白干し梅(長編)
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差し込む朝日に目が覚めるが、目覚めはあまり良くなかった。
昨夜宇髄さんに泣き喚いたので、目は腫れているだろうし熟睡もできなかった。
泣き疲れて寝落ちしたようで、自分で布団に入った記憶がない。泣き喚いた情けなさと、未だに残る少しの怒りに、起きたくなくて布団を頭から被った。しかし先ほどから室外からガタガタと物音が聞こえているので私が起きるのを待っているのだと思い、諦めて体を起こした。
枕の上にはいつの間に用意したのか、持参した風呂敷包みと、顔洗い用に水を張った桶が置いてあり、宇髄さんのそつのない行動にため息をついてしまった。
手早く支度を済ませて襖を開けると、夜とは違い隊服姿の宇髄さんがいた。
「おはようさん。」
「…おはようございます」
昨晩のやり取りが脳裏を過ぎり、恥ずかしさからどこか緊張してしまい唇を引き結んでしまう。
宇髄さんはそんな私の顔をまじまじと見るが何も言わず、着いて来いと顎先をクイとあげ、スタスタと先に歩いて行く。その背を追いかけると着いた先には美味しそうに湯気を立てるご飯が用意されていた。
「簡単なモンしか無えがこれで十分だろ」
ドカっとその場に座りご飯を食べ始めた彼の様子を、眠たい顔でぼーっと見つめていると、巨躯に似合わず小首を傾げた。
「食わねえのか?」
ハッと我に返り小さく頭を下げてから用意してくれた膳の前に座って手を合わせた。ご飯、お味噌汁、おしんこだけと簡素だが、温かい食べ物を口に運ぶとホッとして顔の強張りが緩む。
その様子を満足げに見やり、宇髄さんも箸を進めた。
先に食べ終えた宇髄さんが、膳を下げるとどこか忙しなさそうに見えた。
「何かあるんですか?」
そう聞くとお前は急いで食べなくてもいい、と前置きして。
「これから柱合会議だ。まあ、お前の件についても何かしらあるだろうが、ただの凡人そのものだと俺から口添えしておいてやるよ」
感謝しろ、と微笑みとは程遠い笑みを浮かべて、腕を組んで偉そうに私を見下ろしている。
そんな宇髄さんの態度に口を尖らせ、睨み付けてみる。が、ポンと頭を撫でて笑われた。
「子猫の威嚇と同等だな」
「一言余計なんですよ!!」
「昼頃には戻って来るから、それまでここで地味に
蝶屋敷、と聞いてパッと気分が明るくなるのが分かった。
「蝶屋敷に戻れるんですね!」
わーい!と喜ぶと目の前の宇髄さんはポカンとした後呆れた顔をする。
両手で私の顔を掴むと、居心地悪くて悪かったな、と悪態をつき、ふと何か思い付いた様子でニヤリと笑った。
「よし、どうせお前の事が議題に挙がるんだ。その方が早い、着いて来い」
「は?」
「目隠ししとけば大丈夫だろ。そうと決まれば早く食べろ」
「は!?」
そう言うや否や彼は何処からか手拭いを用意し、眩しいほどの笑顔で早くしろと圧をかけてくる。
正直、こんな笑顔はもっと違う場面で見たかった。
笑顔の圧に負けて、ご飯をかき込み膳を下げて洗い終わると、ずっとぴったりと背後に付いていた宇髄さんは慣れた手つきで私に目隠しをする。
ギチギチに絞められちょっと痛いくらいだ。
ちょっと緩めて欲しいと言おうとした瞬間、体が宙に浮いて言えなくなってしまった。
胃の辺りが押されているので多分、俵担ぎをされているのだろう。食べたばかりでとても辛い。
「ぐぇっ…!宇髄さん、ちょっとくるし」
「舌噛むから喋るなよ」
返事は無慈悲だった。
言葉の後、人が走っているとは思えない速さで駆けているようだ。もう本当に喋れないし、駆ける度宇髄さんの肩で胃が押されて吐き気がしてきている。目隠しで視界を奪われると余計に酔ってくる。まさか乗り物(宇髄)酔いをするとは思わなかった。
「着いたぞ!」
急に止まったかと思うと、その言葉と同時にピシャ!とお尻を叩かれた。
「痛い!」
走り出して割と早い段階で酔いと戦っていた為、到着が早いのか遅いのかも分からず、とにかく着いたのなら降ろして欲しくて足をバタつかせた。
「降ろしてください…!吐きそうです…」
「ちょっとここで待ってろ。人を呼んでやる」
何故かもう一度お尻を叩かれ、再度小さく悲鳴を上げるとようやく地面に足を着けることができた。
迫り来る吐き気に蹲って耐えていると、宇髄さんが人を呼んでくれたようですぐに2人駆けつけてくれた。一部始終を見ていたのか、心配そうに優しく背中をさすってくれた。
「んじゃ、俺は先に行ってくる」
「はい…ちょっと動けそうにないです」
「ななしの議題になったら呼ぶからさっさと来いよ」
迫り上がる胃液を飲み込みながら力無く頷くと、呼んでくれた隠の人に何か耳打ちをし、中へと消えていった。
相変わらず背中をさすってくれる手が優しい。
いつまでも出入り口にいるわけにいかないので、隠2人に両脇を支えられ中へ入った。
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