活動報告
アソ龍webオンリー『勇盟町めぐり』に出展します。※本文サンプル有
2023/11/22 13:352023.11.25(sat)にピクリエ、Xにて開催のアソ龍webオンリー『勇盟町めぐり』にサークル参加します。
【アソ龍新刊情報】
『花、ひらく』
全年齢/文庫サイズ(A6)/204p
¥1300(送料は別途かかります。)
蛇神亜双義×現代人龍ノ介の現パロ人外パロ長編小説本。
全編書き下ろし三部構成です。
※2-5のネタバレがありますのでクリア後推奨です。
本文サンプルはpixivの他にこちらの記事の追記にて。追記では5000字ですが、pixivのサンプルでは15000字まで読めます。
pixivサンプル
表紙、挿絵のイラストはむいちさんに描いていただきました。ありがとうございました。
当日はAM10:00から新刊の頒布をします。通販サイトはBOOTHです。よろしくお願いします。
【アソ龍新刊情報】
『花、ひらく』
全年齢/文庫サイズ(A6)/204p
¥1300(送料は別途かかります。)
蛇神亜双義×現代人龍ノ介の現パロ人外パロ長編小説本。
全編書き下ろし三部構成です。
※2-5のネタバレがありますのでクリア後推奨です。
本文サンプルはpixivの他にこちらの記事の追記にて。追記では5000字ですが、pixivのサンプルでは15000字まで読めます。
pixivサンプル
表紙、挿絵のイラストはむいちさんに描いていただきました。ありがとうございました。
当日はAM10:00から新刊の頒布をします。通販サイトはBOOTHです。よろしくお願いします。
追記
【以下、本文サンプルです】
一匹の白い大蛇に、ぐるぐる巻きにされている。
桜がすべて散り、緑葉が空を彩る頃。成歩堂はアパートのベランダで一人黄昏れていた。
青い空から降りかかる爽やかな風を一身に受け、白いシャツの裾が翻る。その度に自分の身体を覆い尽くす蛇に、肋骨が折れてしまいそうな程抱きしめられた。他の人には視えない蛇は、どういうわけか成歩堂が幼い頃から巻きついている。窒息でもするのではないかと心配になるくらいに強く、けれども優しい締めつけにいつも酔っていた。この蛇に、いつの頃からか愛されていた。
穢れが一つもない真っ白な鱗は青にも赤にも煌めき、柔らかな雪の如くひんやりとしている。冷たいのに、温かい。その温度にうっとりと頬を緩めると、突然背後から何者かに抱きすくめられた。
「成歩堂」
切なげに呼ぶ柔い声は、五月の風に掻き消されてしまいそうだった。白蛇のように成歩堂の腹に巻きついた腕は、成歩堂の心音を確かめようとなぞってくる。焦れったい戯れがこそばゆく、つい身じろぎしてしまった。彼のスキンシップは成歩堂にとっては些か刺激的で、未だに慣れない。耳殻に唇が触れてしまいそうな距離で、彼は憂いを囁いていた。
「成歩堂、愛している」
この男は事あるごとに愛を囁く。今にも泣き出しそうな、震えた声で。成歩堂を強く強く抱きしめて、どこにも持っていけない感情を吐き出している。その愛を拾ってやれない寂しさ、そして一種の優越感に苛まれた。節くれ立った指が成歩堂の胸の間をなぞる。心臓の上に掌を置いて頬ずりしてきた。
「どこにも行かないでくれ。オレの傍にいてくれ……」
清廉なこの男が見せる独占欲に、成歩堂は返答できなかった。
毎日執拗に愛を囁いてくる男に、成歩堂は応える術を知らない。彼の目を見て応えるのは、赦されない諸行だった。
成歩堂は白蛇と共にいるために、視えないふりをしていた。
事の始まりは、成歩堂の幼少期まで遡る。
まだ小学生にもなっていない成歩堂は、雪の降る正月、両親に連れられて成歩堂の本家を訪れていた。立派な庭を持つ本家には、松の木が植えられている。まだ幼い成歩堂が今まで目にした広場は公園くらいのものだ。以前から本家には挨拶をしに行っていたが、自我を持ったのはこの頃なので、五歳より前の記憶は怪しい。幼い成歩堂は広い庭にはしゃいで走り回った。成歩堂の小さな冒険が始まった。
表の庭をぐるりと三周ほどしてから、裏庭にまわる。裏庭には椿の咲く花壇と広葉樹があった。雪の上に咲いた赤い花々は美しく、情緒の育っていない成歩堂でもほうと一息ついた。成歩堂は鮮やかな赤色が好きだ。そして、気になる赤色もあった。
広すぎる裏庭のずっと奥に、真っ赤に塗られた小さな鳥居があった。
幾ら広い屋敷だといっても、その小さな祠の存在は異様だ。近寄ってみると、鳥居の奥には小さな建築物がある。不思議と恐れを感じず、引き寄せられた成歩堂は祠の扉に手をかけた。ぎい。木の軋む音と共に扉が開く。どうやら施錠されていないらしい。
真っ白な雪を灯りにして、暗い室内を見ようと目を凝らす。きらりと艶めく黒がそこにはあった。
赤の鉢巻きが巻かれた刀が飾られていた。
黒い鞘に巻かれた、椿と同じ色の鉢巻きが目に焼きついた。刃は見えないが美しい刀で、それが神聖なものだと幼い成歩堂でも分かる。幼さ故の探究心のせいか、触れてみたいと思った。恐る恐る手を伸ばしてみる。すると、背後から風圧のようなものを感じた。
振り返ると、巨大な白い蛇がこちらを見つめていた。
純度の高い水のように煌めいた、透明な白い蛇。庭をぐるりと囲っていた蛇の紅い目と合った。その紅に、幼い成歩堂はどうしようもなく惹かれた。その鱗に触れてみたくて、小さな手を差し出す。
「きれい」
その大蛇は清らかで美しかった。普段なら蛇を見れば泣いてしまう成歩堂が、触れたいと思ってしまうほどに、彼の白は綺麗だ。蛇は頭を垂れ、成歩堂が触れるのを良しとした。鱗はひんやりとしていて、温かい。
蛇に触れると優しい気持ちになった。胸が苦しい。苦しくて苦しくて、声もあげずに泣いてしまった。突然泣き出した幼子に蛇は困ったように目を細める。長くて細い舌で、小さい涙を拭ってくれた。
優しい蛇だった。成歩堂は一目見ただけで、その蛇を好きになってしまった。それは蛇も同じだったようで、両親に呼ばれて帰る頃には蛇にぐるぐる巻きにされていた。この蛇に触れていると安心する。結局刀には触れられなかったが、蛇がいてくれたらそれで良かった。優しい雪の降る白煙の中、成歩堂と蛇は出会った。
一匹の白い大蛇に、ぐるぐる巻きにされている。
桜がすべて散り、緑葉が空を彩る頃。成歩堂はアパートのベランダで一人黄昏れていた。
青い空から降りかかる爽やかな風を一身に受け、白いシャツの裾が翻る。その度に自分の身体を覆い尽くす蛇に、肋骨が折れてしまいそうな程抱きしめられた。他の人には視えない蛇は、どういうわけか成歩堂が幼い頃から巻きついている。窒息でもするのではないかと心配になるくらいに強く、けれども優しい締めつけにいつも酔っていた。この蛇に、いつの頃からか愛されていた。
穢れが一つもない真っ白な鱗は青にも赤にも煌めき、柔らかな雪の如くひんやりとしている。冷たいのに、温かい。その温度にうっとりと頬を緩めると、突然背後から何者かに抱きすくめられた。
「成歩堂」
切なげに呼ぶ柔い声は、五月の風に掻き消されてしまいそうだった。白蛇のように成歩堂の腹に巻きついた腕は、成歩堂の心音を確かめようとなぞってくる。焦れったい戯れがこそばゆく、つい身じろぎしてしまった。彼のスキンシップは成歩堂にとっては些か刺激的で、未だに慣れない。耳殻に唇が触れてしまいそうな距離で、彼は憂いを囁いていた。
「成歩堂、愛している」
この男は事あるごとに愛を囁く。今にも泣き出しそうな、震えた声で。成歩堂を強く強く抱きしめて、どこにも持っていけない感情を吐き出している。その愛を拾ってやれない寂しさ、そして一種の優越感に苛まれた。節くれ立った指が成歩堂の胸の間をなぞる。心臓の上に掌を置いて頬ずりしてきた。
「どこにも行かないでくれ。オレの傍にいてくれ……」
清廉なこの男が見せる独占欲に、成歩堂は返答できなかった。
毎日執拗に愛を囁いてくる男に、成歩堂は応える術を知らない。彼の目を見て応えるのは、赦されない諸行だった。
成歩堂は白蛇と共にいるために、視えないふりをしていた。
事の始まりは、成歩堂の幼少期まで遡る。
まだ小学生にもなっていない成歩堂は、雪の降る正月、両親に連れられて成歩堂の本家を訪れていた。立派な庭を持つ本家には、松の木が植えられている。まだ幼い成歩堂が今まで目にした広場は公園くらいのものだ。以前から本家には挨拶をしに行っていたが、自我を持ったのはこの頃なので、五歳より前の記憶は怪しい。幼い成歩堂は広い庭にはしゃいで走り回った。成歩堂の小さな冒険が始まった。
表の庭をぐるりと三周ほどしてから、裏庭にまわる。裏庭には椿の咲く花壇と広葉樹があった。雪の上に咲いた赤い花々は美しく、情緒の育っていない成歩堂でもほうと一息ついた。成歩堂は鮮やかな赤色が好きだ。そして、気になる赤色もあった。
広すぎる裏庭のずっと奥に、真っ赤に塗られた小さな鳥居があった。
幾ら広い屋敷だといっても、その小さな祠の存在は異様だ。近寄ってみると、鳥居の奥には小さな建築物がある。不思議と恐れを感じず、引き寄せられた成歩堂は祠の扉に手をかけた。ぎい。木の軋む音と共に扉が開く。どうやら施錠されていないらしい。
真っ白な雪を灯りにして、暗い室内を見ようと目を凝らす。きらりと艶めく黒がそこにはあった。
赤の鉢巻きが巻かれた刀が飾られていた。
黒い鞘に巻かれた、椿と同じ色の鉢巻きが目に焼きついた。刃は見えないが美しい刀で、それが神聖なものだと幼い成歩堂でも分かる。幼さ故の探究心のせいか、触れてみたいと思った。恐る恐る手を伸ばしてみる。すると、背後から風圧のようなものを感じた。
振り返ると、巨大な白い蛇がこちらを見つめていた。
純度の高い水のように煌めいた、透明な白い蛇。庭をぐるりと囲っていた蛇の紅い目と合った。その紅に、幼い成歩堂はどうしようもなく惹かれた。その鱗に触れてみたくて、小さな手を差し出す。
「きれい」
その大蛇は清らかで美しかった。普段なら蛇を見れば泣いてしまう成歩堂が、触れたいと思ってしまうほどに、彼の白は綺麗だ。蛇は頭を垂れ、成歩堂が触れるのを良しとした。鱗はひんやりとしていて、温かい。
蛇に触れると優しい気持ちになった。胸が苦しい。苦しくて苦しくて、声もあげずに泣いてしまった。突然泣き出した幼子に蛇は困ったように目を細める。長くて細い舌で、小さい涙を拭ってくれた。
優しい蛇だった。成歩堂は一目見ただけで、その蛇を好きになってしまった。それは蛇も同じだったようで、両親に呼ばれて帰る頃には蛇にぐるぐる巻きにされていた。この蛇に触れていると安心する。結局刀には触れられなかったが、蛇がいてくれたらそれで良かった。優しい雪の降る白煙の中、成歩堂と蛇は出会った。