白干し梅(長編)
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閑話 御館様とご対面
柱との会議を終えて自室に着こうかという時に、変な女が現れたからもう一度来てほしいと声を掛けられ、支えてくれる子どもに頷いて踵を返して戻った。
到着すれば皆が殺気立っている事以外様子が分からず、ひなき、にちかに状況を問う。
「妙齢の女性が全裸で砂利の上に蹲っています。風柱様に睨まれているためか泣いています。」
「岩柱様の羽織を掛けて頂いたようです。」
全裸?なぜ?と頭の中でたくさん疑問が浮かんでくる。
全裸の理由も気になるが、突然現れたという奇妙な状況に一瞬鬼ではないかと疑うが、娘に問うても日に当たっても肌は焼け爛 れる事もなく、元気に泣き喚いていると言う。
確かに泣き喚く声は聞こえて来る。
こちらに気がついたらしく柱達が一斉に首を垂れるのが気配で分かった。
「楽にしていいよ。誰か説明をしてくれるかな。まだよく分かっていなくてね」
そう言うと行冥が説明をしてくれる。
「…御館様が去った後、この者が突然現れました。初めは我々も鬼かと疑いましたが、気配が違う事、日中である事で人間と判断しました。人であるなら勝手に処理する事も出来ぬ為、御館様をお呼びした次第です。」
「突然と言うのは、どこから現れたんだい?」
「どこかから派手に飛んできた訳でもなく、地味にポンと現れたんで、詳しくはコイツの口から聞きましょう」
オラ!と、天元が促せば鼻を啜りながら現れたという女性の声が聞こえる。
「ヒィ!ななしです!ななしと言います!分からないんですぅう、、!お風呂で寝てしまって、あ、お酒!ヤケ酒飲んでました!それで、眠たくなって目が覚めたらここにいたんですぅぅ!あと多分ここ追い出されたら野垂れ死ぬので!飯炊きでも三助でも按摩でも何でもするので、ここで働かせてくださいぃいいい」
ここで働きたいんです!うわぁぁぁん、と泣きながら懇願する女性はどうやら自分でもよく分からない内にここに来たと言う。混乱しているのか、泣きすぎた為か、嗚咽にしゃっくりが混じっている。
そんな様子に短くため息をついた。
そもそも此処に一般人が辿り着くことは不可能に近く、突然現れたという彼女の説明は訳がわからない。一瞬鬼の手先かとも疑ってみたが、そもそも共存は出来ないはずである。目の前で泣いている彼女が嘘を付いていたり、演技をしているようには見えないのだ。
「ななしといったかな?どこから来たのか答えなさい。」
「……分かりません。どこから来たのか…その、思い出せないんです。」
ああこれは嘘だなと声色ですぐに分かった。
直前まで何をしていたかは覚えているのに、己がどこから来たのかは覚えていないのは、少し、かなり、無理がある。
「…何でもしますから、追い出さないでください…!しっ、死にます!帰る場所が無いんです!」
これも本当のようだ。
不思議な事にどうにも目の前で命乞いをするななしが、害をもたらす存在に思えなかった。
ここは自分の勘を信じてみようか…
「…しのぶ、蝶屋敷は人が足りていたかな?」
「!……いいえ。」
「すまないが、しばらく蝶屋敷で下働きをさせてやってくれないか?」
「…分かりました」
少し不服そうに頷くしのぶに、世話をかけるね、と声をかけると、言葉短くいいえ、と返された。
それはその通りで、突然現れた得体の知れない人間を預かるのは誰だっていい気分ではない。
それでも預かってくれると言うのだから、しのぶはとてもいい子だと思う。
彼女のいる方向を向く。
「君、ななしと言っていたかな。聞こえていたね?この子はしのぶ。ななしを預かってくれるから、よく話を聞くように。」
「あ、ありがとうございます!!」
「それから、三助は男性の仕事だから、ななしにはひとまず蝶屋敷で出来る事を手伝ってもらおう。…ここにいる子たちは柱と言って、皆んなとても腕が立つんだ。大丈夫だとは思うが、変な気は起こさないように、ね。皆もあまりいじめないように。」
とりあえず命が助かったと分かったのか、少し落ち着いた様子で返事をするななしに頷き今度こそ、その場を去る。
背後から自分の名を叫ぶ杏寿郎の声が聞こえ、それに続いて蜜璃も名乗っている。
どうやら、自己紹介をしてくれているらしい。
突然現れて、自分の名と、直前の行動を覚えていて、何処から来たのかは分からない?いや、きっと分からないのでは無く、言えないのだろう。
では言えない所とは何処だろうか。
不可解な所はまだある。ななしはここが何処なのか一切聞きもしなかったのだ。
「……まさか、未来から?いや、あり得ないだろう。」
つい言葉に出してしまった考えを振り払う様に、首を振った。
ここに留まる事を許可したが、反発心を抱く者がいるのは確かなのでななしの事はこっそりと調べておこうと決めた。
さて、今日はどんな1日になるだろうか。
ふっと口元に笑みを浮かべた。
柱との会議を終えて自室に着こうかという時に、変な女が現れたからもう一度来てほしいと声を掛けられ、支えてくれる子どもに頷いて踵を返して戻った。
到着すれば皆が殺気立っている事以外様子が分からず、ひなき、にちかに状況を問う。
「妙齢の女性が全裸で砂利の上に蹲っています。風柱様に睨まれているためか泣いています。」
「岩柱様の羽織を掛けて頂いたようです。」
全裸?なぜ?と頭の中でたくさん疑問が浮かんでくる。
全裸の理由も気になるが、突然現れたという奇妙な状況に一瞬鬼ではないかと疑うが、娘に問うても日に当たっても肌は焼け
確かに泣き喚く声は聞こえて来る。
こちらに気がついたらしく柱達が一斉に首を垂れるのが気配で分かった。
「楽にしていいよ。誰か説明をしてくれるかな。まだよく分かっていなくてね」
そう言うと行冥が説明をしてくれる。
「…御館様が去った後、この者が突然現れました。初めは我々も鬼かと疑いましたが、気配が違う事、日中である事で人間と判断しました。人であるなら勝手に処理する事も出来ぬ為、御館様をお呼びした次第です。」
「突然と言うのは、どこから現れたんだい?」
「どこかから派手に飛んできた訳でもなく、地味にポンと現れたんで、詳しくはコイツの口から聞きましょう」
オラ!と、天元が促せば鼻を啜りながら現れたという女性の声が聞こえる。
「ヒィ!ななしです!ななしと言います!分からないんですぅう、、!お風呂で寝てしまって、あ、お酒!ヤケ酒飲んでました!それで、眠たくなって目が覚めたらここにいたんですぅぅ!あと多分ここ追い出されたら野垂れ死ぬので!飯炊きでも三助でも按摩でも何でもするので、ここで働かせてくださいぃいいい」
ここで働きたいんです!うわぁぁぁん、と泣きながら懇願する女性はどうやら自分でもよく分からない内にここに来たと言う。混乱しているのか、泣きすぎた為か、嗚咽にしゃっくりが混じっている。
そんな様子に短くため息をついた。
そもそも此処に一般人が辿り着くことは不可能に近く、突然現れたという彼女の説明は訳がわからない。一瞬鬼の手先かとも疑ってみたが、そもそも共存は出来ないはずである。目の前で泣いている彼女が嘘を付いていたり、演技をしているようには見えないのだ。
「ななしといったかな?どこから来たのか答えなさい。」
「……分かりません。どこから来たのか…その、思い出せないんです。」
ああこれは嘘だなと声色ですぐに分かった。
直前まで何をしていたかは覚えているのに、己がどこから来たのかは覚えていないのは、少し、かなり、無理がある。
「…何でもしますから、追い出さないでください…!しっ、死にます!帰る場所が無いんです!」
これも本当のようだ。
不思議な事にどうにも目の前で命乞いをするななしが、害をもたらす存在に思えなかった。
ここは自分の勘を信じてみようか…
「…しのぶ、蝶屋敷は人が足りていたかな?」
「!……いいえ。」
「すまないが、しばらく蝶屋敷で下働きをさせてやってくれないか?」
「…分かりました」
少し不服そうに頷くしのぶに、世話をかけるね、と声をかけると、言葉短くいいえ、と返された。
それはその通りで、突然現れた得体の知れない人間を預かるのは誰だっていい気分ではない。
それでも預かってくれると言うのだから、しのぶはとてもいい子だと思う。
彼女のいる方向を向く。
「君、ななしと言っていたかな。聞こえていたね?この子はしのぶ。ななしを預かってくれるから、よく話を聞くように。」
「あ、ありがとうございます!!」
「それから、三助は男性の仕事だから、ななしにはひとまず蝶屋敷で出来る事を手伝ってもらおう。…ここにいる子たちは柱と言って、皆んなとても腕が立つんだ。大丈夫だとは思うが、変な気は起こさないように、ね。皆もあまりいじめないように。」
とりあえず命が助かったと分かったのか、少し落ち着いた様子で返事をするななしに頷き今度こそ、その場を去る。
背後から自分の名を叫ぶ杏寿郎の声が聞こえ、それに続いて蜜璃も名乗っている。
どうやら、自己紹介をしてくれているらしい。
突然現れて、自分の名と、直前の行動を覚えていて、何処から来たのかは分からない?いや、きっと分からないのでは無く、言えないのだろう。
では言えない所とは何処だろうか。
不可解な所はまだある。ななしはここが何処なのか一切聞きもしなかったのだ。
「……まさか、未来から?いや、あり得ないだろう。」
つい言葉に出してしまった考えを振り払う様に、首を振った。
ここに留まる事を許可したが、反発心を抱く者がいるのは確かなのでななしの事はこっそりと調べておこうと決めた。
さて、今日はどんな1日になるだろうか。
ふっと口元に笑みを浮かべた。