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そのほか詰め

(おままごと)
 両手にいっぱいのぬいぐるみを抱いて来た実結が、ユウキに「おままごとしよっ」と声をかけている。ユウキは宿題をやっていたらしいが、鉛筆を置いて「いいですよ」と答えた。
「あのね、ミユがママでね」
「はい」
「くまざぶろうがパパでね」
「はい」
「いちろうがこどもでね」
「はい」
「エリーゼがじょおうさまでね」
「女王様が出てくるんですか」
「それでこのこがペットのねこちゃんで」
「どう見てもクマなのに……」
「こっちのこがね、いちろうのがっこうのせんせいで」
「家庭訪問とかやるんですか?」
「それでね、このこがきんじょのおともだちで」
「……ぼくは?」
「あれ?」
「ぼくは何の役なんですか?」
 あれー、と実結は首を傾げる。すっかりユウキの配役を忘れていたようだ。

「……プールのせんせい」
「プールの先生」
「エリーゼのプールのせんせい」
「女王陛下の……」

 しばらく沈黙した後で、ユウキは「ざぶんざぶん」と言いながらクロールの動きをして見せる。実結はといえば、『こんなはずでは……』という顔でそれを見て、それから自分のぬいぐるみたちを見て、意を決したように「ミユ、プールやります! がんばります! おりんぴっくです!」と宣言した。
 一部始終を見ていたタイラが、腹を抱えて笑っていた。




(いい買い物しましたね)
 駄菓子屋で二人並んだユウキと実結が、こそこそと話している。
「一人百円ですからね。ほしいの教えてくれたらぼくが計算してあげます。百円以内で、いっぱい買いましょうね」
「わかった!」
 嬉しそうに店内を見て回る実結に対し、ユウキはほとんど動かないまま『あれとこれを買うと……残り50円で……』と頭を悩ませる。
 冷たいショーケースによじ登った実結がアイスを引っ掴んで「ミユ、これにする!」と潔く言った。
「これくださいな!」
「ミユちゃん……」
先ほどの会話を聞いていたらしい駄菓子屋の店主が「お嬢ちゃん、これ150円だけど大丈夫?」と苦笑する。しょんぼりする実結を見て、「買います」とユウキが言った。

 帰り道、アイスをちゅうちゅう吸って上機嫌の実結に「よかったですね」とユウキは笑う。
「これ、ユウキくんにあげる」と二つあるアイスの一つを、実結はユウキに差し出した。それを受け取って、同じように吸いながら、ユウキは「……やっぱりアイスが一番ですね」と言う。それを真似して実結も「やっぱりアイスがいちばんですねえ」と妙に感慨深そうに言った。
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