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(原作ストーリー的にも彼の性格的にも叶わないエピソードかも。深く考えずに流されてくださいませ)
「ぷはぁ。もう一杯!」
「カミュ、一杯だけにするって言ってたよね?」
「…たしかに言ったが聞き込みは終わっただろ?今日は飲みてえ気分になっちまったからさ」
もしかしてヤケ酒か。
その理由は多分、彼とイレブン、そしてシルビアさんの三人がエントリーした仮面武闘会。カミュは先程、相手が悪く予選落ちしてしまったのだ。
少し呆れる私に気づきながらもご機嫌でお酒を受け取る。
「心配すんな。自分の飲める量は把握してるし、なにより人の目も多いだろ?」
「まあ、そうだけど」
微妙な返事をしたものの、いつもより緩んだ笑みを向けられて心臓にとすりと矢が刺さった。我ながら現金だと思う。心配と若干の悔しさから周りに目を向ける。するとカウンター席からシルビアさんと目が合った。とびきりの笑顔で手を振られ、心が軽くなる。
ただ飲みすぎることを心配しているわけではない。ここ数日、大会参加者が何名も行方不明になっているという噂を耳にした。その情報収集のために私たちは賑わうところに来たのである。
シルビアさんは「アタシは少し離れたところにいるわね!」とウインクを残した後、知らない人たちの輪に入っていった。ちょっとしたステージもあるため、夜にピッタリな空間に旅芸人の血が騒いだのかもしれない。そしてカミュはバーテンダーさんへの聞き込みついでに一杯頼んでしまったわけだ。ちなみに私は何かあったときのため、ノンアルコールにしている。
「もし歩けなくなったらアタシが運ぶわ、って言ってたね」
「それはさすがに避けてえな」
といいつつお酒に伸びるグローブ。そういえばカミュが、というより仲間がお酒を飲んでるところを初めてみる。特にカミュはなにかと急いでいて、自分から羽を伸ばすことは滅多になかった。
事件のことも注意していたのに珍しく気が緩んでるのは、シルビアさんを信頼しているのもあるのだろうか。最初の頃は、目立つとかいろいろ言っていたけど距離が縮まってきたんだな。なんだか微笑ましくて心の中でガッツポーズをする。でも今は私がしっかりしなくてはね。
密かに意気込んだことも露知らず、当の本人はへらりとして話題を振ってきた。最近私が生き生きしてみえるだとか、打ち解けるのがはやくてすげえな、とか……自然に褒められて照れてしまう。
みんなが良い人だから、カミュこそ全員から頼りにされてるじゃん、などラリーが続き「そういえばイレブンは無事かな」と付き合いが長いもう一人の話題になる。
「だな。あいつも抜けてるところあるから、孤児院に着くまでが心配だよな」
「ちょっと心配だよね。イレブンが強いのはわかってるけど」
「やっぱ何人かで乗り込めばよかったな」
「たしかに。せめて送ってくればよかったかな…。ハンフリーさんも強いから大丈夫だと信じるしかないね」
イレブンは大会のペアであるハンフリーさんの元へ聞き込みに行った。ハンフリーさんは孤児院に住んでいるようで、さすがに複数人で夜に訪ねるのは如何なものかということでイレブンは単独行動をしている。
そのときカミュは、夜の町でしかもお尋ね者一人は危ないと否定。だがイレブンは「行方不明者は大会で負けた人ばかりなんだろう?カミュのほうが危ないからみんなといて」と傷を抉る言葉を爽やかに残していった。
「はー。オレも相棒とペアだったら優勝までいってたのによ」
先程は触れてほしくなさそうだった予選落ちの話題。イレブンとハンフリーさんの話しをしてしまったからか自ら掘り出してきた。アルコールが効いてきたのか、いつも仲間たちを引っ張ってくれる常識人がみせる子供のような姿に釘付けになる。同時に一応年下だったことを思いだした。
この大会はランダムペアだったため、相棒であるイレブンとは別々になってしまった。ちなみにイレブンのペアであるハンフリーさんはなんと前回の大会優勝者である。全てが"勇者の奇跡"と繋げたくなってしまうほどの強運だ。
「まあまあ。相手の武闘家さんただ者じゃなかったし。 手に汗握るいい勝負だったよ」
「別にオレは見とれてたんじゃねえからな」
フォローの言葉をかけると、酒を煽ってはジト目で的外れな返答をされた。一瞬困惑したが、どうやらベロニカに疑われたことを気にしていたらしい。たしかにその武闘家の方は、仮面越しでも美人オーラが溢れたセクシーなお姉さんだったけど。
「わかってるよ。 相手ペアのおじいさんを気にしてたんでしょ」
「そーだよ。つーかお前もデレデレしてたってきいた」
「え!? そりゃあ、あんな風に戦えたらって見入っちゃったけど...! 応援してたのはカミュだよ!」
言い訳にきこえたのだろうか、責めるような目線は続く。
でも同性からみても強くてかっこいい人だったのだ。あそこまで戦えたら自信を持ってみんなと居られるだろう。そう謎の仮面美女を思い出していると、きこえたのは意外な呟き。
「情けねえ姿みせたな」
「え?」
「お前に戦闘を教えたのはオレだろ? なんつーか、かっこわりいなって」
視線を泳がせながらこぼした一言に、思わず聞き返した。 不安そうに揺れる瞳も、普段は言わない弱音もお酒の席だからだろうか。スマートに事をこなしているから、面をくらってばかりだ。
それに。あんなに素早い足技を躱し続けて、一体一で相手して、情けないとか思うはずないのに。
「たまにはかっこ悪いところもなきゃ困るよ」
素直に励ましの言葉をかける。軽く言ったつもりだったけど無性に恥ずかしくなって、勢いよくストローを吸った。
わずかな沈黙の後、耳を疑う声が聞こえてくる。
「…………なんで?」
なんで――とは。
なぜそれで困るんだ、と?
「アカリ」
「な、に」
普段より低い声で、意外なボールが返ってくる。普段の彼なら照れてテキトーに話題を逸らそうとするのに。 先程とは一変、真剣に覗き込む青い宝石に、今度は私が視線を泳がせる。その先には想像以上にグラスが並んでいた。
「おまえは、おれのこと…」
ゆっくりと距離が縮まり息をのむ。少しとろんとした目蓋に、切なげに歪む凛々しい眉。
薄明かりの中、初めてみる表情に捕らわれる。
場所の力? それともお酒による色気か。周りはオープンで人がいるはずなのに、目の前の彼のことでいっぱいだった。 これはいけないと目線を下ろすと、やっと見慣れたワイルドな服が視界に飛び込む。 照らされた胸元を認識した脳が赤信号を出し、彼から顔をそむけると――
「ぎゃっ!」
「ぅわっ」
思わずカミュの肩を突き飛ばしてしまった。だって、
「ごめんなさいアカリちゃん! アタシは何もみてないわよ!」
遠くにいたシルビアさんと目が合ってしまったから。
クリアになった視界の中、忘れてしまった彼が慌てて駆け寄ってくる。私の心臓は太鼓になったかのように連打が続く。
「カミュちゃん大丈夫?」
「ああ…」
目をまん丸にしているカミュ。状況がイマイチ飲み込めてなさそうだが構わず私はまくし立てる。
「ごめ…っ、わたし、宿もどるね!」
「ええっ!?」
「ほんとっごめんなさい!」
私を呼び止める声がきこえる。シルビアさんに押し付けたこと、いつもなら申し訳なく思うだろう。でもそんな余裕はなかった。全力で二人を置いていく。宿に着くまで周りの視線なんかどうでもよかった。
一体なにが起こったのか。
元の世界に帰る日がくるかもしれないのに。恩人のまま、頼りやすい仲間だと言い聞かせていたのに、こんな、期待させるような。
「……………ずるいよ」
こぼれた言葉。 きいてくれたのは、優しく照らす明かりだけ。
「ぷはぁ。もう一杯!」
「カミュ、一杯だけにするって言ってたよね?」
「…たしかに言ったが聞き込みは終わっただろ?今日は飲みてえ気分になっちまったからさ」
もしかしてヤケ酒か。
その理由は多分、彼とイレブン、そしてシルビアさんの三人がエントリーした仮面武闘会。カミュは先程、相手が悪く予選落ちしてしまったのだ。
少し呆れる私に気づきながらもご機嫌でお酒を受け取る。
「心配すんな。自分の飲める量は把握してるし、なにより人の目も多いだろ?」
「まあ、そうだけど」
微妙な返事をしたものの、いつもより緩んだ笑みを向けられて心臓にとすりと矢が刺さった。我ながら現金だと思う。心配と若干の悔しさから周りに目を向ける。するとカウンター席からシルビアさんと目が合った。とびきりの笑顔で手を振られ、心が軽くなる。
ただ飲みすぎることを心配しているわけではない。ここ数日、大会参加者が何名も行方不明になっているという噂を耳にした。その情報収集のために私たちは賑わうところに来たのである。
シルビアさんは「アタシは少し離れたところにいるわね!」とウインクを残した後、知らない人たちの輪に入っていった。ちょっとしたステージもあるため、夜にピッタリな空間に旅芸人の血が騒いだのかもしれない。そしてカミュはバーテンダーさんへの聞き込みついでに一杯頼んでしまったわけだ。ちなみに私は何かあったときのため、ノンアルコールにしている。
「もし歩けなくなったらアタシが運ぶわ、って言ってたね」
「それはさすがに避けてえな」
といいつつお酒に伸びるグローブ。そういえばカミュが、というより仲間がお酒を飲んでるところを初めてみる。特にカミュはなにかと急いでいて、自分から羽を伸ばすことは滅多になかった。
事件のことも注意していたのに珍しく気が緩んでるのは、シルビアさんを信頼しているのもあるのだろうか。最初の頃は、目立つとかいろいろ言っていたけど距離が縮まってきたんだな。なんだか微笑ましくて心の中でガッツポーズをする。でも今は私がしっかりしなくてはね。
密かに意気込んだことも露知らず、当の本人はへらりとして話題を振ってきた。最近私が生き生きしてみえるだとか、打ち解けるのがはやくてすげえな、とか……自然に褒められて照れてしまう。
みんなが良い人だから、カミュこそ全員から頼りにされてるじゃん、などラリーが続き「そういえばイレブンは無事かな」と付き合いが長いもう一人の話題になる。
「だな。あいつも抜けてるところあるから、孤児院に着くまでが心配だよな」
「ちょっと心配だよね。イレブンが強いのはわかってるけど」
「やっぱ何人かで乗り込めばよかったな」
「たしかに。せめて送ってくればよかったかな…。ハンフリーさんも強いから大丈夫だと信じるしかないね」
イレブンは大会のペアであるハンフリーさんの元へ聞き込みに行った。ハンフリーさんは孤児院に住んでいるようで、さすがに複数人で夜に訪ねるのは如何なものかということでイレブンは単独行動をしている。
そのときカミュは、夜の町でしかもお尋ね者一人は危ないと否定。だがイレブンは「行方不明者は大会で負けた人ばかりなんだろう?カミュのほうが危ないからみんなといて」と傷を抉る言葉を爽やかに残していった。
「はー。オレも相棒とペアだったら優勝までいってたのによ」
先程は触れてほしくなさそうだった予選落ちの話題。イレブンとハンフリーさんの話しをしてしまったからか自ら掘り出してきた。アルコールが効いてきたのか、いつも仲間たちを引っ張ってくれる常識人がみせる子供のような姿に釘付けになる。同時に一応年下だったことを思いだした。
この大会はランダムペアだったため、相棒であるイレブンとは別々になってしまった。ちなみにイレブンのペアであるハンフリーさんはなんと前回の大会優勝者である。全てが"勇者の奇跡"と繋げたくなってしまうほどの強運だ。
「まあまあ。相手の武闘家さんただ者じゃなかったし。 手に汗握るいい勝負だったよ」
「別にオレは見とれてたんじゃねえからな」
フォローの言葉をかけると、酒を煽ってはジト目で的外れな返答をされた。一瞬困惑したが、どうやらベロニカに疑われたことを気にしていたらしい。たしかにその武闘家の方は、仮面越しでも美人オーラが溢れたセクシーなお姉さんだったけど。
「わかってるよ。 相手ペアのおじいさんを気にしてたんでしょ」
「そーだよ。つーかお前もデレデレしてたってきいた」
「え!? そりゃあ、あんな風に戦えたらって見入っちゃったけど...! 応援してたのはカミュだよ!」
言い訳にきこえたのだろうか、責めるような目線は続く。
でも同性からみても強くてかっこいい人だったのだ。あそこまで戦えたら自信を持ってみんなと居られるだろう。そう謎の仮面美女を思い出していると、きこえたのは意外な呟き。
「情けねえ姿みせたな」
「え?」
「お前に戦闘を教えたのはオレだろ? なんつーか、かっこわりいなって」
視線を泳がせながらこぼした一言に、思わず聞き返した。 不安そうに揺れる瞳も、普段は言わない弱音もお酒の席だからだろうか。スマートに事をこなしているから、面をくらってばかりだ。
それに。あんなに素早い足技を躱し続けて、一体一で相手して、情けないとか思うはずないのに。
「たまにはかっこ悪いところもなきゃ困るよ」
素直に励ましの言葉をかける。軽く言ったつもりだったけど無性に恥ずかしくなって、勢いよくストローを吸った。
わずかな沈黙の後、耳を疑う声が聞こえてくる。
「…………なんで?」
なんで――とは。
なぜそれで困るんだ、と?
「アカリ」
「な、に」
普段より低い声で、意外なボールが返ってくる。普段の彼なら照れてテキトーに話題を逸らそうとするのに。 先程とは一変、真剣に覗き込む青い宝石に、今度は私が視線を泳がせる。その先には想像以上にグラスが並んでいた。
「おまえは、おれのこと…」
ゆっくりと距離が縮まり息をのむ。少しとろんとした目蓋に、切なげに歪む凛々しい眉。
薄明かりの中、初めてみる表情に捕らわれる。
場所の力? それともお酒による色気か。周りはオープンで人がいるはずなのに、目の前の彼のことでいっぱいだった。 これはいけないと目線を下ろすと、やっと見慣れたワイルドな服が視界に飛び込む。 照らされた胸元を認識した脳が赤信号を出し、彼から顔をそむけると――
「ぎゃっ!」
「ぅわっ」
思わずカミュの肩を突き飛ばしてしまった。だって、
「ごめんなさいアカリちゃん! アタシは何もみてないわよ!」
遠くにいたシルビアさんと目が合ってしまったから。
クリアになった視界の中、忘れてしまった彼が慌てて駆け寄ってくる。私の心臓は太鼓になったかのように連打が続く。
「カミュちゃん大丈夫?」
「ああ…」
目をまん丸にしているカミュ。状況がイマイチ飲み込めてなさそうだが構わず私はまくし立てる。
「ごめ…っ、わたし、宿もどるね!」
「ええっ!?」
「ほんとっごめんなさい!」
私を呼び止める声がきこえる。シルビアさんに押し付けたこと、いつもなら申し訳なく思うだろう。でもそんな余裕はなかった。全力で二人を置いていく。宿に着くまで周りの視線なんかどうでもよかった。
一体なにが起こったのか。
元の世界に帰る日がくるかもしれないのに。恩人のまま、頼りやすい仲間だと言い聞かせていたのに、こんな、期待させるような。
「……………ずるいよ」
こぼれた言葉。 きいてくれたのは、優しく照らす明かりだけ。