屋上には、ひとり
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どうやらあの失礼な発言は聞かれていたらしい。
いや、そんなことよりも!
私の耳に入ってきた独特な癖がある話し方や、声変わりが終わって少し低くなったその声は、間違いなく1年前と同じ、彼、丸井ブン太の声だった。
「……これは私が見ている幻とか?」
ふいに私の口から出た質問。
私は相当参っていたのかもしれない。
1年で変わってしまった彼も、自殺するまで追い込んだ奴らが今、以前と変わらない姿でいるのも、全てが気持ち悪くて。
とうとう私は狂ってしまったのか。精神科を受診しなければ。
「それはたぶん違うと思うぜ。
……お前、2年に上がる前不登校になったやつだろ?なんでここにいるんだよ。」
本人が幻じゃないと否定しても、それは私の脳で勝手に作った丸井ブン太が私に都合のいいようなことを言っているだけなのかもしれない。
それでも、いいと思った。
私の心の中にあるもやもやした気持ちを、こいつが晴らしてくれるのなら。
彼の話を聞いて、自分がまた以前と変わらずに保健室でゆっくりと残りの一年を過ごせるのなら。
「中学2年の男子生徒がここで飛び降り自殺したから、屋上が立ち入り禁止になったの。
ここ、屋上庭園あるでしょ?
枯れた花、片付けるの手伝ってた。」
少しの沈黙。それを破ったのは私ではなく彼だった。
私はどう話を切り出そうか考えているうちに彼の口が動く。
「お前、俺のこと覚えてる?」
「覚えてるよ、丸井ブン太でしょ。
一年のときの、クラスの中心人物。」
「おー、忘れられてんのかと思った。
なんで急に不登校になったんだよ、お前。
お前の友達、心配してたぜぃ。」
本物が私に関わることなど覚えているとは思えなかった。
これは「私が見ている幻」説が、濃厚になってくる。
というか、なんて失礼な物言いなんだ。
普通不登校になった人間にその理由を聞くだろうか、いや聞かないでしょ。
「別に理由なんてどうでもいいでしょ。
そんなことより、丸井くんはなんで自殺なんかしたの。」
あっちが遠慮なく聞いてきたんだから、私も配慮なんていらない。
親しき仲にも礼儀あり、と言うが別に私たちは親しくなんて無いわけだし、相手はもう死んでるし、そういうのは生きてる人間に対して言うことだと思うから気にしないことにした。
「私、保健室にずっといたからこの1年の間に何があったのかがわからない。
それがすごく気持ち悪いんだ。
1年のときはあんなに明るかった丸井くんがいま、こんなに暗い顔をしている原因を私は知りたい。」
「……お前、名前なんだっけ」
「小川さくらだよ。」
「小川、先生に呼ばれてるぞ」
「えっ?」
話を逸らされてしまった。
いつの間にか昼休みが終わる5分前の予鈴がなっていて、その答えを聞くことは出来なそうだった。
早足で先生たちがいるところにもどると、後ろに丸井くんが着いてきていることがわかった。
彼は私の質問に答える意思がある、ということであっているのか聞きたかったけれど、先生に
「仕事をしないで何をしていたの。」
と、少々強めに咎められてしまったので、それはまた後でということになる。
「すみません、屋上も見納めかと思って。」
などと適当な理由をつけてぺこりと頭を下げれば、あんまり目が届かないところに行かないでね、と優しく諭された。
どうやら屋上庭園の片付けは半分も終わっていないらしく、放課後、また屋上に行くことになりそうだ。
いや、そんなことよりも!
私の耳に入ってきた独特な癖がある話し方や、声変わりが終わって少し低くなったその声は、間違いなく1年前と同じ、彼、丸井ブン太の声だった。
「……これは私が見ている幻とか?」
ふいに私の口から出た質問。
私は相当参っていたのかもしれない。
1年で変わってしまった彼も、自殺するまで追い込んだ奴らが今、以前と変わらない姿でいるのも、全てが気持ち悪くて。
とうとう私は狂ってしまったのか。精神科を受診しなければ。
「それはたぶん違うと思うぜ。
……お前、2年に上がる前不登校になったやつだろ?なんでここにいるんだよ。」
本人が幻じゃないと否定しても、それは私の脳で勝手に作った丸井ブン太が私に都合のいいようなことを言っているだけなのかもしれない。
それでも、いいと思った。
私の心の中にあるもやもやした気持ちを、こいつが晴らしてくれるのなら。
彼の話を聞いて、自分がまた以前と変わらずに保健室でゆっくりと残りの一年を過ごせるのなら。
「中学2年の男子生徒がここで飛び降り自殺したから、屋上が立ち入り禁止になったの。
ここ、屋上庭園あるでしょ?
枯れた花、片付けるの手伝ってた。」
少しの沈黙。それを破ったのは私ではなく彼だった。
私はどう話を切り出そうか考えているうちに彼の口が動く。
「お前、俺のこと覚えてる?」
「覚えてるよ、丸井ブン太でしょ。
一年のときの、クラスの中心人物。」
「おー、忘れられてんのかと思った。
なんで急に不登校になったんだよ、お前。
お前の友達、心配してたぜぃ。」
本物が私に関わることなど覚えているとは思えなかった。
これは「私が見ている幻」説が、濃厚になってくる。
というか、なんて失礼な物言いなんだ。
普通不登校になった人間にその理由を聞くだろうか、いや聞かないでしょ。
「別に理由なんてどうでもいいでしょ。
そんなことより、丸井くんはなんで自殺なんかしたの。」
あっちが遠慮なく聞いてきたんだから、私も配慮なんていらない。
親しき仲にも礼儀あり、と言うが別に私たちは親しくなんて無いわけだし、相手はもう死んでるし、そういうのは生きてる人間に対して言うことだと思うから気にしないことにした。
「私、保健室にずっといたからこの1年の間に何があったのかがわからない。
それがすごく気持ち悪いんだ。
1年のときはあんなに明るかった丸井くんがいま、こんなに暗い顔をしている原因を私は知りたい。」
「……お前、名前なんだっけ」
「小川さくらだよ。」
「小川、先生に呼ばれてるぞ」
「えっ?」
話を逸らされてしまった。
いつの間にか昼休みが終わる5分前の予鈴がなっていて、その答えを聞くことは出来なそうだった。
早足で先生たちがいるところにもどると、後ろに丸井くんが着いてきていることがわかった。
彼は私の質問に答える意思がある、ということであっているのか聞きたかったけれど、先生に
「仕事をしないで何をしていたの。」
と、少々強めに咎められてしまったので、それはまた後でということになる。
「すみません、屋上も見納めかと思って。」
などと適当な理由をつけてぺこりと頭を下げれば、あんまり目が届かないところに行かないでね、と優しく諭された。
どうやら屋上庭園の片付けは半分も終わっていないらしく、放課後、また屋上に行くことになりそうだ。
