短編
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「エフラム様…?」
ふと、エフラムに右手を掴まれアクリアスが不思議そうに顔を覗きこむ。
苦しそうに眉根を眉間に寄せながら、何もない左腕を見つめていた。
「(あの時の事を未だ引きずっているのですね)」
いつもしている義手がメンテナンスのため、アクリアスの左肘から下がないのはたまにあることだ。
傷口も痛み出すので、戦や訓練がない時は大抵取り外している。
「あの時のことは誰も悪くないです、ただ私が助けたいと思い行動しただけです」
「アクリアス…」
「エフラム様とこうしてまた出会えたのですから、そんなお顔をなさらないで…。笑ってください」
口元を上げ、エフラムを見直すと彼もアクリアスの優しい笑みを見つめ溜息を吐きながら目を瞑る。
「ああ…、そうだな。今度は必ずお前を守ってみせる、だからアクリアスも絶対にあの時みたいに無茶はしないでくれ」
「はい、ここではエフラム様やエイリーク様。それに、ヒーニアス様とゼト殿もいらっしゃいますので皆さんのお力をお借りしたいです。ですが、私も何かお役に立たなければいけません」
会話をしている中、気持ちのいい風が2人のマントを靡かす。
特務機関が使っている城の周りには自然が豊かで、木々や動物などお目にかかることが多々ある。
休みの日は外で昼寝をしている者もいる、だからこそ今回も平和な国を絶対に守らなければいけない。
それが、ここに呼ばれた意味なのだから。
「それと、ここでは様はよしてくれ。俺のことはエフラムでいいと言っているだろう」
「で、ですが…」
「俺が気になるんだ」
「え、エフラム…さん?」
「エフラムだ」
オドオドとしながら、どうしたものかとエフラムを見るが彼もまたアクリアスを見つめ口を閉じる。
「あ、の…エフラム」
「どうした?」
彼の名を呼ぶと嬉しそうに笑う顔がなんとも綺麗だった。
さすが王族だと感心しながらも、アクリアスは「なんでもないです」と笑い返す。
ふと、アクリアスが背を向き止まっていた歩を進める。
後ろ姿を見て、あの戦いが終りアクリアスの背を見送ることしか出来なかったエフラムには眩しいものだった。
今はもう自分の知らない沢山の仲間を助け、幾つもの世界を救い軍師としての采配も素晴らしいく成長していた。
多くを学んだアクリアスの横顔を見ると女性としても、美しく気高くなりそちらの方のライバルも多いと見た。
「(エイリークも後悔していた、あの時アクリアスを引き留めていれば少しは運命が違ったのかもしれない)」
拳を握りしめ、今度は絶対に傷付けさせずアクリアスを救うと心に固く誓う。
そんなエフラムの誓いなど、知る由もないアクリアスには。彼女だけには、笑顔でいて欲しいと願ってしまう。
「(…それでも、最後までお前の隣に居たかったんだ。)」
20180210