短編
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「焼き方が悪いのかな…」
もう少しで0時を回ろうとしていた頃、食堂の厨房でアクリアスが焼きあがったクッキーを見つめ俯いていた。
これで5回目、そのクッキーがなかなか焼きあがりがうまくいかずに焦げ目が少しついてしまうのだ。
なんとかオリヴィエに教えて貰い、ここまでは出来たのだが焦げたクッキーが山の様に増えていく。
「(でも、オスカーさんにこんなの渡して嫌われたくないし…)」
はぁ、と小さく溜息を吐き自分用の袋に詰めていく。
先ほどからこの繰り返しで、生地は残り少ないが型を取り鉄板に乗せ焼く準備をしていると厨房の入り口で見知った人影が姿を現してしまう。
「あれ、アクリアス?もう遅いのにこんな時間まで何してるんだい?」
現れたのはオスカーその人だった。
就寝前でいつもの防具は外されており、軽装の彼を見るのはいつぶりかと思い返してしまうがこちらもマントを脱ぎ料理中ということで髪を結っている。
「え、えっと…その」
「おや…、もしかして誰かに贈り物でも作っていたのかい?」
アクリアスの背後にある材料や食器類を見てオスカーがこちらに歩み寄ってくるのに対して、急いで失敗作を見えない様に隠した。
「いつもお世話になっていますので…、そのお礼にでもと思いまして」
「そっか、ごめんね厨房の明かりが点いていたから見に来てしまったんだ」
「い、いえ、オスカーさんもいつもお疲れ様です」
ジーっ、とアクリアスを見てオスカーが「アクリアス、両手を上げてみて」と云われ素直に両手を上げてしまい手に持っていた失敗作を露にしてしまう。
「しまった!」と恥ずかしさで顔を赤くしてしまい、俯いてしまうがすぐにオスカーが膝を折りアクリアスと目線を合わせ口を開く。
「ごめん、少し意地悪しすぎたね。アクリアスから贈り物を貰う人が羨ましくてつい…」
「え?お、オスカーさん…?」
「今日1日中、君がソワソワしていたのは知っていたんだ。やはり私も落ち着かなかくてね、…はっきり言わせてもらうとアクリアスと出会ったあの時から私は君を慕っていた」
急な告白に頭が追い付かずにいるとオスカーに両手を取られ、優しく握りしめられると言葉を続けた。
「アクリアスは自覚がないのかもしれないのだけれど、他の英雄達を惹き付ける魅力を持っていてたまに独り占めしたいとまで思ってしまうんだ」
「お、オスカーさん!待ってください、急すぎてあの…私!!」
オスカーの求愛にアクリアスも胸をドキドキさせながら深呼吸し、一旦落ち着かせると顔の熱は取れないものの高を括る。
「贈り物…、オスカーさんに渡したかったんです。でも、上手くいかなくて…」
「本当に私に?」
「こ、こんな状況で嘘は吐けません」
「そっか…」
先ほどよりも雰囲気がやわらかくなり、表情も一変し嬉しそうに眉を下げ笑っていたのにはアクリアスも安堵してしまう。
「その袋の中身、私が貰っても構わないかな?」
「これは失敗作なので…」
「大丈夫、アクリアスが心を込めて作ってくれた物は私が全部食べるよ」
そう云い残し、オスカーがアクリアスを抱き寄せ壊れ物を扱うような仕草で腕の中に抱き締められる。
首筋に顔を埋められ、恥ずかしいのとくすぐったさで頭が真っ白になってしまいそうになってしまう。
「(大人ってずるい…)」
当の本人は、嬉しそうにアクリアスを堪能しているのだがどう反応していいものなのかわからないまま時が過ぎてしまう。
20180212
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