「三人目」の天女様
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「……おい、また天女が現れたらしい」
「これで3人目じゃないか」
「今度は1人目みたいな人だといいね」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
忍術学園には、これまでに二回「天女様」が現れたことがある。
1人目は、優しい顔をした女だった。
性格も顔に合っていてとてもおおらかで、いつもやわらかい笑顔をしており、知識も豊富でそれを学園のために惜しまず使ってくれるような、まさに天女というにふさわしい方だった。
忍術学園で世話になっている間は仕事も積極的に手伝い、教師からも生徒からも好かれるよい方だった。
彼女は地上に降りてきてから3年ほど経ったとき、気がついたらいなくなってしまった。
2人目は、1人目と正反対のようなやつがやってきた。
たしか、こいつが自分のことを「天女」と言い出したのだ。性格もきつく、更年期のおばさんくらいいつもイライラしていた彼女よりも、1人目の方がよっぽど天女だったと生徒の間ではよく比べていたものだ。
半年ほど経ったころ、2人目はいつの間にか学園を抜け出し(と言っても出門表にしっかりと名前は書いてあった)、捜索も行われたが学園の外には一切天女が遺した痕跡はなく、行方不明という形でいなくなった。
彼女たちはいつの間にか消えていなくなる。学園の者たちはいつの間にかそれを、「天に還る」と表現するようになっていった。
1人目は現在の6年生たちが1年生だったころに現れ、2人目は5年生だったころに現れた。
そして今、森のなかで死んだように眠っているこの少女はきっと、3人目の「天女様」であると6人は確信していた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
またか、と思った。
これ以上忍術学園を荒らされて欲しくはない、1人目のような者ならまだいいが、2人目に関しては論外だ。
5年のとき、忍術学園は荒れに荒れて世紀末のようだったと彼は語る。詳しい内容は思い出したくないため省略する。
天女が現れた場所へと6年生全員で向かう。ああどうか、学園で保護するだけの価値があるような者でありますように、ときっとその場にいる全員が祈っていたところであろう。
3人目の天女は、森の中の土色にも緑にも混ざらない鮮やかな芥子色の衣を纏っており、天女がいる部分だけまるで違う世界のようだった。
天女から距離をとり、全体を確認するのは長次と小平太。
木の上で天女の様子を見るのは伊作と留三郎。
そして天女を起こすのが俺と仙蔵、というふうに決まった。
天女に近づいたことで、だんだんと顔がはっきり見えてくる。すこしきつい顔立ちをしているが、2人目と比べたら全然マシな方だしなんなら綺麗な顔立ちだとも思った。
しかし、それよりももっと気になったのは、天女の顔に切り傷やアザがいくつもあったことだった。
それに他の3人も気づいたのか、足を止めて神妙な面持ちで互いを見合っていた。俺たちの様子がおかしいことに気づいたのか、長次と小平太も寄ってきて、一旦話し合うことになった。
「とりあえず怪我の手当をしないと!きっと怪我をしているのは顔だけじゃないよ」
「だが急に近づくのは危険じゃないか?いくら天女と言っても何をしでかすかわからん」
「……結局学園で保護しなければならないのならばさっさと済ませてしまおう。鍛錬の時間が天女のせいで減るのは御免だ」
文次郎の発言により彼が代表して天女を連れていくことになった。仙蔵は着いてきてくれなかった。
文次郎は天女に近づいていく。はっきりと見えるようになった顔はやはり傷だらけで痛々しい。
『怪我はどんな感じ?顔以外もやっぱり怪我してる?』
と、矢羽音が飛んできた。そんなに気になるなら自分で確かめろよ、と思い伊作がいる方向に視線を送る。
『顔は思った通りボコボコにやられてる、体の方は肌が見えないからなんとも言えんな』
文次郎が更に天女に近づくと、彼女の頬が濡れているのが分かった。
天女は眠ってなどいなかった。
天女様はただ、病人が死を待つように目を瞑り、静かに泣いていた。
「これで3人目じゃないか」
「今度は1人目みたいな人だといいね」
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忍術学園には、これまでに二回「天女様」が現れたことがある。
1人目は、優しい顔をした女だった。
性格も顔に合っていてとてもおおらかで、いつもやわらかい笑顔をしており、知識も豊富でそれを学園のために惜しまず使ってくれるような、まさに天女というにふさわしい方だった。
忍術学園で世話になっている間は仕事も積極的に手伝い、教師からも生徒からも好かれるよい方だった。
彼女は地上に降りてきてから3年ほど経ったとき、気がついたらいなくなってしまった。
2人目は、1人目と正反対のようなやつがやってきた。
たしか、こいつが自分のことを「天女」と言い出したのだ。性格もきつく、更年期のおばさんくらいいつもイライラしていた彼女よりも、1人目の方がよっぽど天女だったと生徒の間ではよく比べていたものだ。
半年ほど経ったころ、2人目はいつの間にか学園を抜け出し(と言っても出門表にしっかりと名前は書いてあった)、捜索も行われたが学園の外には一切天女が遺した痕跡はなく、行方不明という形でいなくなった。
彼女たちはいつの間にか消えていなくなる。学園の者たちはいつの間にかそれを、「天に還る」と表現するようになっていった。
1人目は現在の6年生たちが1年生だったころに現れ、2人目は5年生だったころに現れた。
そして今、森のなかで死んだように眠っているこの少女はきっと、3人目の「天女様」であると6人は確信していた。
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またか、と思った。
これ以上忍術学園を荒らされて欲しくはない、1人目のような者ならまだいいが、2人目に関しては論外だ。
5年のとき、忍術学園は荒れに荒れて世紀末のようだったと彼は語る。詳しい内容は思い出したくないため省略する。
天女が現れた場所へと6年生全員で向かう。ああどうか、学園で保護するだけの価値があるような者でありますように、ときっとその場にいる全員が祈っていたところであろう。
3人目の天女は、森の中の土色にも緑にも混ざらない鮮やかな芥子色の衣を纏っており、天女がいる部分だけまるで違う世界のようだった。
天女から距離をとり、全体を確認するのは長次と小平太。
木の上で天女の様子を見るのは伊作と留三郎。
そして天女を起こすのが俺と仙蔵、というふうに決まった。
天女に近づいたことで、だんだんと顔がはっきり見えてくる。すこしきつい顔立ちをしているが、2人目と比べたら全然マシな方だしなんなら綺麗な顔立ちだとも思った。
しかし、それよりももっと気になったのは、天女の顔に切り傷やアザがいくつもあったことだった。
それに他の3人も気づいたのか、足を止めて神妙な面持ちで互いを見合っていた。俺たちの様子がおかしいことに気づいたのか、長次と小平太も寄ってきて、一旦話し合うことになった。
「とりあえず怪我の手当をしないと!きっと怪我をしているのは顔だけじゃないよ」
「だが急に近づくのは危険じゃないか?いくら天女と言っても何をしでかすかわからん」
「……結局学園で保護しなければならないのならばさっさと済ませてしまおう。鍛錬の時間が天女のせいで減るのは御免だ」
文次郎の発言により彼が代表して天女を連れていくことになった。仙蔵は着いてきてくれなかった。
文次郎は天女に近づいていく。はっきりと見えるようになった顔はやはり傷だらけで痛々しい。
『怪我はどんな感じ?顔以外もやっぱり怪我してる?』
と、矢羽音が飛んできた。そんなに気になるなら自分で確かめろよ、と思い伊作がいる方向に視線を送る。
『顔は思った通りボコボコにやられてる、体の方は肌が見えないからなんとも言えんな』
文次郎が更に天女に近づくと、彼女の頬が濡れているのが分かった。
天女は眠ってなどいなかった。
天女様はただ、病人が死を待つように目を瞑り、静かに泣いていた。
