コスプレで愛を謳え!

「なあ亜双義、脱稿したらアソ龍の宅コスしないか?」
 亜双義のアパートの一室で、ぼくは液タブに食らいつきながら提案した。
 少し大きめの卓袱台で、二人で作業している。亜双義の定位置は向かい合わせではなく、ぼくの斜め前の右側だ。親友はタイピングをやめ、無表情でぼくに視線を投げる。一旦ペンをとめ、亜双義にゆっくりと目を合わせて続けた。
「ほら、ぼくら、アソ龍に似ているって言われてるじゃないか。つまり、ぼくらがコスすれば実質それはアソ龍なんじゃないかと思って」
 亜双義はしばらく微動だにしなかった。やがて、瞳孔を開いて大きく頷いた。
「・・・・・・さすがだ成歩堂!」
「亜双義・・・・・・!」
 二人して頷きあい、再びそれぞれの作業に戻った。
「そのためには今を乗り越えるぞ親友!」
「言われなくても分かっている、相棒!」
 そうしてぼくらは、次のイベントで頒布する合同誌の完成に向けて筆を走らせた。

 このぼく、成歩堂龍ノ介が亜双義一真と出会ったのは今から約一年前。
 当時、プロを目指して公募用の漫画原稿を描いていた。しかしどうにも描けない日が続き、虚ろに過ごしていた。つまりはスランプである。
 暗い気持ちで適当にぶらぶらと歩いていたある日、たまたま立ち寄った家電用品店でとあるゲームに出会った。ぼくは何気なしにパッケージを手に取り、買うことに決めた。たまには息抜きも必要だと、そう思っての行動だった。
 結果として、ぼくはそのゲームにハマった。それはもう、ジャンル用のSNSアカウントをつくってファンアートを描き始めるまでに。二次創作界隈はまったく分からなかったが、このありあまった情熱を外に出していかなければ狂ってしまう気がした。
 そんなときに出会ったのが、亜双義一真だった。
 タイムラインに流れてきた二次創作小説を躊躇いなく開いた。当時はカップリングという存在を知らなかったのによく読もうとしたものだ。その作品の執筆者が、亜双義一真だった。
 強い衝撃を受けた。
 今まで商業作品をジャンル問わず読んでいたのでボーイズラブに偏見はなかったが、亜双義の作品はただ恋愛を描写しているわけではなかった。圧倒的な文章の技巧とストーリー展開、そして友愛を軸にした深い解釈がぼくの心を抉った。読み終わる頃には涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
 そしてぼくは、アソ龍というカップリングにハマってしまったのだった。
 亜双義の本を直接買いたくて、生まれてはじめてイベントに参加した。しかもサークル参加で。買うだけならわざわざサークル参加しなくても良かったのではとも思うが、ぼくもパッションが抑えられず、今までのファンアートをまとめた冊子をつくった。
 そのイベントで亜双義と知り合い、なんやかんやあって、お互いの部屋に遊びに行くほどの仲になった。その話は長くなるので割愛する。
 今回のイベントでも合同誌をつくる流れになった。ただ、亜双義は解釈ガチ勢なので小説にも異様なこだわりを見せる。そうこうしているうちに〆切りが近くなってしまって、二人で限界原稿生活を送っていたのだ。

 そして、無事に脱稿したその翌日。
 連日の徹夜続きで泥のように眠ったぼくらは、昼過ぎに起きて適当にカップ麺を食べた。
 歯を磨いてシャワーを浴びて、そうして準備の整った亜双義を前に、ぼくは二人分の衣装を取り出した。
「おお・・・・・・」
 亜双義は感嘆して、それっきり喋らなくなってしまった。仕方ないので促される前に説明をしてやる。
「お前なら了承してくれると思ってあらかじめ用意しておいた」
「随分と用意周到だな・・・・・・衣装はキサマが?」
「いや、寿沙都さんがつくってくれた。勿論衣装代はぼくが出したよ。後で半分払えよ」
 亜双義に衣装を渡す。ぼくが意気揚々とシャツを脱ぎ始めると、亜双義も服を脱ぎ始めた。夏真っ盛りの昼過ぎ。エアコンの効いた部屋で生まれてはじめてのコスプレをする。
 界隈ではなぜかぼくらは「リアルアソ龍の人」と呼ばれている。ぼくは似ている自覚がないのだが、亜双義が「はじめて会ったときやけにクオリティの高いレイヤーだなと思った」と言っていたからある程度は似ているのだろう。対する亜双義は・・・・・・なんというか、実際にアソが存在していたらこんな感じなのだろうと思わせるほどの美丈夫だ。本当にそっくりなのでいつか亜双義がコスプレした姿を見たいと常々思っていたのだ。
 真っ黒の制服は夏場なので少し暑かった。エアコンのある部屋で良かった。寿沙都さんは衣装づくりが得意で、やはりこの衣装も出来が良かった。どんな着心地だったか教えてほしいと言われているので、体を大きく動かしたり軽く跳ねたりしてみる。軽いはずなのに重厚感があって不思議だ。
「どうだ、成歩堂・・・・・・」
 亜双義が着替え終わったらしくそちらへ視線をやると、本物のアソがいた。やはり似すぎている。メイクもしていないのにその完成度は卑怯なのではないか。
 元々整っている鼻梁、伏せられた睫毛、鍛えられた肢体。それらを黒の制服で彩ると推しになるのは衝撃が大きい。赤いハチマキがエアコンの風に煽られ揺れている。
 推しが目の前にいる事実にぼくは混乱して、思わず推しの名前を叫びながら抱きついてしまった。
「ううっ・・・・・・ごめんよアソ・・・・・・お前の苦しみに気づいてやれなくて・・・・・・」
 ゲームプレイ中の懺悔を吐きながら亜双義に縋りつく。しかし亜双義は嫌がらない。・・・・・・というよりも反応がない。
「亜双義?」
 少しだけぼくより身長の高い親友を見上げた。
「・・・・・・・・・・・・死んでる」
 あえて形容するならばそう表現する他なかった。目も開いている。呼吸もしている。だが、確実に魂が抜けていた。亜双義は立ちながら屍と化していた。軽く頬を叩いてやると、亜双義はようやく我にかえった。
「・・・・・・すまん。推しに抱きつかれたのが受け止めきれなくて思わず・・・・・・」
「ははっ! 亜双義は龍が好きだもんな。喜んでもらえて良かったよ。それよりも亜双義」
 体を離し、亜双義をまっすぐ見て提案する。
「お前この前、龍とアソのイメージ香水つくってもらってただろ? あれ使ってハグしあえば、推しの存在を身近に感じられるんじゃないか?」
「キサマ・・・・・・天才か⁉」
「もっと褒めてくれていいぜ、親友」
 そうと決まれば亜双義の行動は早い。棚の上に飾られたジャンルの祭壇から香水瓶を二つ取り出してきた。赤みがかった香水瓶がアソ、青みがかった香水瓶が龍のイメージらしい。青みがかった香水瓶をぼくに渡してくれた。
 亜双義は香水を首元に軽く振りかける。その動作はどこか色気があり、どきりとしてしまった。顔の良い奴はなんでも様になるなと思いながら、ぼくも真似をして首に少しだけ振りかける。香水瓶を卓袱台に置き、亜双義に向けて腕を差し伸べた。
「はい。いつでもどうぞ?」
 亜双義が硬直しているので、彼のタイミングに任せようと思った。恐る恐る。震える手で亜双義はぼくを抱き寄せる。背中に回された腕の力は強い。後頭部をくしゃりと撫でられるのは悪くなかった。首筋に顔を埋められる。亜双義の吐息が肌にかかって、少し擽ったい。どぎまぎしているぼくを、亜双義は離そうとしなかった。
「すぅーーーーーーー・・・・・・」
 亜双義はそれはそれは大きく深呼吸して、推しを感じているのだった。
「・・・・・・満足していただけたようで良かったよ」
 緊張していたら推しを感じられないなと、亜双義を見習って腹を括る。亜双義の首筋に擦り寄ると、ふわりと香った。男らしさを感じながらも、桜の花びらのように柔く、芯のある香りだった。推しらしい香りではあるが、同時に亜双義らしさもあって少しだけ笑ってしまった。亜双義の作品も、桜のように美しいのだ。
 一通り推しの香りを堪能したぼくらは、端末を取り出して撮影会を始めた。こんなときのために自撮り棒を買ったのだ。自撮り棒に端末をセットしていると、亜双義がどこからか一眼レフと三脚を持ってきた。相変わらず推しのことになると本気度が段違いだ。
「しかし普通のカメラだと二人が揃っている場面は撮れないな。ビデオカメラの購入を検討するか」
 突発企画だったが、亜双義は楽しんでくれているらしい。次の機会を想定した言葉がなんだか嬉しかった。
 自撮り棒を掲げて二人で写真を撮ったり、一眼レフで撮り合いをしたりした。普段は写真を前にしてしまうと緊張してしまうが、今日は楽しかった。はしゃいでいる亜双義が可愛らしくて、ぼくもつられて笑ってしまう。
 さて、ここからが本題だ。
 一眼レフのデータを確認している亜双義に、更なる「お願い」をしてみる。
「・・・・・・なあ、亜双義」
「なんだ」
「あのさ、頼みたいことがあるんだけど・・・・・・」
 自分の声が、緊張で固くなってしまっている。ぼくの真剣さに気づいたのか、亜双義は一眼レフの画面から目を離してぼくを見下ろした。
 この提案をするのはさすがに緊張する。しかし、アソ龍推しの絵描きとしてはどうしても譲れなかった。
 息を深く吸って、思い切って提案した。
「・・・・・・お願いだ亜双義! 絡み写真がほしい!」
「・・・・・・・・・・・・は?」
 亜双義も口をぽかんと開けて絶句している。いたたまれなくなって早口でまくし立てた。
「ポーズ資料がほしいんだよ! ベッドシーン、描いたことないし・・・・・・うまく想像もできないんだ! 頼む! ぼくの命を助けると思って!」
「キサマ、よく自分の命をそこまで過大評価できるな」
「ぼくの命はこの世に一つしかないからな。そんなことより、引き受けてくれるのか、くれないのかはっきりしてくれ!」
 さすがの亜双義も、顎に手を当てて逡巡している。やはり引かれてしまっただろうか。一抹の不安がよぎった。けれど亜双義は、まだ迷いがありながらもはっきりと返答した。
「それは・・・・・・かまわないが」
「いいのか⁉」
「ああ。・・・・・・ただ」
 亜双義の次の言葉を待ったが、彼は首を横に振って切り替えた。
「まあいい。で、どうすればいいんだ?」
「そうだな・・・・・・とりあえず布団に寝転がればそれっぽくなるんじゃないか?」
「それは・・・・・・いつもやってないか?」
「そうだよなあ」
 亜双義の部屋で寝泊まりした回数は知れず。布団が一組しかないのでよく身を寄せ合って眠っている。最初の頃は亜双義が雑魚寝をしていたのだが、さすがに体を痛めてしまうと思って布団の中に引き込んだ。それからというもの、泊まりの日は一組の布団を共有している。もう一式布団を持ってくればいいのではとも考えたのだが、亜双義のあどけない寝顔を見られなくなってしまうのは勿体なかった。本人に言ったら絶対嫌がられるので言わないが。
「カメラは亜双義のを借りるぞ」
「なぜだ」
「端末で撮ると・・・・・・もしかすると他人に見られちゃうかもしれないだろ。さすがに恥ずかしい」
「羞恥を感じていながらよくこんな提案ができたな」
「それはそれ。これはこれ。『デザートは別腹』と一緒だよ」
「なんだそれは・・・・・・」
 亜双義は眉間に皺を寄せて、分かりやすく「理解できません」の意を表明する。そんな亜双義を無視して、勝手に布団を敷いて横になった。
「ほら、亜双義も早く来いよ」
「・・・・・・・・・・・・どこへ?」
「へっ? ううん・・・・・・とりあえず覆い被さってみてもらっていいか?」
 亜双義は一眼レフを片手にぼくの上に被さる。はらりと赤いハチマキがシーツに落ちた。ぼくの顔の横に右手を置かれる。
 ・・・・・・思ったより、距離が近い。
 もしかしてぼくは、亜双義にとんでもないことを頼んでいるのかもしれない。亜双義の睫毛の形がはっきりと分かってしまう。親友の前髪から覗く目は、焔が燃えさかっている。
 急激に体に熱が溜まっていく。耳や鼻や心臓が、とにかく熱い。ぼくは、とんでもないことを亜双義に頼んでいるんだ。
 一旦亜双義は体を起こして、カメラを覗いた。
「それにしても、やはりカメラだと俯瞰の構図は撮れないな。やはりビデオカメラを・・・・・・成歩堂?」
「あ・・・・・・うん、ごめん」
 思わず口元を片腕で隠し、視線を逸らしてしまう。きっとぼくは、すごくみっともない顔をしている。親友にそんな情けない顔を見せたくなかった。
「・・・・・・成歩堂」
 それでも熱くなった耳殻は隠せず、亜双義の指が体温を確かめるように触れてくる。亜双義の指は乾燥していて、ぼくと同じくらい熱かった。その温度に驚いて体が跳ねた。
「ごめん・・・・・・思ったより恥ずかしくて」
「言い出しっぺはキサマだろう」
「うん・・・・・・だから、本当にごめんよ」
 カメラの起動音が鳴る。亜双義が撮ってくれているのだろうが、正直こんな情けないところは撮らないでほしかった。
「龍視点も必要だろう。好きなだけ撮れ」
 亜双義に一丸レフを押しつけられたので、レンズを亜双義に向ける。レンズ越しの親友はやはりかっこよく、いつもより艶やかだった。伏しがちな目に陰がかかっている。心臓がやかましくて、手が震えた。三枚程撮影して、亜双義に一丸レフを渡した。
 亜双義はそれを一旦床に置いて、次なる指示を要求した。
「で? 次はどうしたらいい」
「・・・・・・ええっと」
 次。次といったら、あれだ。しかし口にしてしまえばもう戻れなくなるのではないか。不安と混乱と、大きな期待が熱で飽和されていく。
 ぼくの口から、自然と言葉が漏れた。
「・・・・・・服を脱がせてくれ」
 亜双義はとうとう無言になってしまった。紅い唇を噛んだかと思えば、ほう、と息を吐く。その様子がやけに艶めかしく、目眩がした。漆黒の目はいよいよ激しく燃え、今まで見たことのない色を醸し出している。
 黒い制服のボタンを緩慢な動作で一つ一つ外される。長い時間をかけて、制服という檻が剥ぎ取られる。ボタンを外す亜双義の手は震えていた。
 白のシャツが露わになった。前が突然軽くなる。亜双義はシャツの小さなボタンを上から外していった。エアコンで涼しくなった外気に肌が触れ、少し寒い。
 シャツのボタンが、真ん中まで外される。そこで亜双義はいきなり体を起こし、ぼくと距離をとった。何事かと身を起こすと、亜双義は布団の上で顔を・・・・・・正確には鼻を片手で押さえていた。
「すまん。オレには刺激が強すぎたようだ」
ぐ、と勢いよく鼻の下を擦る。指先と顔面には血が滲んでいた。イケメンは鼻血を拭う姿も様になるのだなあと思いながら、無意識に彼に手を伸ばしていた。
 亜双義の胸ぐらを掴み、引き寄せる。溢れてくる亜双義の血を舌で拭った。
 ちゅ、ちゅ、と、唾液の音がする。まるでキスをしているみたいだった。亜双義はかわいそうなくらい身を固くしている。そんな親友が愛おしかった。
 口の中が鉄の匂いでいっぱいになる。それでもぼくはこの衝動をとめられなかった。不衛生だとか、親友に抱く感情なのかとか、もうそんなことはどうでもよかった。そんなのは些細なことなのだ。ただ、彼を愛しい、慈しみたいという気持ちだけが燦然と輝いている。
 血が止まるまで、ぼくは亜双義の鼻を舐め取った。やがて出血は治まり、ほっとして口を離した。
「良かった。止まったみたいだな、あ、」
 亜双義の名前を呼ぼうとした途端、ぼくは彼に押し倒されていた。肩を押さえられ、シーツの上に縫いとめられる。亜双義は端正な顔を歪め、ふうふうと荒い息を吐いていた。
 肩に親友の指が食い込む。しかしそれよりも、つらそうな亜双義から視線を逸らせなかった。
「キサマ・・・・・・! オレがどんな思いで・・・・・・っ」
 血が滲む勢いで亜双義は唇を噛むと、「くそっ」と小さく悪態をついた。顎を片手で掴まれ、無理矢理あげられる。
 亜双義の切羽詰まった表情が近づいてきて、ぼくら、キスしてしまうのだなあとぼんやり考えた。
 ぼくの大きな期待が叶えられてしまう。覚悟を決めて、ぎゅっと目を瞑った。
 そんなタイミングで、亜双義の端末が壮大なメロディーを奏でた。
 亜双義の着信音はゲームのBGMで、そこまで徹底的に設定している。荘厳なオーケストラ調の音楽が部屋に満ちた。
 ぼくは驚いて目を開く。亜双義の吐息が顔にかかるほど近くにあり心臓が更に跳ねた。親友は視線を横にずらし、ぼくから体を退けた。
 立ち上がって、卓袱台に放置された端末を手に取り、耳に当てている。
「なんだ。・・・・・・は?」
 何やら通話の相手と話し込んでいる。そっけない態度から見るに、多分相手は彼の師匠であるバンジークスさんだろう。亜双義はなぜか自分の師に冷たくあたっている。ぼくの知らない亜双義の一面があると思うと、いつも胸の辺りがもやもやした。
 話が白熱しているようで、最終的に亜双義は「余計なお世話だ!」と声を荒らげて通話を切った。
 そしてぼくに向き直って、不機嫌そうに言う。
「出るぞ成歩堂。招集だ」
「なにかあったのか?」
「死神がコス合わせに誘われたらしい。今日はその打ち合わせだったみたいだが、オレたちが宅コスしているのを聞いて、オレたちもどうか、と」
「ああ。寿沙都さんがいるのか。寿沙都さんには言っておいてあるからな。でもそれだけだったらあそこまで声を荒らげる必要はないだろ?」
「・・・・・・成歩堂」
 亜双義は暗澹とした声で、ぼくの名を呼んだ。
「次は覚悟しておけ」
 次、と言われ、思わず首を捻る。亜双義はため息をついて、胡乱げな目をした。
「次は容赦しないということだ。分かったら着替えて出るぞ」
「え・・・・・・あっ!」
 そこでようやく言葉の意味が分かって、急激に顔が熱くなった。今回は途中で終わってしまったが、亜双義曰く「次」があるのだ。つまり、また宅コスをする機会があるということと、次こそぼくらはキスをするということ、であるのだ。
「行くぞ、相棒」
「ま、待ってくれよ亜双義!」
 ぼくは大慌てで着替えたが、もう頭は亜双義でいっぱいだ。そんな悶々とした状態で、ぼくは外に出なければいけないのだった。
 みんなと会ったときにヘマしなければいいなあ、とどうしようもないことを祈るばかりだ。
2/2ページ