画面の向こう側
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「よし、投稿完了っと!」
私は新田百合。四天宝寺中三年の女子だ。たまにこうやって筋トレとか柔軟とかダンスを動画サイトに投稿するのが趣味だ。色々好きで学んできたものが形になって誰かのためになるのは嬉しい。最近、再生数も伸びてきて楽しい。最近はコメントも書いてくれる人がいる。
初めてコメントをくれたKuraさんは、すごく丁寧に私の動画を褒めてくれる。なんだか気恥ずかしくて。でもすごく嬉しい。それをきっかけに新しい動画をあげるたび、コメントがつくようになった。軽く文通みたいだ。それが楽しくて、新作の動画を頑張って作っているようなところもある。
「Kuraさんかぁー」
実は私が好きな人もKuraとついている。偶然なんだろうけど。つい、その人のことだと思ってしまって、相変わらずこじらせている。
「はー本当にこの人が白石くんだったらえぇのに」
私の叶わない初恋。
白石蔵ノ介くん。
四天宝寺、いや、他校にだって居ないであろうイケメンさん。
私なんて手が届かない。
たまたま学年が一緒なだけでクラスも違う。
ますます遠い存在だ
白石くんは性格も良くて誰にでも分け隔てなく優しい。
だから女子からとにかく人気だ。
密かにファンクラブもあるらしい。
私にはこの淡い片思いをこっそり抱くしかないのだ。
「おはよう、石田くん」
「あぁ新田はん、おはようさん」
隣の席の石田くんに挨拶する。
なかなか渋い出で立ちでみんなから師範って呼ばれている。なかなか的を得ているあだ名だ。
「何見てるの?」
「あぁ、今、部内で流行っとるらしくてな。ワシも見てたんや」
「へぇ、私にも見せて?」
「あぁ、えぇで」
石田くんのスマホを見せてもらう。
そこに映ってたのは、、
「えっ?!うそ!!!」
「ど、どないしたんや?」
「え、え、いや、な、なんでもないよ!!」
まさか私の上げてる動画だとは思わない。なんで、なんで、こんな偶然。。
「そうか?ならえぇんやけど
これ白石はんが見てて勧められてな」
「?!?!」
絶句だ、、私の動画が、しかも白石くんにみられている?!
そんなあ偶然があっていいんやろうか。。
「その反応。やっぱりか」
「え、え?」
「なんとなくやけど。新田はんに似てるなぁなんて思ってたんや」
「え、えーそんなこと、ないんやないかな!!」
「面白いなぁ。ばればれやで」
「……そうやね、、」
自分でもテンパり過ぎて隠しきれなかったのはわかってた。
「ねぇそれなんやけど」
「黙っといた方がえぇんやろ?」
「おおきに、師範!!」
「新田はんまでそんな呼び方するんやな」
「は、つい。。」
「好きに呼べばえぇ」
石田くんはそう言って穏やか笑った。恥ずかしいような悔しいような不思議な気持ちだった。
そんな時だった。
「銀さんいるかー?」
「おぉ、白石はん、どないしたん?」
ドキッと胸が高鳴る。
私の想い人の白石くんが珍しくこの教室に入ってくる。
教室内もざわめいていた。
「すまんなぁ国語の教科書わすれてしもて」
「ほぅ、白石はんにしては珍しいな」
「俺やてそんな完璧ばっかりやないんやで銀さん」
「はははっやな」
「それで銀さん今日持ってるか?
次の時間使うから貸してほしいんやけど」
「せやなぁ……」
そう考えるそぶりでこちらを見る。
ど、どうしたんだろ石田くん。
「悪いが俺も忘れてしもてな
新田はん持ってたやろ、すまんが白石はんに貸してやってくれへんか?」
「え、え?!
私?!?!」
いきなり振られてびっくりする。
まさか石田くんわざと?!
思惑がわからなくてドキドキしてしまう。
「えぇやろ白石はん」
「俺は助かるけど、新田さん平気なん?」
「え、えと……大丈夫やよ」
「ほんま、おおきに!助かるわ」
爽やかに笑う彼にドキッとしてしまう。まさかこんな形で関わりを持とうとは夢にも思わんかった。
「じゃあ次の休み時間に返すな」
「う、うん。わかった」
そう言って私の教科書を持って白石くんは自分の教室に戻っていった。
「石田くん、、」
「はは、余計なお世話やったろか?」
「ぐ、グッジョブです……」
「そら良かったわ」
穏やかに笑う石田くんには敵わないと思った。
次の休み時間
それまで、また白石くんが来ると思うとドキドキしてしまって。授業どころじゃなかった。先生に当てられてもボケっとしてしまったため、一発芸を振られてしまい、見事に滑ってしまう失態を犯してしまう。ほんとこの学校は怖いわ。
そんな凹んでいるとついにその時間が来てしまった。
「新田さん」
「ひゃい!……っ」
「どないしたん、声裏返ってるで」
クツクツと笑う白石くんに恥ずかしすぎる。そんな姿も格好良い。
「おおきにな教科書助かったわ」
「お、おん!どういたまして」
「ぷっ……やっぱおもろいわ自分」
めちゃくちゃ笑われてしまったけどいいかって思えてしまう。
私が白石くんを笑わせたという実績がとても嬉しく思ってしまう。
微々たるものだけど。
「そういえば白石はん
新田さんもあの動画見てるんやて」
「あ、ほんまに!仲間やん!!」
「え、あ、ちょ、、石田くん?!」
まさかの援護射撃に驚いてしまう。
これは完全に気持ちまでバレてやられている。
石田くんってそんなキャラだっけ。。
まぁ優しななんだろうな、お茶目なのだろうか。
「あれめっちゃ好きでなぁ
毎日一緒にやってんやで」
「ま、毎日!へ、へぇ……凄いね」
「ほんまフォームも綺麗やし
どれも参考になるしな」
「あ、はは、それは良かったね」
「なぁ、新田さんも見てるんやったら
こんど、その話しような!」
「わ、わかったわ」
それからと言うものの
借りに来たことをきっかけに
白石くんがよくうちのクラスに遊びに来てくれるようになった。
石田くんがいるおかげもあるだろうけど。
前にも増してテニス部メンバーが集うようになった気が。。
「せやからあれやん!」
「どの話っちゅー話やで謙也」
「先輩方、うるさすぎっスわ
他のクラスで」
「財前かてここは先輩の教室やぞ?」
「は?謙也さんに引きずられて来たんですやん」
「ほんま騒がしくてすまんな新田さん」
「ははは、大丈夫やよ……」
わちゃわちゃしている中で白石くんはみんなに気を配っている。
優しいんやな。すき。そんな感情が軽率にあふれてくる。
「そーいやあの動画最近あげないなぁ」
「あ、あーそうやね。なんでやろね!」
「まぁえぇんやけど。体調とか崩してへんとえぇけどな」
しらばっくれているが。その配信者とは私のことで。
白石くんが動画を上げないことより私の体の心配をしてくれることが凄く嬉しい。まぁ直接言われているわけではないが。間接的に。
それに新しい動画をあげないことには理由がある。
スランプだ。白石くんが見てくれると意識しだしてから何を上げていいか分からなくなってしまった。動画とはいえ、一緒にやると言う彼の言葉を聞いてからなんだか気恥ずかしくなってしまった。動画を撮影するたびに彼が近くにいるようでとても生きた心地がしなくなった。
でも、そろそろ新しい動画をあげないと他に心待ちにしてくれるファンの方に申し訳ない。コメントやDMで最新動画を心待ちにしてくれる人が問い合てくる。だから、そろそろ。。
「……新田さん?大丈夫か??」
「え、あ、だ、大丈夫……!?」
私が悩んでいた顔をしてしまったんだろう。
白石くんが私を心配そうな顔で覗き込む。
思ったより近くて恥ずかしくてびっくりする。
「何か悩み事でもあるん?」
「あ、いやーえと……」
「答えたくないやらえぇんやで」
「な、なぁ……白石くん」
「ん?なんや?」
優しく尋ねられて心臓が破裂しそうだ。
「もし、、あの動画の人に会えるってなったら
白石くんは会いたいと思う??」
「え、あーせやねぇ」
白石くんは悩むように上を見上げて思案する。
「まぁ別世界の人やしね
それで割りきっとるからな」
「そ、そうだよね」
「向こうも顔出ししてへんのやから
会うんは嫌なんちゃうかな?」
「……そんなことないよ、きっと
白石くんになら会いたいって思うよ、きっと、、」
つい第三者視点から私の思いがあふれる。
会いたい。私がその配信者だって言いたい。
言ったら、私のこと好きになってくれる?
そんあ脆く淡い期待がよぎってしまう。
「なんや優しいなぁ新田さんは
俺がファンやから気つこてくれるん?」
「違うよ……」
そう否定するしかできなかった。
ここでバラしても何も変わらない気がする。
そうやったんや!ってなって終わり。
そうしてら、こうやって話す機会もなくなってしまう。
それだけは絶対に嫌だ。せっかく話す機会に恵まれたのに。
話友達だけでも死守したい。返ったら動画を作ってあげよう。
ファンのために、、白石くんのために。
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