restarrt! 異変後
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「ほらカミュ、ティッシュ」
「グスッ…すみません」ズビビィ!
今日。逆プロポーズをしたら、カミュを泣かせてしまいました。
事の発端はたまたま訪れた屋敷でおきた。
主人のルドマンさんが、結婚式のリハーサルをしたいとお願いしてきたのである。そんなわけあるかいって話だけどそのまんま。近々行われる娘の結婚の、神父役として練習をしたいとのことだった。
そこで名乗りをあげたのが、好奇心旺盛な勇者イレブンである。シルビアさんとの世助けパレードを経て吹っ切れたのだろうか。照れもせずに、颯爽と膝をついて、イレブンはマルティナにプロポーズの言葉をかけた。
絵だ。思わず両手を胸の前で繋いでしまった。異国の王子と姫――こんな未来もあったのかもしれないと、頬のにやけが加速した。
「もう、はずかしいから、カオみないで…」
このときのマルティナは今までで一番愛くるしかった。さすがは天然タラシだ。リハーサルとはいえ、マルティナの受け答えもまるで本番をみているようで、微笑ましかった。
そう、ここまでは微笑ましいで済んだのだ。
ルドマンさんも練習できて、人助けが済んで勇者様も満足したはずなのに、彼は何を思ったのか。
「次はアカリの番だね」
なーんて、ひまわりのような笑顔で私に声をかけてきたのである。
――これは悪魔の子だ。
汚名だということは重々承知だが、反射的によぎったことをどうか許してほしい。私を含め仲間に散々甘やかされてきたイレブンは、時々イタズラ小僧の顔を出すのだ。
「いやいや私はそういうの向いてないから」
「あら。私やセーニャにはよく好きだと言ってくれるじゃない」
「そっそれはそれ!こんな人に囲まれて言えないよ…!」
まさかのマルティナにまわりこまれてしまった。自分だけ見世物にされたのが気に入らないのだろうか。いじるならグレイグ将軍のほうにしてほしいと密かに思う。
「僕たちのまえでも言ってる」
「好きと結婚しようは違う!」
追撃するイレブンに後ずさりをする。助けを求めるためにロウさんに目配せをしたが温かな笑顔で返された。ではシルビアさん…!わあ、謎のウインクをくれた。グレイグさんとカミュは――不安と期待が入り交じったような顔でこちらを見ている…!
…。
結果、敗北した。
私は期待の空気を壊してまで自分を通すことができない類の人間だった。
やれば、気が済むでしょう、やれば。
腹を括り、辺りを見回す。ここでまたマルティナを指名することは許されない。結婚式に乱入する不届き者のようになる。嗚呼、ベロニカとセーニャがいれば……。未だに再会できていない姉妹を想う。
平和に解決できそうなのはあと一人。だけど……。
それはだめだな。
ゆっくりと、私は視線を落とした。
ここでシルビアさんに頼るのは、違うや。いくら心が乙女でも、ここには〝彼〟がいる。シルビアさんにも、私自身にも失礼だ。その彼は頼れるお兄さん…ではなく素直な子犬になってしまったけど。
……うん。本当に、子犬みたいだよ。
私は本命の彼に手が届くくらい、距離を詰めた。
そして冒頭に至る。
「まさかそんなに喜んでくれるとは」
「だって、グスッ…記憶も思い出もなくて心細かったですし…。それでも受け入れてくれるなんて」
屋敷を後にして、船の中ですぐ相手――カミュと二人になれた。
急にプロポーズをされて最初は疑っていたカミュも、何回問うても折れない私に感極まってしまった。
「はは、だってカミュはカミュだから。やっぱり、大切な存在なのは変わらないよ」
捨てられた子犬みたいで母性が擽られる。ふしぎな気分だ。いつもなら言いづらいことが簡単に言葉になる。伝え始めたら照れもなくなり、むしろもっと!と注ぎたくなってしまった。
記憶をなくした彼と少し一緒に過ごして思ったことがある。性格は真逆に感じるけど、根っこは〝カミュ〟と変わっていない気がするのだ。
「それにさ、思い出はまたつくれるよ」
「!」
「こっちには勇者の奇跡だってあるし」
「…ありがとうございます。オレ、あなたに会えてよかったです」
あ。
「記憶が戻っても、きっと、今日のこと忘れません。これからもよろしくおねがいします」
笑った。
瞳は潤んでいるけど、ずっと求めてた、同じ優しい笑顔。
「もちろんだよ。いやがっても返品できないから」
「あはは、いやがりませんよ。……オレもがんばります」
そう言った彼は、真剣な瞳で私を射抜く。
やっぱり――カミュだ。
「グスッ…すみません」ズビビィ!
今日。逆プロポーズをしたら、カミュを泣かせてしまいました。
事の発端はたまたま訪れた屋敷でおきた。
主人のルドマンさんが、結婚式のリハーサルをしたいとお願いしてきたのである。そんなわけあるかいって話だけどそのまんま。近々行われる娘の結婚の、神父役として練習をしたいとのことだった。
そこで名乗りをあげたのが、好奇心旺盛な勇者イレブンである。シルビアさんとの世助けパレードを経て吹っ切れたのだろうか。照れもせずに、颯爽と膝をついて、イレブンはマルティナにプロポーズの言葉をかけた。
絵だ。思わず両手を胸の前で繋いでしまった。異国の王子と姫――こんな未来もあったのかもしれないと、頬のにやけが加速した。
「もう、はずかしいから、カオみないで…」
このときのマルティナは今までで一番愛くるしかった。さすがは天然タラシだ。リハーサルとはいえ、マルティナの受け答えもまるで本番をみているようで、微笑ましかった。
そう、ここまでは微笑ましいで済んだのだ。
ルドマンさんも練習できて、人助けが済んで勇者様も満足したはずなのに、彼は何を思ったのか。
「次はアカリの番だね」
なーんて、ひまわりのような笑顔で私に声をかけてきたのである。
――これは悪魔の子だ。
汚名だということは重々承知だが、反射的によぎったことをどうか許してほしい。私を含め仲間に散々甘やかされてきたイレブンは、時々イタズラ小僧の顔を出すのだ。
「いやいや私はそういうの向いてないから」
「あら。私やセーニャにはよく好きだと言ってくれるじゃない」
「そっそれはそれ!こんな人に囲まれて言えないよ…!」
まさかのマルティナにまわりこまれてしまった。自分だけ見世物にされたのが気に入らないのだろうか。いじるならグレイグ将軍のほうにしてほしいと密かに思う。
「僕たちのまえでも言ってる」
「好きと結婚しようは違う!」
追撃するイレブンに後ずさりをする。助けを求めるためにロウさんに目配せをしたが温かな笑顔で返された。ではシルビアさん…!わあ、謎のウインクをくれた。グレイグさんとカミュは――不安と期待が入り交じったような顔でこちらを見ている…!
…。
結果、敗北した。
私は期待の空気を壊してまで自分を通すことができない類の人間だった。
やれば、気が済むでしょう、やれば。
腹を括り、辺りを見回す。ここでまたマルティナを指名することは許されない。結婚式に乱入する不届き者のようになる。嗚呼、ベロニカとセーニャがいれば……。未だに再会できていない姉妹を想う。
平和に解決できそうなのはあと一人。だけど……。
それはだめだな。
ゆっくりと、私は視線を落とした。
ここでシルビアさんに頼るのは、違うや。いくら心が乙女でも、ここには〝彼〟がいる。シルビアさんにも、私自身にも失礼だ。その彼は頼れるお兄さん…ではなく素直な子犬になってしまったけど。
……うん。本当に、子犬みたいだよ。
私は本命の彼に手が届くくらい、距離を詰めた。
そして冒頭に至る。
「まさかそんなに喜んでくれるとは」
「だって、グスッ…記憶も思い出もなくて心細かったですし…。それでも受け入れてくれるなんて」
屋敷を後にして、船の中ですぐ相手――カミュと二人になれた。
急にプロポーズをされて最初は疑っていたカミュも、何回問うても折れない私に感極まってしまった。
「はは、だってカミュはカミュだから。やっぱり、大切な存在なのは変わらないよ」
捨てられた子犬みたいで母性が擽られる。ふしぎな気分だ。いつもなら言いづらいことが簡単に言葉になる。伝え始めたら照れもなくなり、むしろもっと!と注ぎたくなってしまった。
記憶をなくした彼と少し一緒に過ごして思ったことがある。性格は真逆に感じるけど、根っこは〝カミュ〟と変わっていない気がするのだ。
「それにさ、思い出はまたつくれるよ」
「!」
「こっちには勇者の奇跡だってあるし」
「…ありがとうございます。オレ、あなたに会えてよかったです」
あ。
「記憶が戻っても、きっと、今日のこと忘れません。これからもよろしくおねがいします」
笑った。
瞳は潤んでいるけど、ずっと求めてた、同じ優しい笑顔。
「もちろんだよ。いやがっても返品できないから」
「あはは、いやがりませんよ。……オレもがんばります」
そう言った彼は、真剣な瞳で私を射抜く。
やっぱり――カミュだ。