コロイカ夢
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ハイカラスクエアの大通りから一本入った場所にあるラーメン屋。メニューはよく見たことはないが、店外のショーケースにラーメンの見本があるから、おそらくラーメン屋だろう。そこそこ人気なようで、昼時は行列ができ賑わっている。
たまたま通りかかった今日は列ができていない。だったら試しに入ってみるのもありだろう。好奇心で入ってみたのがいけなかった。
適当にお昼のセットを注文してからメニューをよく見ると、激辛メン、激辛つけ麺、激辛チャーハン……どれも辛さをウリにしているようだ。辛い物は特別苦手というわけではないが、得意というわけでもない。
一体どの程度の辛さなのか。行儀が良いとは言えないが、周囲のひとが頼んでいるものを見てしまう。激辛麺が人気の店だけあって、やはりどのテーブルに置かれている麺もサイドメニューも赤っぽい。
隣に座っている、さわやかなアクアブルーのマッシュボーイは汗一つかかず涼しい顔色で麺をすすっている。よく見るとゲソの端が赤い。辛いから?
みんながこのボーイのように食べられているわけではなく「辛い」「こんなの無理だろ」とふざけ合っているイカもちらほら。そんな中で、自分の隣のマッシュヘアのボーイだけが、ただただストイックに食べ進めている。
そんなことを考えている間に、クラゲの店員さんが目の前にどんぶりと皿を置く。どんぶりに入った激辛メンと、赤い皮の焼き餃子。言わなくてもわかる。全部辛いやつだコレ。
試しに激辛メンに口をつけるも、やっぱり辛い。熱さと辛さで、舌が痛いの方向で判断を下してくる。額にも汗も滲む。
隣に座るボーイと目が合う。
「すぐに慣れる」
「へ」
「水は逆効果だ。口内の温度が下がり辛さが和らぐように感じるがすぐ元通りだ」
「えっ」
「食べ続けろ」
「はえ?」
なんなんだこのマッシュ。
炎のように赤い瞳でこちらを見つめながら、何を言っているんだ?
仕方ないのでマッシュのボーイに言われた通りに食べ進める。
少し慣れたのか、旨味を感じる……ような気がする。
麺の方は半分以上食べ進められたが、餃子はさすがに食べきれない。
そうだ、隣のボーイに食べてもらうのは? 残すくらいなら食べてもらったほうが餃子も嬉しいはず。
「あの、この餃子よかったら食べませんか? まだ手を付けていないので」
「オレがXだからか?」
「?」
えっくす。ああ、ガチマッチの……?
きっと自分の頭上に?マークが浮かんでいるのが、彼にも見えたのだろう。話を切り上げ皿に手を伸ばす。
「貰う」
「よかった。思ったより辛くてこのままじゃ残しちゃいそうで……助かります」「オレはXだからな」
無表情なのかと思ったけれど、そう言う彼はなんだか少し自慢げに見えた。
あとそれ辛いのと関係ある?
自分がなんとか激辛メンを完食した頃に、隣に座っていたXボーイはいなくなっていた。あんな辛い物、よく食べられたな。付き合わされる友達がいたらたまったものじゃないだろう。
「オイ」
「ワアッ!?」
失礼なことを考えていたら背後にあのボーイが。餃子を手伝ってもらったのに失礼なことを考えてすみませんでした。
「辛い物を食べるときは先に牛乳を飲め。そのほうが腹を壊しにくい」
投げ渡され、思わず受け取ってしまった。小さな牛乳パックだ。ひんやりとしていて気持ちがいい。
「貰って良いの?」
「餃子代だ」
そういうと振り返りもせず立ち去って行く。
あの独特な雰囲気、有名な選手なのだろうか。名前くらい聞けばよかった。