地下牢から地下水路を進んでいくと、巨大な滝が流れる川にたどり着いた。かつて、レブンとカミュが囚われていた際に、脱出した場所である。
「ウルノーガも居ない。国へ戻ったところで私の居場所などない。・・・騎士は２人も要らない。国を護るのはグレイグだけだ。」
ホメロスは崖から飛び降りようとした。しかし、素早く腕をつかまれ、長身の男の体に倒れた。
「・・・グレイグ・・か。貴様もしつこいな。ここまで私を追いかけてくるなんて・・・。」
「馬鹿野郎！！！！約束したではないか！！！！生きて待っていろと！！！」
「・・・ああそうだったな・・。だが、話すことなど何もないのだよ！！！この先のことなどお前ひとりですればいいではないか！！お前は民にも王にも慕われているのだからな！！！」
「それは違う！！！！よく聞いてくれホメロス・・・。俺はお前の先に行く、それは違う！！！俺の方がお前に憧れて、お前になりたかった。」
「・・・な・・・何だと！？」
「お前には何度も助けられた。俺は直情的で考えるよりも先に体が動いてしまう・・・。だが、お前は先の状況を分析し、兵士や民たちの犠牲を減らすように戦略を考えている。それに、突っ走ってしまう俺を魔法で助けてくれた。お前がいなければ俺は命を落としたことだってあった！！」
「・・・・今更そのようなことを言っても遅いぞ！！グレイグ！！」
ホメロスは怒りの感情をぶつけていたが、涙がぽろぽろと流れ出していた。
「・・・頼む。ウルノーガは倒したが、まだ真の敵がいるようだ。・・・レブンが言っていた。だから、共に王国やロトゼタシアを護ってくれないか？」
「・・・・・・。」
「俺はまた、お前と共に戦いたい！！お前と剣や碁で勝負したい。デルカダールやイシの村を再興させたい。」
グレイグは細いホメロスの体を強く優しく抱き、ホメロスは男の逞しい胸の中で涙を流し続けた。そして、一言口にした。
「・・・グレイグ・・。俺は国王や民たち・・・そして、お前に認められたかった。俺の存在を・・・。」
グレイグは強く抱きしめながらホメロスの涙を拭った。
レブンたちが崖の前に駆け付けていたころ、夜が明け、美しい朝日が昇っていた。