる。
「ハマーさんがぶっ飛ばした人の気配が、とんでもなく大きくなっていってます…!!」
掠れた声で少女が呟いた直後、何かが爆発したような音と共に更に砂埃が立ち上った。
その光景を目撃していた全員が息をのむ中、徐々に砂煙が晴れていく。
現れたのは、正しく巨人と形容していい存在だった。
数百メートルは容易に超える周辺ビルがミニチュアに見えてしまう程の圧倒的な存在感に、ヘルサレムズ・ロットの住人達は唖然と、中には熱狂的に歓声を上げながらそれを凝視している。
誰もが様々な感情でこれからどうなっていくのかと思案している中、霧の中に巨人に向かっていく巨大な影が映った。
霧を纏うように現れたのは、HLで知らない者はいないであろう、世界最大の『個人』の姿だった。
「っ!!?ギガ!!ギガフトマシフ!!」
そんな巨体と巨体の対峙する光景を見た結理が、つい今まであった緊張していた雰囲気をぶっ飛ばし、目と口をまん丸に開いたまま表情を輝かせて拳を握り締めた。
「ギガフトマシフの巨大戦!!?ここで!?まさかの!!?大決戦!!!?」
「ユーリちゃんってこうゆうの好きなタイプ?」
「大!好!物!です!!」
「あー自分がチビだからか」
「否定しきれないのは悲しいけどそれだけじゃないです!!巨大戦は男の浪漫ですよ!!」
「?ユーリちゃん女の子だよね…?」
「それは言葉のアヤって奴です」
巨人と化したリールとギガフトマシフとでは、ギガフトマシフの方が体格としては大きい。睨み合う両者の間を縫うように武装ヘリが飛び交い、HLの危機に立ち上がった世界最大の『個人』を援護するように攻撃を開始した。一斉に放たれたミサイルは全弾巨人に命中し、その巨体を抉り削る。観戦している者達が驚きと緊張の歓声を上げる中、後ろへ傾きかけた巨人の抉れた個所から、ぼこぼこと蠢くような音がした。
次の瞬間、再生した個所が更に肥大化し、巨人は一回り以上大きくなった。それはギガフトマシフを見下ろせる程の身長になり、両者は再び睨み合う。
この異界都市史上始まって以来の巨大戦が繰り広げられると、観戦している誰もが思っていた時だった。
「あ……」
ヘルサレムズ・ロットの危機に立ち上がったはずのギガフトマシフは、ゆっくりと方向転換をすると来た道をすごすごと戻り始めた。
「逃げた!!」
「この腰抜けエエエ!!」
「……スティーブンさん、」
様々な罵声が飛び交う中、今まであった興奮の表情を全て消し去った結理が、冷えた表情で巨人を見上げながら奇跡的に通話の切れていなかった電話を耳に当てる。
「そこにあの巨人のメカニズムを知ってる人がいるみたいですけど、詳細を教えてくれますか?」
「……あのガキのああいうとこが気に食わねえんだよな……」
表情同様冷えた声で話す結理を見て、ブローディがぽつりと呟いた。