restarrt! 異変後
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「ゴリアテは皆に信頼されているのだな」
ふと、グレイグさんが呟いた。
ごりあて…ごりあて…。聞き慣れない単語に、すぐさま記憶に検索をかける。読み込みに少し時間がかかったが、無事に彼の本名だとヒットした。
「シルビアさんは素敵な方ですからね」
「今のヤツはわからないが、再会してからアカリの雰囲気が明るくなったことはわかるぞ」
「そうみえますか?うーん、久しぶりにキャピキャピできたからですかね」
「きゃぴきゃぴ?」
渋い声できゃぴきゃぴなどと返されるとは思わず、一瞬目を見開いてしまう。
「えっと、女子のノリみたいなものです」
たしかにシルビアさんとの再会はテンションが高くなった自覚がある。あんなことがあったのに、彼は一層増した輝きで笑顔の魔法を振りまいていたから。
私たち勇者御一行がバラバラになった理由――それは命の大樹の崩壊、堕落。神聖なる勇者の剣は魔王ウルノーガに乗っ取られ、私たちは大樹と共に吹っ飛ばされてしまった。
世界各地にも被害が及ぶ中、運良く生きていた私が最初に会えたのが、我らが勇者イレブンと、かつては勇者を悪魔の子だと追っていたグレイグ将軍。2人と仲間探しの旅をしていた途中でロウさんと再会。
そう。この世界に迷い込み、旅を始めた以来の紅一点。そんな中で、やっとムードメーカーのシルビアさんに会えたのだ。
「女子…」
「あ!グレイグさんとイレブンとの旅も新鮮でしたよ。あの英雄さんが仲間だなんて、すごく頼もしかったです」
私がロトゼタシアに来て、初めて敵と認識した人間がグレイグさんだった。崖の上のグレイグ隊は一斉に馬で崖を下り、逃げる私たちにボウガンを討ってきた。あの命がけの追いかけっこは思いだすだけで肝が冷える。
しかし、あんなにこわかったグレイグ将軍は蓋を開けると普通の面白いおじさまだった。大樹が落ちたあとに再会したときは警戒したが、詳しい事情を知り、一緒に過ごすうちに個人として親近感が湧いた。今では"デルカダールの英雄"と言われていたことを忘れてしまうときもある。ただ自分の信じる正義のために、世界の平和のために尽くしていた、まっすぐな人だった。
現メンバーは、グレイグさんがお父さんポジションで、ロウさんが祖父、イレブンが弟。そんな男家系の長女になった気分だ。シルビアさんはどうだろうか。
なんて脳内で空想を広げていると、彼が深刻な顔で口を開いた。
「……アカリ。その、実に言い難いんだがな」
「はい」
「ゴリアテは男だ」
「………え?」
「いつの間にか女性の口調になってしまったようだが、れっきとした男性だ」
そんな。
「すまないが今でも紅一点なのは変わらぬ…。早く姫様と合流せねばな」
「いや、まって、落ち着いてください」
「?俺は落ち着いているぞ」
申し訳なさそうに目を閉じ、頷いたと思ったら私の反応にきょとんとした顔をみせた。
この将軍、本気だ――
一緒に旅をするようになってから度々出るお茶目な一面に、生意気にもかわいいと思っていた。だが今回はそういうレベルではない。双頭の鷲の一人、とも呼ばれた彼は世間のイメージからは想像できないほどの天然記念物の方だったのだ。
「ちょっとグレイグ!アカリちゃんが困ってるじゃないの」
「ごっゴリアテ!」
初爆弾"ピチピチ☆バニー事件"と並ぶギャップにまごまごしていると、孔雀さながらの羽を背負ったシルビアさんが後ろからひょっこり顔を出す。
「何を話していたのか知らないけど、もう少し笑顔を身につけた方がいいわよ」
「なっ!元はと言えば貴様のせいでアカリが誤解を…」
「あら?アタシのこと話してたの?」
「いや誤解してるのグレイグさんですよ!」
☆
「やだぁグレイグ!そんなわけないじゃない!」
「む…………。そうだな。アカリが話しやすいのならそれで良いのだろう」
シルビアさんに笑いながら背中を叩かれるグレイグさん。良い音が鳴っているもののビクともしない。さすがの肉体である。恥ずかしさと悔しさが混じったような顔で、彼はようやく納得してくれた。
「グレイグさんってお話しするほどイメージが変わりますね。世間が知ったらもっと人気がでそうです」
「そうねえ。昔はかわいかったけど今はムキムキのおじさんだからどうかしら」
「なんだと?俺は魔物軍団と間違えられていた貴様のほうがどうかと思うぞ」
「え〜?世界に笑顔を取り戻すためとはいえ、ちょっと目立ちすぎたかしらねえ」
二人の遠慮のないやりとりに、私は口角があがるのを感じた。勇者の仲間である"シルビア"さんが、まさかの旧友だと知った時のグレイグさんは雷が落ちたようにショックを受けてたけど。今も厳つい視線を受け流すシルビアさんをみていると仲の良さにハマってしまいそうだ。
「大丈夫ですよ。私はシルビアさんやおナカマの明るさに元気をもらえましたもん。他にも同じ気持ちの人がきっといます!」
「ありがと♡ あの子たち、自らアタシに近づこうとしてくれたいい子なのよ〜」
「えっ、元からかわいらしい感じではなかったんですね。運命の出会いじゃないですか…!」
嬉しそうに手を合わせるシルビアさんに、私は嬉々として肯定した。たしかに尊敬する人には自然と似たりするよね。そりゃあ口調もなる。
ナカマたちを慈しむシルビアさんは、友達に近いお母さんのように思えた。
ツッコミ不足の会話に呆れたのか、気づいたらグレイグさんは勇者イレブンのほうに向かっていた。
広がる繋がり。
――そこにあなたたちもいたのなら。
急に切なくなる心を抱きしめる。
さあ。あとの家族を迎えに行こうか。思い出は、また作れるから。
「イレブンよ、俺には"きゃぴきゃぴ"とやらは向いてなかったようだ…」
「できなくていいと思うよ」
「ゴリアテは皆に信頼されているのだな」
ふと、グレイグさんが呟いた。
ごりあて…ごりあて…。聞き慣れない単語に、すぐさま記憶に検索をかける。読み込みに少し時間がかかったが、無事に彼の本名だとヒットした。
「シルビアさんは素敵な方ですからね」
「今のヤツはわからないが、再会してからアカリの雰囲気が明るくなったことはわかるぞ」
「そうみえますか?うーん、久しぶりにキャピキャピできたからですかね」
「きゃぴきゃぴ?」
渋い声できゃぴきゃぴなどと返されるとは思わず、一瞬目を見開いてしまう。
「えっと、女子のノリみたいなものです」
たしかにシルビアさんとの再会はテンションが高くなった自覚がある。あんなことがあったのに、彼は一層増した輝きで笑顔の魔法を振りまいていたから。
私たち勇者御一行がバラバラになった理由――それは命の大樹の崩壊、堕落。神聖なる勇者の剣は魔王ウルノーガに乗っ取られ、私たちは大樹と共に吹っ飛ばされてしまった。
世界各地にも被害が及ぶ中、運良く生きていた私が最初に会えたのが、我らが勇者イレブンと、かつては勇者を悪魔の子だと追っていたグレイグ将軍。2人と仲間探しの旅をしていた途中でロウさんと再会。
そう。この世界に迷い込み、旅を始めた以来の紅一点。そんな中で、やっとムードメーカーのシルビアさんに会えたのだ。
「女子…」
「あ!グレイグさんとイレブンとの旅も新鮮でしたよ。あの英雄さんが仲間だなんて、すごく頼もしかったです」
私がロトゼタシアに来て、初めて敵と認識した人間がグレイグさんだった。崖の上のグレイグ隊は一斉に馬で崖を下り、逃げる私たちにボウガンを討ってきた。あの命がけの追いかけっこは思いだすだけで肝が冷える。
しかし、あんなにこわかったグレイグ将軍は蓋を開けると普通の面白いおじさまだった。大樹が落ちたあとに再会したときは警戒したが、詳しい事情を知り、一緒に過ごすうちに個人として親近感が湧いた。今では"デルカダールの英雄"と言われていたことを忘れてしまうときもある。ただ自分の信じる正義のために、世界の平和のために尽くしていた、まっすぐな人だった。
現メンバーは、グレイグさんがお父さんポジションで、ロウさんが祖父、イレブンが弟。そんな男家系の長女になった気分だ。シルビアさんはどうだろうか。
なんて脳内で空想を広げていると、彼が深刻な顔で口を開いた。
「……アカリ。その、実に言い難いんだがな」
「はい」
「ゴリアテは男だ」
「………え?」
「いつの間にか女性の口調になってしまったようだが、れっきとした男性だ」
そんな。
「すまないが今でも紅一点なのは変わらぬ…。早く姫様と合流せねばな」
「いや、まって、落ち着いてください」
「?俺は落ち着いているぞ」
申し訳なさそうに目を閉じ、頷いたと思ったら私の反応にきょとんとした顔をみせた。
この将軍、本気だ――
一緒に旅をするようになってから度々出るお茶目な一面に、生意気にもかわいいと思っていた。だが今回はそういうレベルではない。双頭の鷲の一人、とも呼ばれた彼は世間のイメージからは想像できないほどの天然記念物の方だったのだ。
「ちょっとグレイグ!アカリちゃんが困ってるじゃないの」
「ごっゴリアテ!」
初爆弾"ピチピチ☆バニー事件"と並ぶギャップにまごまごしていると、孔雀さながらの羽を背負ったシルビアさんが後ろからひょっこり顔を出す。
「何を話していたのか知らないけど、もう少し笑顔を身につけた方がいいわよ」
「なっ!元はと言えば貴様のせいでアカリが誤解を…」
「あら?アタシのこと話してたの?」
「いや誤解してるのグレイグさんですよ!」
☆
「やだぁグレイグ!そんなわけないじゃない!」
「む…………。そうだな。アカリが話しやすいのならそれで良いのだろう」
シルビアさんに笑いながら背中を叩かれるグレイグさん。良い音が鳴っているもののビクともしない。さすがの肉体である。恥ずかしさと悔しさが混じったような顔で、彼はようやく納得してくれた。
「グレイグさんってお話しするほどイメージが変わりますね。世間が知ったらもっと人気がでそうです」
「そうねえ。昔はかわいかったけど今はムキムキのおじさんだからどうかしら」
「なんだと?俺は魔物軍団と間違えられていた貴様のほうがどうかと思うぞ」
「え〜?世界に笑顔を取り戻すためとはいえ、ちょっと目立ちすぎたかしらねえ」
二人の遠慮のないやりとりに、私は口角があがるのを感じた。勇者の仲間である"シルビア"さんが、まさかの旧友だと知った時のグレイグさんは雷が落ちたようにショックを受けてたけど。今も厳つい視線を受け流すシルビアさんをみていると仲の良さにハマってしまいそうだ。
「大丈夫ですよ。私はシルビアさんやおナカマの明るさに元気をもらえましたもん。他にも同じ気持ちの人がきっといます!」
「ありがと♡ あの子たち、自らアタシに近づこうとしてくれたいい子なのよ〜」
「えっ、元からかわいらしい感じではなかったんですね。運命の出会いじゃないですか…!」
嬉しそうに手を合わせるシルビアさんに、私は嬉々として肯定した。たしかに尊敬する人には自然と似たりするよね。そりゃあ口調もなる。
ナカマたちを慈しむシルビアさんは、友達に近いお母さんのように思えた。
ツッコミ不足の会話に呆れたのか、気づいたらグレイグさんは勇者イレブンのほうに向かっていた。
広がる繋がり。
――そこにあなたたちもいたのなら。
急に切なくなる心を抱きしめる。
さあ。あとの家族を迎えに行こうか。思い出は、また作れるから。
「イレブンよ、俺には"きゃぴきゃぴ"とやらは向いてなかったようだ…」
「できなくていいと思うよ」
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