幼馴染な二人の日常
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カチャンッ。
ああ、またか。
ガラス製品のもう随分と聞き慣れた音が聞こえた。既に終わりかけていた閉店作業を切り上げて階段を上がり、物置部屋と化した木製の扉を開ければ、そこには案の定見知った姿が。
「また薬を盗んできたのかな?」
「きゅきゅっ。」
身体は透けてふよふよと浮かぶ、頭にリボンをつけたオバケの女の子。僕によく懐いてくれて、お菓子をあげると嬉しそうにしてくれるので、根は良い子のはず……。
困ったことに、何故かグレイのお店に行っては夜な夜な薬瓶を盗んで僕の家に置いてを繰り返す常習犯なのだ。その行動の理由は未だに不明なので、グレイから何度もお小言を貰っている。
「盗んできちゃダメって言ってるでしょう。今日は何を持って来ちゃったの。」
「きゅー。」
素直に差し出される薬を手に取り、薬瓶につけられたラベルを見る。
「風邪薬?どうして。」
「きゅー!きゅー!」
僕の周りを一生懸命にぐるぐる回り、正面で止まったかと思えば顔の前まで近づいて。その目は真剣さを宿していた。
オバケの言葉を全て理解することは難しい。よく懐かれて世話を焼いてしまう僕でも時折分からないことがある。グレイなんてもっと分からないだろう、恐らく。
……この子はもしかすると僕を気遣っている。なんとなくだが、そんな気がした。
「僕のために持ってきてくれたの?」
「きゅっきゅっ!」
小躍りが始まり、ぴょんぴょんと空を跳ねる。かと思えば僕の手から薬瓶を奪い、小さな手で蓋を開けようと必死になる姿を見て、そっと視線を合わせてみた。
「ありがとう。僕が風邪ひいてるのが分かるんだね。」
「きゅう。」
「でも僕のためだとはいえ、盗むのはいけないことだよ。」
「きゅー……。」
「心配かけちゃった僕も悪いけどね。これは僕が買い取るから、グレイに謝りに行こう。できる?」
「きゅ!」
ついでにこの溜まりに溜まった薬瓶を箱ごと返却しよう。いつの間にこんなに溜まったのやら。
――カランカラン。
「ああ、そういえば鍵を閉めていなかったね。こんな時間にこんな小さな店に来る奴は。」
「ノアー、ちょっとそこのオバケちゃんとお前にお話があるんだけどー?」
「きゅー!」
「うわ!ドロボーオバケ!俺の薬どこよ!?」
「きゅきゅー!」
ああ、これはあれだ。反省ゼロだ。
店の看板をクローズにしようがお構いなくこんな時間にやってくる彼は、このオバケが持ってきた薬を作っている当の本人で幼馴染で、親友だ。オバケは彼の周りをぐるぐる回っては楽しそうにしている。まるでイタズラが成功した子どものようだ。
「君の探し物はこれでしょ。はい、お金。」
「そうそう、風邪薬。症状は?」
僕の手からお金を受け取り薄手のコートのポケットに入れ、何事もなかったかのように指先でオバケをちょちょんとつついて話しかけてくる。最初から僕が風邪をひいていることに予想がついていたのだろう。だからこのオバケが悪気無く盗ったわけではないことも。
グレイの人差し指に捕まってゆらゆらと揺らされているオバケ。その様子を見る彼の顔は穏やかだ。
「ちょっと無理したかも。熱っぽいんだ。」
「咽喉痛や頭痛は?」
「今のところは無いよ。違和感も無い。」
「そう、じゃあその薬飲んでちゃんと寝ることだ。あ、その木箱に入った薬瓶は返してもらおうか。」
そう言った彼は僕ではなく、目の前のオバケに視線が向いている。肝が据わっているオバケは特に気にした様子もなく、木箱の側まで飛んでいった。
「こんなに溜め込んで……。まったく何で持ってっちゃうかな?ねえ、君。」
「きゅ〜。」
「薬にも消費期限があるのよ。持って行かれちゃ困るからね。もう辞めてよ。」
「きゅ。」
「何言ってるか分からないけど反省してないのは分かった。」
よいしょと言いながら、なかなかに重たいそれを腕に抱えて扉を開けようとする彼に、それじゃあ無理だろうと取っ手に手を掛けた。何故か彼はこちらを見て微笑んだため、むず痒くなり思わず目を逸らしてしまった。
「ありがと。それじゃ、また様子見に来るよ。無理すんじゃないよ〜。」
「分かったよ。グレイも気をつけて。」
「きゅきゅ〜。」
「うん?君もついてくるの?良いけど、俺の家荒らさないでよ。」
「きゅっきゅっ。」
なんだかんだ面倒見の良いグレイのことだ。きっとそういうところにあのオバケも惹かれたのだろう。案外、僕よりも彼の方に懐いているのかもしれないな、なんて。
彼の頭の上に乗っかるオバケ。仲良しで何よりだ。
「二人とも、夜遅いから気をつけて帰るんだよ。」
「はーい。おやすみ、ノア。」
「きゅっきゅきゅ〜!」
微笑ましい二人の後ろ姿を見送り、そっと扉を閉めて残り僅かな閉店作業を開始した。今日は薬を飲んで早く寝なきゃな、なんて思いながら。
ああ、またか。
ガラス製品のもう随分と聞き慣れた音が聞こえた。既に終わりかけていた閉店作業を切り上げて階段を上がり、物置部屋と化した木製の扉を開ければ、そこには案の定見知った姿が。
「また薬を盗んできたのかな?」
「きゅきゅっ。」
身体は透けてふよふよと浮かぶ、頭にリボンをつけたオバケの女の子。僕によく懐いてくれて、お菓子をあげると嬉しそうにしてくれるので、根は良い子のはず……。
困ったことに、何故かグレイのお店に行っては夜な夜な薬瓶を盗んで僕の家に置いてを繰り返す常習犯なのだ。その行動の理由は未だに不明なので、グレイから何度もお小言を貰っている。
「盗んできちゃダメって言ってるでしょう。今日は何を持って来ちゃったの。」
「きゅー。」
素直に差し出される薬を手に取り、薬瓶につけられたラベルを見る。
「風邪薬?どうして。」
「きゅー!きゅー!」
僕の周りを一生懸命にぐるぐる回り、正面で止まったかと思えば顔の前まで近づいて。その目は真剣さを宿していた。
オバケの言葉を全て理解することは難しい。よく懐かれて世話を焼いてしまう僕でも時折分からないことがある。グレイなんてもっと分からないだろう、恐らく。
……この子はもしかすると僕を気遣っている。なんとなくだが、そんな気がした。
「僕のために持ってきてくれたの?」
「きゅっきゅっ!」
小躍りが始まり、ぴょんぴょんと空を跳ねる。かと思えば僕の手から薬瓶を奪い、小さな手で蓋を開けようと必死になる姿を見て、そっと視線を合わせてみた。
「ありがとう。僕が風邪ひいてるのが分かるんだね。」
「きゅう。」
「でも僕のためだとはいえ、盗むのはいけないことだよ。」
「きゅー……。」
「心配かけちゃった僕も悪いけどね。これは僕が買い取るから、グレイに謝りに行こう。できる?」
「きゅ!」
ついでにこの溜まりに溜まった薬瓶を箱ごと返却しよう。いつの間にこんなに溜まったのやら。
――カランカラン。
「ああ、そういえば鍵を閉めていなかったね。こんな時間にこんな小さな店に来る奴は。」
「ノアー、ちょっとそこのオバケちゃんとお前にお話があるんだけどー?」
「きゅー!」
「うわ!ドロボーオバケ!俺の薬どこよ!?」
「きゅきゅー!」
ああ、これはあれだ。反省ゼロだ。
店の看板をクローズにしようがお構いなくこんな時間にやってくる彼は、このオバケが持ってきた薬を作っている当の本人で幼馴染で、親友だ。オバケは彼の周りをぐるぐる回っては楽しそうにしている。まるでイタズラが成功した子どものようだ。
「君の探し物はこれでしょ。はい、お金。」
「そうそう、風邪薬。症状は?」
僕の手からお金を受け取り薄手のコートのポケットに入れ、何事もなかったかのように指先でオバケをちょちょんとつついて話しかけてくる。最初から僕が風邪をひいていることに予想がついていたのだろう。だからこのオバケが悪気無く盗ったわけではないことも。
グレイの人差し指に捕まってゆらゆらと揺らされているオバケ。その様子を見る彼の顔は穏やかだ。
「ちょっと無理したかも。熱っぽいんだ。」
「咽喉痛や頭痛は?」
「今のところは無いよ。違和感も無い。」
「そう、じゃあその薬飲んでちゃんと寝ることだ。あ、その木箱に入った薬瓶は返してもらおうか。」
そう言った彼は僕ではなく、目の前のオバケに視線が向いている。肝が据わっているオバケは特に気にした様子もなく、木箱の側まで飛んでいった。
「こんなに溜め込んで……。まったく何で持ってっちゃうかな?ねえ、君。」
「きゅ〜。」
「薬にも消費期限があるのよ。持って行かれちゃ困るからね。もう辞めてよ。」
「きゅ。」
「何言ってるか分からないけど反省してないのは分かった。」
よいしょと言いながら、なかなかに重たいそれを腕に抱えて扉を開けようとする彼に、それじゃあ無理だろうと取っ手に手を掛けた。何故か彼はこちらを見て微笑んだため、むず痒くなり思わず目を逸らしてしまった。
「ありがと。それじゃ、また様子見に来るよ。無理すんじゃないよ〜。」
「分かったよ。グレイも気をつけて。」
「きゅきゅ〜。」
「うん?君もついてくるの?良いけど、俺の家荒らさないでよ。」
「きゅっきゅっ。」
なんだかんだ面倒見の良いグレイのことだ。きっとそういうところにあのオバケも惹かれたのだろう。案外、僕よりも彼の方に懐いているのかもしれないな、なんて。
彼の頭の上に乗っかるオバケ。仲良しで何よりだ。
「二人とも、夜遅いから気をつけて帰るんだよ。」
「はーい。おやすみ、ノア。」
「きゅっきゅきゅ〜!」
微笑ましい二人の後ろ姿を見送り、そっと扉を閉めて残り僅かな閉店作業を開始した。今日は薬を飲んで早く寝なきゃな、なんて思いながら。
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