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「きいてもいい?イレブンは、悪魔の子って呼ばれてるの…?」
デルカダール神殿に向かう途中のキャンプ場で、先ほどは聞けなかったことを口にした。まだ色々思うことはあるだろうにデリケートな話題を振って申し訳ない。でも聞くなら今だと思ってしまった。
「うん…。手紙の話、アカリはちんぷんかんぷんだったよね」
そう和ませるかのような言葉のチョイスで、イレブンは説明してくれた。
勇者=悪魔の子。イレブンがイシの村を出て訪ねたデルカダールという国では、そんな話が出ているらしい。反芻するけど全く理解ができない。
まぬけであろう私の顔をみながら更に続けてくれる。16歳で成人を迎えた数日前、育ての親とは血が繋がっていないことと、自分が勇者の生まれ変わりであることを聞かされた。そして自分を拾ってくれた亡き祖父――つい先ほど話に出た育てのおじいさんが残した手紙。それを頼りにデルカダール城へ向かったのだと話してくれた。
「"勇者"って、響き的に正義側の人…だよね?悪魔なんておかしくない…?」
「そうなんだよね…。そしてよくわからないまま捕まっちゃったんだ」
「つっ捕まった!?」
「そこでカミュと出会ったんだよ」
カミュに話を振るイレブンは三角岩の前にいたときより気分が浮上してみえた。その点は安心したが、濃い内容に開いた口が塞がらない。
「カミュも捕まってたってこと…!?」
「…ああ。言うのが遅くなって悪いんだが、オレたち追われてるんだ」
「だからアカリも巻き込む形になっちゃうんだ。ごめんね」
声にならない叫びをあげた。映画など物語のような展開にギョッとする。
「追われてるっていうのは警察に…?」
「ケイサツ?…が何かは知らないが、国だよ」
「国ぃ!?」
「僕たち、形は脱獄囚だから…。あっ勘違いしないで!悪いことはしてないんだ」
「そこは信頼してるけど。わからないまま捕まったというのは…?」
「"勇者"だと名乗ったら様子が変わったんだよね」
どういうことだ一体…。信じていないけど「黒猫は不吉」だとかそういう迷信みたいな感じだろうか。
とにかくイレブンは一日で人生が一変したのだという。――私と同じだ。
捕まる前に、国の軍の人がイレブンの故郷に向かったらしい。…だから気掛かりだと言っていたんだ。勇者というだけで酷い扱いをした連中だ。今は少し元気がなさそう、で済んでいるけど、当時は計り知れないほど辛かっただろう。
話してくれたお礼を伝える。すると彼は凛々しい眉をより下げて「また暗い話をしちゃったね」と苦笑した。お願いしたのは私なのに。まだ16歳だというのに、しっかりしていて心配になる。
「カミュも何か勘違いされたの?」
「いや。オレは国宝を盗んだから」
「そう……っえ!?」
言いづらそうに目を逸らした彼の口から衝撃な話が飛び出した。イレブンの発言からして彼も冤罪だと決めつけてしまっていた。
「オレにはどうしてもそれが必要だったんだよ」
なんてことだ――。
見た目からしてワイルドな青年に思えるが、明言した中でわずかに繊細な声色を感じた。何か、深い事情があるのかもしれない。
「それで脱獄って……。よく無事でいられたね」
「だよね。僕はカミュと出会わなかったら一生出られなかったかもしれないな」
「それはわからねえけど、脱獄決行日にちょうど勇者が投獄されたんだよ。…そういやお前、オレが声かけた時ビビってたよな」
「だって牢獄の下層は重罪を犯した極悪人がいるって聞いたから!」
イレブンが慌てて否定する。それはこわいわ。その極悪人とやらが自分と同世代であろう青年で、今普通に会話していることが不思議に思う。
カミュに対しては数日一緒にいて、「この人の言う通りにしていれば大丈夫だな」と安心感を覚えている。そして大きいのが、数日前に知り合ったばかりだという勇者が随分と信頼を寄せている点だ。脱獄だなんて突飛な話をきいて正直私もビビったけれど、助けてくれた事実も、今後も助けていただくことも変わらないのだ。
――それにしても。今の話だと"勇者"であることが国宝を盗んだ罪と同じレベルになる。うーん、生きてるだけで罪なのってあんまりじゃないか。目をつぶり唸っていると、
「でも逃げきれたのはイレブンのおかげなんだぜ。兵士たちに崖まで追い詰められたんだが、勇者の奇跡を信じて飛び降りてさ。気がついた時はどこも痛くなかったんだ」
「ツイてたよね」
びっくりのバーゲンセールみたいになっている中、またもや勇者の奇跡という言葉が出た。意味はよくわからないけど、やっぱり私は彼らと一緒にいればなんとかなる。普通なら命を落としていたであろう彼らの無事が、そう思わせてくれた。
「…私と出会ってくれたことが本当に奇跡なんだと感じております」
「大袈裟だな」
「2人が国に追われていようと、着いていくから。邪魔にならないよう頑張るね」
「…!ありがとう。アカリ」
「ああ。…サンキュ」
カミュのことはまだ謎が多いけど、今日でイレブンのことをたくさん知った。ここ数日、足を引っ張りたくない、力になりたいと思ったことは嘘ではない。けれど個人的に、やっと、心の底から前を向けた気がする。
私は、自分を受け入れてくれたこの2人に恩返しがしたい。
帰る方法がわかるまで、できることで支えよう。親切な彼らが生きていけるように。
――新しい人生をセーブしますか?
――はい ▽
――いいえ
デルカダール神殿に向かう途中のキャンプ場で、先ほどは聞けなかったことを口にした。まだ色々思うことはあるだろうにデリケートな話題を振って申し訳ない。でも聞くなら今だと思ってしまった。
「うん…。手紙の話、アカリはちんぷんかんぷんだったよね」
そう和ませるかのような言葉のチョイスで、イレブンは説明してくれた。
勇者=悪魔の子。イレブンがイシの村を出て訪ねたデルカダールという国では、そんな話が出ているらしい。反芻するけど全く理解ができない。
まぬけであろう私の顔をみながら更に続けてくれる。16歳で成人を迎えた数日前、育ての親とは血が繋がっていないことと、自分が勇者の生まれ変わりであることを聞かされた。そして自分を拾ってくれた亡き祖父――つい先ほど話に出た育てのおじいさんが残した手紙。それを頼りにデルカダール城へ向かったのだと話してくれた。
「"勇者"って、響き的に正義側の人…だよね?悪魔なんておかしくない…?」
「そうなんだよね…。そしてよくわからないまま捕まっちゃったんだ」
「つっ捕まった!?」
「そこでカミュと出会ったんだよ」
カミュに話を振るイレブンは三角岩の前にいたときより気分が浮上してみえた。その点は安心したが、濃い内容に開いた口が塞がらない。
「カミュも捕まってたってこと…!?」
「…ああ。言うのが遅くなって悪いんだが、オレたち追われてるんだ」
「だからアカリも巻き込む形になっちゃうんだ。ごめんね」
声にならない叫びをあげた。映画など物語のような展開にギョッとする。
「追われてるっていうのは警察に…?」
「ケイサツ?…が何かは知らないが、国だよ」
「国ぃ!?」
「僕たち、形は脱獄囚だから…。あっ勘違いしないで!悪いことはしてないんだ」
「そこは信頼してるけど。わからないまま捕まったというのは…?」
「"勇者"だと名乗ったら様子が変わったんだよね」
どういうことだ一体…。信じていないけど「黒猫は不吉」だとかそういう迷信みたいな感じだろうか。
とにかくイレブンは一日で人生が一変したのだという。――私と同じだ。
捕まる前に、国の軍の人がイレブンの故郷に向かったらしい。…だから気掛かりだと言っていたんだ。勇者というだけで酷い扱いをした連中だ。今は少し元気がなさそう、で済んでいるけど、当時は計り知れないほど辛かっただろう。
話してくれたお礼を伝える。すると彼は凛々しい眉をより下げて「また暗い話をしちゃったね」と苦笑した。お願いしたのは私なのに。まだ16歳だというのに、しっかりしていて心配になる。
「カミュも何か勘違いされたの?」
「いや。オレは国宝を盗んだから」
「そう……っえ!?」
言いづらそうに目を逸らした彼の口から衝撃な話が飛び出した。イレブンの発言からして彼も冤罪だと決めつけてしまっていた。
「オレにはどうしてもそれが必要だったんだよ」
なんてことだ――。
見た目からしてワイルドな青年に思えるが、明言した中でわずかに繊細な声色を感じた。何か、深い事情があるのかもしれない。
「それで脱獄って……。よく無事でいられたね」
「だよね。僕はカミュと出会わなかったら一生出られなかったかもしれないな」
「それはわからねえけど、脱獄決行日にちょうど勇者が投獄されたんだよ。…そういやお前、オレが声かけた時ビビってたよな」
「だって牢獄の下層は重罪を犯した極悪人がいるって聞いたから!」
イレブンが慌てて否定する。それはこわいわ。その極悪人とやらが自分と同世代であろう青年で、今普通に会話していることが不思議に思う。
カミュに対しては数日一緒にいて、「この人の言う通りにしていれば大丈夫だな」と安心感を覚えている。そして大きいのが、数日前に知り合ったばかりだという勇者が随分と信頼を寄せている点だ。脱獄だなんて突飛な話をきいて正直私もビビったけれど、助けてくれた事実も、今後も助けていただくことも変わらないのだ。
――それにしても。今の話だと"勇者"であることが国宝を盗んだ罪と同じレベルになる。うーん、生きてるだけで罪なのってあんまりじゃないか。目をつぶり唸っていると、
「でも逃げきれたのはイレブンのおかげなんだぜ。兵士たちに崖まで追い詰められたんだが、勇者の奇跡を信じて飛び降りてさ。気がついた時はどこも痛くなかったんだ」
「ツイてたよね」
びっくりのバーゲンセールみたいになっている中、またもや勇者の奇跡という言葉が出た。意味はよくわからないけど、やっぱり私は彼らと一緒にいればなんとかなる。普通なら命を落としていたであろう彼らの無事が、そう思わせてくれた。
「…私と出会ってくれたことが本当に奇跡なんだと感じております」
「大袈裟だな」
「2人が国に追われていようと、着いていくから。邪魔にならないよう頑張るね」
「…!ありがとう。アカリ」
「ああ。…サンキュ」
カミュのことはまだ謎が多いけど、今日でイレブンのことをたくさん知った。ここ数日、足を引っ張りたくない、力になりたいと思ったことは嘘ではない。けれど個人的に、やっと、心の底から前を向けた気がする。
私は、自分を受け入れてくれたこの2人に恩返しがしたい。
帰る方法がわかるまで、できることで支えよう。親切な彼らが生きていけるように。
――新しい人生をセーブしますか?
――はい ▽
――いいえ