短編
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アクリアス←クライネ
「ちょっと、アクリアス?!あんた、なんで戦いの最中にあたしのこと庇ったのよ!!あんなゴミクズ共、一瞬で撃ち殺せるわ!」
石畳の廊下に木霊するクライネの声がアクリアスの脳内に響き渡る。
遠征が終り、帰路につこうとした瞬間をエンブラ帝国の兵士たちに隙を突かれ奇襲されてしまったのだ。
アクリアスの近くにいたクライネが敵の剣士に襲われるのを見て、咄嗟にクライネの身体に飛びつき何とか守れたのだが自分の背中に剣先が掠ってしまい怪我を負ってしまった。
その事でクライネがぶち切れてしまい、残りの敵を殲滅したまではよかったものの今現在は至って不機嫌である。
「クライネが危なかったから…」
「あたしは怪我したっていいのよっ!あんたが…、アクリアスが死んじゃったらここはどうなるの!?」
「クライネ、落ち着いて。私は生きてる、まだ私は死ねないの」
唇を噛み締め、アクリアスを睨みつける瞳の奥からは涙が溢れてくるのを見て言い過ぎたと心の中で反省する。
クライネがどんな思いをしてアクリアスのことを待っていたのか痛いほどに理解してしまう。
「ごめんなさい…、先程の件は私の考えが甘かったせいでクライネにも嫌な思いをさせてしまいました。でも、クライネも怪我をしたら痛いですよね?」
右手でクライネの瞳に溢れる涙を拭きとり、優しく彼女の頬を撫ぜる。
そんな仕草にクライネも居心地の悪そうな表情でアクリアスを見つめた。
「戦いに出て、皆さんに守ってもらう一方で私には恩返しする事が出来ません」
「…なに言ってんのよ?あたしがここに来てから、あんたからは十分すぎるほどいっぱい貰った」
不意にアクリアスが口元を上げ、クライネの頭を優しく撫ぜていると顔を真っ赤にしながら手を振り解く。
茫然とするアクリアスにクライネがいつもの様に鋭い眼つきで睨みつけてくる。
そんな彼女のツンツンとした態度にアクリアスは笑ってしまう。
「ふふ…」
「…何?なんか文句でもあるわけ?」
「ううん、ありがとうクライネ。こんな何も出来ない私の所に来てくれて」
左手の義手から鉄の擦り切れる音が聞こえ、黙りこくってしまうクライネにニッと歯を見せ笑ってみせると左手を掴み廊下を駆け出す。
急に掴まれた手を見つめ、ほんの少し安堵してしまう自分自身にクライネは胸の奥で芽生えつつある温かさにどうすればいいのかわからずにいた。
20180211