白干し梅(長編)
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今日も今日とて、人生は最悪だった。
社会人になってから、人間関係はより希薄になり相談出来る友達もそうはいない。仕事も行き詰まり、全てに疲れてしまい所謂ニートという奴にレベルアップして数ヶ月が経った。
「うわぁぁ…またお祈りメールか…」
なんだろう、人生ってこんなにハードモードなのだろうか?何度も見てきたお決まりの文章はいつまで経っても心をえぐって来る。
息抜きに大好きなお風呂で6本目の缶チューハイをカラにした。
「あー、だめだ。しんどい…」
しん…と静かなお風呂場に自分の呟きが響いて、また落ち込む。
うじうじうじうじネガティブな事が頭を回り出し涙目になる。キリがないな、と、そろそろ上がろうと酒が回った体を一度湯船に浸からせ温める。
5分程も浸かっていたが、段々と眠くなってしまいダメだと分かっていても風呂蓋に頭をもたれて目を瞑ってしまった。
あれ?お風呂で眠くなるのって気絶と一緒だって何かで言ってたっけ?
そう思ったが酔いと眠気に勝てず意識を手放してしまった。
ーーー寒いな…
肌に感じる温度の低さを頭が感じ始めた。
妙な開放感と肌に当たる感触に違和感を覚え、じわじわと眠気が飛び始める。
「んー、さむっ…」
呟いてまだ覚醒し切らず目を開けた。
「ん?…は!??」
目を開ければそこは自宅の風呂場では無かった。
屋外の砂利の上に横たえ、体は水滴が付いたまま、素っ裸の己を見下ろす人がいるではないか!
「なに!?なんで!?」
人間って焦ると悲鳴も出ないって本当なんだなーと片隅で思ったのは、まだお酒が残ってる所為かも知れない。とにかく小さくうずくまり見える面積を減らそうと努力してみるがパニックになっていてガクガクと震えてしまう。
「なんだァテメェ?どっから出てきやがったァ!?」
「こここここ!こわっ!怖い!!誰!?何!?どこ!?」
「…鬼ではないようだ」
傷だらけの男性が今まで経験した事のない目で睨み付け生命の危機を覚える。が、ジャラジャラと数珠を鳴らした大男が鬼じゃないと肩にかけていた渋い抹茶色の羽織を掛けてくれた。
咄嗟にその羽織を体に巻き付けると、恥ずかしさが和らいで少しだけ冷静になれた。おずおずと周囲を見渡し情報を収集する。
「……おぉう、まじか。まじでか。」
なんとも情けない言葉しか出て来なかった。
見た事のある人物が9人いるではないか。
でもおかしい。確かに私はお風呂に入って寝落ちしたはず。なのに、目の前には鬼滅の柱たちが目を見開いてこちらを見ているなんて。
「よもや!急に人が現れるとは!鬼ではないなら何か奇術だろうか?」
「真昼間にこんな所に素っ裸で現れる奇術なんて、派手に有り得ん。どこかの間者か?」
「……っ!」
緊張で喉が張り付いて声が出せない。
代わりにポロポロと涙が溢れてしまう。
「泣いたって貴様の怪しさは無くならん。状況を打破するためにも、何かしらは喋った方が身のためだと少し考えれば分かるだろう。」
「いっ伊黒さん!そんな風に言ったら話しにくくなるわ。」
確かにその通りで、意を決して声を出してみる事にした。
「…っ私は、ななしと、申します。…あの、決して怪しい者では無くて!お風呂に入っていたはずが、その、目が覚めたらここに…!」
なんでかは分かりません…と必死に訴え続けたが当然誰も納得しない。
埒が明かないと思ったのか、面倒そうな声が響く。
「僕はすぐ忘れるし、殺してもいいと思うけど御館様に聞いた方がいいと思うよ」
「…それもそうですね。先ほど会議が終わったばかりですし、まだお近くにいらっしゃるはずですから一応お伺いしてみましょう。」
どこか虚な瞳でこちら見ている男の子にも、にこり、と微笑む少女にも見覚えがある。
しのぶさんは紙面で見るよりも綺麗に微笑むんだなぁ、なんて呑気に見入ってしまった。
その後数分で御館様が戻って来てくれ、私の身柄はとりあえず蝶屋敷で預かって貰えることになった。
死ぬか殺されるか、経験した事のない緊張感に嗚咽する姿に同情してくれたのだろうか。
社会人になってから、人間関係はより希薄になり相談出来る友達もそうはいない。仕事も行き詰まり、全てに疲れてしまい所謂ニートという奴にレベルアップして数ヶ月が経った。
「うわぁぁ…またお祈りメールか…」
なんだろう、人生ってこんなにハードモードなのだろうか?何度も見てきたお決まりの文章はいつまで経っても心をえぐって来る。
息抜きに大好きなお風呂で6本目の缶チューハイをカラにした。
「あー、だめだ。しんどい…」
しん…と静かなお風呂場に自分の呟きが響いて、また落ち込む。
うじうじうじうじネガティブな事が頭を回り出し涙目になる。キリがないな、と、そろそろ上がろうと酒が回った体を一度湯船に浸からせ温める。
5分程も浸かっていたが、段々と眠くなってしまいダメだと分かっていても風呂蓋に頭をもたれて目を瞑ってしまった。
あれ?お風呂で眠くなるのって気絶と一緒だって何かで言ってたっけ?
そう思ったが酔いと眠気に勝てず意識を手放してしまった。
ーーー寒いな…
肌に感じる温度の低さを頭が感じ始めた。
妙な開放感と肌に当たる感触に違和感を覚え、じわじわと眠気が飛び始める。
「んー、さむっ…」
呟いてまだ覚醒し切らず目を開けた。
「ん?…は!??」
目を開ければそこは自宅の風呂場では無かった。
屋外の砂利の上に横たえ、体は水滴が付いたまま、素っ裸の己を見下ろす人がいるではないか!
「なに!?なんで!?」
人間って焦ると悲鳴も出ないって本当なんだなーと片隅で思ったのは、まだお酒が残ってる所為かも知れない。とにかく小さくうずくまり見える面積を減らそうと努力してみるがパニックになっていてガクガクと震えてしまう。
「なんだァテメェ?どっから出てきやがったァ!?」
「こここここ!こわっ!怖い!!誰!?何!?どこ!?」
「…鬼ではないようだ」
傷だらけの男性が今まで経験した事のない目で睨み付け生命の危機を覚える。が、ジャラジャラと数珠を鳴らした大男が鬼じゃないと肩にかけていた渋い抹茶色の羽織を掛けてくれた。
咄嗟にその羽織を体に巻き付けると、恥ずかしさが和らいで少しだけ冷静になれた。おずおずと周囲を見渡し情報を収集する。
「……おぉう、まじか。まじでか。」
なんとも情けない言葉しか出て来なかった。
見た事のある人物が9人いるではないか。
でもおかしい。確かに私はお風呂に入って寝落ちしたはず。なのに、目の前には鬼滅の柱たちが目を見開いてこちらを見ているなんて。
「よもや!急に人が現れるとは!鬼ではないなら何か奇術だろうか?」
「真昼間にこんな所に素っ裸で現れる奇術なんて、派手に有り得ん。どこかの間者か?」
「……っ!」
緊張で喉が張り付いて声が出せない。
代わりにポロポロと涙が溢れてしまう。
「泣いたって貴様の怪しさは無くならん。状況を打破するためにも、何かしらは喋った方が身のためだと少し考えれば分かるだろう。」
「いっ伊黒さん!そんな風に言ったら話しにくくなるわ。」
確かにその通りで、意を決して声を出してみる事にした。
「…っ私は、ななしと、申します。…あの、決して怪しい者では無くて!お風呂に入っていたはずが、その、目が覚めたらここに…!」
なんでかは分かりません…と必死に訴え続けたが当然誰も納得しない。
埒が明かないと思ったのか、面倒そうな声が響く。
「僕はすぐ忘れるし、殺してもいいと思うけど御館様に聞いた方がいいと思うよ」
「…それもそうですね。先ほど会議が終わったばかりですし、まだお近くにいらっしゃるはずですから一応お伺いしてみましょう。」
どこか虚な瞳でこちら見ている男の子にも、にこり、と微笑む少女にも見覚えがある。
しのぶさんは紙面で見るよりも綺麗に微笑むんだなぁ、なんて呑気に見入ってしまった。
その後数分で御館様が戻って来てくれ、私の身柄はとりあえず蝶屋敷で預かって貰えることになった。
死ぬか殺されるか、経験した事のない緊張感に嗚咽する姿に同情してくれたのだろうか。
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