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「は〜!やっぱ海の香りっていいわね!」
「ふふ、船上からとはまた違いますわね…!」
ここはリゾート地として有名らしいソルティコの町。山奥で育ったベロニカとセーニャは、町の奥に広がる海に感激している。
「交渉は僕とロウさんで行ってくるから、少しの間だけど見に行っていなよ」
「大勢で訪ねるのも良くないからの」
「ありがとうございます!行きましょうお姉さま!」
「セーニャったら。転ばないように気をつけなさいよね!」
ぱっと周りにお花が咲いたように笑うセーニャと、注意しながらも足が弾んでいるベロニカ。二人をみてロウさんは癒されたような表情を浮かべていた。イレブンと同年代だから孫をみるような気持ちなのかも。つられてこちらもより口角があがる。
「じゃあカミュたちもどこかで待っててね」
残りの私たちにそう言い、イレブンとロウさんはお屋敷に向かっていった。外海に通じる水門を開けてもらうため、この町の領主であるジエーゴさんにお願いするのだ。
「折角だしお前らも散策してきたらどうだ?」
「いいの?」
カミュは私と、横で待っているマルティナさんをみる。ちなみにシルビアさんは不自然な様子でお花摘みに行くと言い、現在一緒にはいない。
「ああ。さっきからこの街に興味津々だろ?少しなら時間あるぜ」
「そんなわかりやすい…?」
「いつもよりきょろきょろされるとな」
エスパーかと思い聞いてみると、おみとおしだというようにカミュに即答されてしまった。続いて「目が輝いているわよね」と仲間になったばかりのマルティナさんにも言われてしまって照れくさい。しかし周りに立っている建物も、徒歩でいける距離の海も、この町は360度きれいなのだ。心が踊るのは不可抗力だと思う。
「イレブンたちが終わったら呼びに行くぜ」
「わかった。じゃあ私たちも行ってくるね、カミュありがとう!」
「ん。マルティナ、アカリたちのこと頼むな」
「ええ、任せて」
保護者みたいなことを言った彼に手を振り別れる。シルビアさんの様子も気になり迷ったが、彼の厚意に甘えることにした。なんとなくだけども、私とマルティナさんが仲良くなれるように気を回してくれたと思えたからだ。自意識過剰のようだが、本当にそうだとしたらどれだけできた人間なのだろうか……。
じんわりとした心のまま、町の奥のほうへ歩いてみる。
「本当にきれいな街ですね…!」
「そうよね。観光名所でもあるし、この町の領主は名門の騎士だから修行に来る兵士も多いのよ」
「へえ!マルティナさんは来たことあるんですか?」
「ええ、ロウ様と旅をしていた頃に寄ったの。でもかなり昔のことね」
私が興奮を言葉にすると、マルティナさんは全人類のお手本のような微笑みを浮かべた。爽やかな潮風にあわせてマルティナさんの高く結った髪がなびく。バックには上品な街並み、まるで映画のワンシーンだ。
そんな彼女は私が目を奪われていることなど知らず、驚くことを口にした。
「ずっと気になってたんだけど、アカリとカミュは恋人同士なのかしら」
「え!?」
マルティナさんから聞かれるとは思わず、反射で風景に似合わない声がもれた。
「ち、違います…!カミュは保護者というか恩人といいますか!」
「そうなの?アカリとカミュの間には特別な絆があるのね」
「…!はい。イレブンもですけど、初めて会ったときからずっと助けてくれて。みんな大切ですが、最初の仲間なので特別に感じてしまいますね」
いろんな形の溢れてしまいそうな気持ちを抑えながら二人との出会いを簡単に説明する。マルティナさんは慈愛のこもったような眼差しで私の話をきいてくれた。赤ちゃんの頃のイレブンを知ってるから、自分の知らない彼のことをきけるのが嬉しいのだろうか。
そういえばシルビアさんにも「二人はそういう関係なの?」ときかれたことがある。たしかにカミュは私とイレブンに対して甘い気がするけど、そんなに私からの矢印は意味深に映るのか。乙女たちへのほうがわかりやすく愛を向けているのにな。
考えていると変な汗が出てきて手で顔を扇ぐ。すると並んでいたはずのマルティナさんがペースを落とした。
「じゃあ私が武闘会でカミュを倒したとき、仕方ないとはいえよくない気分にさせたかもしれないわね」
「それは全然!!もちろん彼を応援してたんですけど、マルティナさんもかっこいいからどっちも負けてほしくない〜って思ってました!」
誤解をしてほしくなくて食い気味に否定をすると、マルティナさんは笑い出した。
「ふふっ。ありがとう。アカリっておもしろいわね」
「自分ではわかりませんけど…、マルティナさんが笑ってくれるならラッキーです」
「ねえ。それ、やめない?」
「それ?」
「敬語」
けいご。
品のあるハスキーボイスで呟かれた単語に、私の中でビックバンがおこった。
「でも年上ですし」と返事をしようとする前にマルティナさんが追撃する。
「たぶんアカリが一番歳が近いと思うの。…私、身分を隠して旅をしていたのもあって、今まで友人を作る機会がなかったのよね」
心做しか寂しそうな声色にはっとした。世間的には亡くなったはずのお姫様だから、他者となるべく関わることなく生きてきたのだ。小さい頃から、ロウさんと二人で。
「だから肩書きとか年上とか関係なく、仲良くしてくれたら嬉しいわ」
「……わかった!そうするね。マルティナ――ちゃん?」
「ちゃん付けは恥ずかしいわ。よろしく、アカリ」
「うん、マルティナ…!こちらこそよろしくね」
頬は耐えきれずゆるゆるになる。かっこいい印象だったマルティナさんは、話してみるとすごくかわいらしい方だった。そう思うのは失礼かもしれないが、ますます好感があがる。
「おーい!出発するぞー!」
ちょうどいいタイミングでカミュの声がきこえてくる。
振り向くとイレブンとロウさん、ベロニカとセーニャも合流していた。
「はーい!」
今行く、と手を振る。先に一歩進んだ友人が私のほうへ振り返った。
「行きましょう、アカリ」
その言葉に、自分でも驚くくらい浮かれた声で返事をした。
「ふふ、船上からとはまた違いますわね…!」
ここはリゾート地として有名らしいソルティコの町。山奥で育ったベロニカとセーニャは、町の奥に広がる海に感激している。
「交渉は僕とロウさんで行ってくるから、少しの間だけど見に行っていなよ」
「大勢で訪ねるのも良くないからの」
「ありがとうございます!行きましょうお姉さま!」
「セーニャったら。転ばないように気をつけなさいよね!」
ぱっと周りにお花が咲いたように笑うセーニャと、注意しながらも足が弾んでいるベロニカ。二人をみてロウさんは癒されたような表情を浮かべていた。イレブンと同年代だから孫をみるような気持ちなのかも。つられてこちらもより口角があがる。
「じゃあカミュたちもどこかで待っててね」
残りの私たちにそう言い、イレブンとロウさんはお屋敷に向かっていった。外海に通じる水門を開けてもらうため、この町の領主であるジエーゴさんにお願いするのだ。
「折角だしお前らも散策してきたらどうだ?」
「いいの?」
カミュは私と、横で待っているマルティナさんをみる。ちなみにシルビアさんは不自然な様子でお花摘みに行くと言い、現在一緒にはいない。
「ああ。さっきからこの街に興味津々だろ?少しなら時間あるぜ」
「そんなわかりやすい…?」
「いつもよりきょろきょろされるとな」
エスパーかと思い聞いてみると、おみとおしだというようにカミュに即答されてしまった。続いて「目が輝いているわよね」と仲間になったばかりのマルティナさんにも言われてしまって照れくさい。しかし周りに立っている建物も、徒歩でいける距離の海も、この町は360度きれいなのだ。心が踊るのは不可抗力だと思う。
「イレブンたちが終わったら呼びに行くぜ」
「わかった。じゃあ私たちも行ってくるね、カミュありがとう!」
「ん。マルティナ、アカリたちのこと頼むな」
「ええ、任せて」
保護者みたいなことを言った彼に手を振り別れる。シルビアさんの様子も気になり迷ったが、彼の厚意に甘えることにした。なんとなくだけども、私とマルティナさんが仲良くなれるように気を回してくれたと思えたからだ。自意識過剰のようだが、本当にそうだとしたらどれだけできた人間なのだろうか……。
じんわりとした心のまま、町の奥のほうへ歩いてみる。
「本当にきれいな街ですね…!」
「そうよね。観光名所でもあるし、この町の領主は名門の騎士だから修行に来る兵士も多いのよ」
「へえ!マルティナさんは来たことあるんですか?」
「ええ、ロウ様と旅をしていた頃に寄ったの。でもかなり昔のことね」
私が興奮を言葉にすると、マルティナさんは全人類のお手本のような微笑みを浮かべた。爽やかな潮風にあわせてマルティナさんの高く結った髪がなびく。バックには上品な街並み、まるで映画のワンシーンだ。
そんな彼女は私が目を奪われていることなど知らず、驚くことを口にした。
「ずっと気になってたんだけど、アカリとカミュは恋人同士なのかしら」
「え!?」
マルティナさんから聞かれるとは思わず、反射で風景に似合わない声がもれた。
「ち、違います…!カミュは保護者というか恩人といいますか!」
「そうなの?アカリとカミュの間には特別な絆があるのね」
「…!はい。イレブンもですけど、初めて会ったときからずっと助けてくれて。みんな大切ですが、最初の仲間なので特別に感じてしまいますね」
いろんな形の溢れてしまいそうな気持ちを抑えながら二人との出会いを簡単に説明する。マルティナさんは慈愛のこもったような眼差しで私の話をきいてくれた。赤ちゃんの頃のイレブンを知ってるから、自分の知らない彼のことをきけるのが嬉しいのだろうか。
そういえばシルビアさんにも「二人はそういう関係なの?」ときかれたことがある。たしかにカミュは私とイレブンに対して甘い気がするけど、そんなに私からの矢印は意味深に映るのか。乙女たちへのほうがわかりやすく愛を向けているのにな。
考えていると変な汗が出てきて手で顔を扇ぐ。すると並んでいたはずのマルティナさんがペースを落とした。
「じゃあ私が武闘会でカミュを倒したとき、仕方ないとはいえよくない気分にさせたかもしれないわね」
「それは全然!!もちろん彼を応援してたんですけど、マルティナさんもかっこいいからどっちも負けてほしくない〜って思ってました!」
誤解をしてほしくなくて食い気味に否定をすると、マルティナさんは笑い出した。
「ふふっ。ありがとう。アカリっておもしろいわね」
「自分ではわかりませんけど…、マルティナさんが笑ってくれるならラッキーです」
「ねえ。それ、やめない?」
「それ?」
「敬語」
けいご。
品のあるハスキーボイスで呟かれた単語に、私の中でビックバンがおこった。
「でも年上ですし」と返事をしようとする前にマルティナさんが追撃する。
「たぶんアカリが一番歳が近いと思うの。…私、身分を隠して旅をしていたのもあって、今まで友人を作る機会がなかったのよね」
心做しか寂しそうな声色にはっとした。世間的には亡くなったはずのお姫様だから、他者となるべく関わることなく生きてきたのだ。小さい頃から、ロウさんと二人で。
「だから肩書きとか年上とか関係なく、仲良くしてくれたら嬉しいわ」
「……わかった!そうするね。マルティナ――ちゃん?」
「ちゃん付けは恥ずかしいわ。よろしく、アカリ」
「うん、マルティナ…!こちらこそよろしくね」
頬は耐えきれずゆるゆるになる。かっこいい印象だったマルティナさんは、話してみるとすごくかわいらしい方だった。そう思うのは失礼かもしれないが、ますます好感があがる。
「おーい!出発するぞー!」
ちょうどいいタイミングでカミュの声がきこえてくる。
振り向くとイレブンとロウさん、ベロニカとセーニャも合流していた。
「はーい!」
今行く、と手を振る。先に一歩進んだ友人が私のほうへ振り返った。
「行きましょう、アカリ」
その言葉に、自分でも驚くくらい浮かれた声で返事をした。