短編
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「ふう…」
両手いっぱいにおさまっている武器を重たそうに抱えていたアクリアスが、一息吐きながら城の長い廊下を一望した。
仲間が増えたことによって武器や食料の管理をしなければいけないと思い、自分に出来ることを率先して手をつけるのだが見知った仲間には怒られ仕事が無くなってしまう事が多々あってしまう。
片手が義手になっても普通通りに接してほしいと思いながらも、過保護に世話を焼かれてしまうのには落ち込んでしまいそうになる。
「よし」
武器を抱え直し歩こうとした瞬間、背後から誰かの手が伸び全ての武器を奪われてしまう。
恐る恐る後ろを見やると眉を顰めながら、緑色のバンダナをした男が立ってた。
傍から見たら無愛想な人と思われがちだが、彼アイクはアクリアスに対しては特に過保護だと思われる。
「またこんなに重たい物持って、誰か他に居なかったのか?」
「えっと…、その…少しは自分でもやらないといけませんので」
「1人で運ぼうとするな」
「でも、私もちゃんと皆さんのお役にたたないと」
「だったら、俺にでも声をかければよかっただろう?」
両手で持っていた武器を軽々と片手で持ち直し、「行くぞ」と目線をアクリアスからずらし歩を進めた。
アイクの後を追い、小走りで駆けつけると慌てた様にアイクに詰め寄る。
「ごめんなさい、アイクは訓練していたんじゃないの?」
「アクリアスが見えたから来ただけだ、後でも訓練は出来る」
「そっか、アイクはいつも私が困っているとすぐに飛んできてくれるから助かります」
ふふ、と小さく笑みを溢しアイクを見上げると「そうだな」と相槌を打つ。
「俺はこんなことしか出来んからな、他の奴よりも無愛想なのにアクリアスはいつも俺に笑いかけてくれるから心が安らぐ…」
いつもは笑わないアイクが口元を小さく上げ、こちらに笑い返してくれるのに対してアクリアスは心の中で驚いたとばかりに目を見開いてしまう。
「アイクとは長い付き合いでしたから、無愛想でも優しい人なのだと知ってますので」
「…そうだったな」
「ええ、これからもよろしくお願いしますね団長!」
「今はあんたに雇われた身だがな」
軽口を叩きあえる仲だが、アイクは表情を変えずに胸の奥底にあるアクリアスへの想いを募らせていた。
ここに来て、アクリアスと再会した時は夢かと思ったが今でも彼女が隣に居るのだと錯覚を起こしてしまいそうになってしまう程に。
「(此処にはアクリアスの顔見知りが多すぎる…)」
「今日の夕食はオスカーさんが当番なんですよ!」
「(特に、もう2人の俺には負けるつもりはないがな)」
「ねえ、アイク聞いてます?」
「ああ、今日は肉が食いたい」
「もう、アイクは本当にお肉が好きですね」
「(肉よりもアクリアスの方が何倍も好きなのだが、まだ言うべきではないな)」
陽に照らされた色素の薄いアクリアスの髪が風に揺れる。
綺麗だと思いながらも、この時間を無駄にはしたくない。
「やはり、あんたと一緒に居ると落ち着く」
「そうなのですか?」
「ああ」
誰にも奪えない、この時間だけはアクリアスにとっても平和なものであってほしいとアイクは思った。
20180205