コロイカ夢
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「インクリングちゃん、オレと付き合ってください!」
まるでロボットのようなカチコチした動きのゴーグルくんに誘われ、ロッカールームの端でふたりきりになったかと思えばそんなことを言われた。
青く澄んだ丸い瞳が、私だけをまっすぐ見つめてくる。いつもの私の事を笑わせてくれる面白めいた雰囲気は一切ない。
ゴーグルくんの、純粋でまっすぐなところが大好きだ。どんな時でも笑顔で、敵のことまで笑顔にしちゃう。そんな強さをもった男の子。
でも、付き合うとか恋人とか、そういうことを想像はしたことはあんまりない。
ハッ
もしかして付き合うって、ナワバリバトルとかの話? ゴーグルくんが言うならきっとそうだ。ナワバリバトルだったらまだいいけど、ガチマッチだったら困っちゃうかも。怖い人多いし。勘違いだったら恥ずかしいから、ちゃんと聞いておこう。
「ちょっと待って、付き合うってどういう事? 私と何したいの? ナワバリバトルとか?」
「ナワバリバトルしたい! 次のステージどこだっけ!?」
「えっと……海女美術大学だよ」
「じゃなくて!」
「えっ!? ゴーグルくんがノリツッコミ!?」
「チューとかしたい!」
「チューとか!?」
ゴーグルくんの口から、チューなんて言葉が出てくるとは思わなかった。しかもふざけた様子はなく、真剣に私を見つめながら言うものだから目をそらせない。
「ゴーグルくん、チューとか……したいの?」
「チュー中止?」
「あ、混乱するからギャグはちょっと止めて!」
「ギャグ中止」
ゴーグルくんが看板を取り出してきたけど一旦スルーする。ちらっとしか見えなかったけど、太い字で『中止』って書いてあった気がする。この一瞬のために仕込んでたの? 抜け目がない。
「もう、すぐにギャグに持っていくんだから」
「ゴメンね」
「えっと、チューしたりする……恋人みたいな、そういう意味の付き合うでいいの?」
「うん!」
「……ゴーグルく、」
いつの間にかゴーグルくんの手が、私の手に重ねられている。私よりも温かくて、少しだけ汗ばんでいる。
もしかして、緊張してるの?
ナワバリの王や、X帯の覇者にも立ち向かえるキミが?
「私、ゴーグルくんみたいにハチャメチャギャグできないよ? ニットキャップちゃんみたいな小ボケも、メガネくんやヘッドホンちゃんみたいなツッコミもできないのに」
「インクリングちゃんはインクリングちゃんだよ! オレのこと、ずっと見てきてくれたキミが大好き! たまに頑張ってツッコんでくれるのも知ってるよ!」
「でも」
「インクリングちゃんは?」
太陽みたいな笑顔のゴーグルくんが、私を照らし出す。後ろ向きな言葉しか出てこなかった私を、ゴーグルくんは待っている。
私は。
私は、ゴーグルくんと一緒にいたい。これからも。
「ゴーグルくんと、一緒にいたいから、……よろしくお願いします」
「やったーーーー!!」
「ふふ、ゴーグルくん喜びすぎだよ、ゴーグルくん、ちょっと待って、どこ行くの!? 待って! ちょっと! 誰か!!」
ここからのゴーグルくんが大変だった。
例えようのないとんでもない動きでロビーに駆け出して行ったかと思うと、ニョロニョロとまるでウミヘビのようにうねり、止めようのない動きを見せつけた。試合待ちのイカタコたちの邪魔にならない程度だから、逆に誰も止められない。
ロビー近くで待機していたメガネくんたちが取り押さえてくれて事なきを得た。
「ゴメン、すっごく嬉しくって……」
「ゴーグルくん、嬉しいとこんな感じになっちゃうんだ……初めて知った……」
ゴーグルくんと付き合ったことで、知らない一面を知れた。といえば聞こえが良いかもしれない。