尸魂界篇
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藍染の反乱から数日。
卯ノ花の治療によって傷が癒えた日番谷はあれから毎日のように四番隊の綜合救護詰所に訪れた。
「…天寧…」
詰所の一室にて、死んだように眠る天寧には呼吸器が装着され、荒い息を繰り返していた。
……数日間…ずっと。
『天寧はっ…!天寧の状態は…!!』
日番谷が目を覚ました時には全て終わっていた。
藍染、市丸、東仙の裏切りにより多くの者が傷付いた。その中にはもちろん天寧も入っていた。
藍染や市丸により重傷を負った天寧は
海燕に助けられたとはいえ万全とは言えない状態で瀞霊廷を駆け回り、相当な無茶をした。その結果が今の状態だと卯ノ花に言われた。
『志波副隊長補佐は多くの血を流しました。
肩から腰にかけての裂傷や腹の刺傷も深く、
あの場であれだけの動きができたのは奇跡にも等しいです。
その分、彼女の眠りは深いものになったと考えていいでしょう。どうかお声をかけてあげてください』
頭を鈍器で殴られた感覚がした。
全身から血の気が引き、目の前が真っ暗になった。
あの時、ふらふらと覚束ない足取りで天寧の元へ行ったのは覚えている。包帯に包まれた手を取ったのも覚えている。
けれど、どうやって帰ったのかは解らない。
気付いたら天寧と住んでいる家にいた。
『見兼ねた志波副隊長が連れて行ってくれたんですよ、流石のあの人も今の隊長は見ていられなかったんじゃないですか…?』
翌日、松本から聞けばそういう事だったらしい。
お礼を言いに行けば、目の下に隈を拵えた海燕が出迎えて……
『礼なんざいらねーよ。
礼言ってる暇あったらさっさとその面どうにかしろ』
そう言われた。こっちの台詞だと言おうとしたが
言う前に追い払われてしまった。
去り際に“天寧、待ってんぞ”と言われ
大人しく救護詰所へと向かった。
声をかけてと卯ノ花に言われたが
その言葉が思いつかなかった。
いつも喋っているのは天寧であり
自分は相槌を打って、聞き手に回る事が多かった。
それに気付いた時、日番谷は項垂れた。
彼女に惚れた時はどうにか振り向いてもらおうと自分から話しかけに行っていたというのに…今ではそれができなくなっていた。
「…あの時は、必死だったんだな…」
笑ってほしい、楽しんでほしい、
自分の事だけを見てほしい。
好きだと言ってほしい、愛していると言ってほしい。
その目を自分だけに、向けてほしい。
その一心だったんだ。
だから慣れない事をしたんだ。
天寧と付き合ってからはどうだ、
愛を語るのは?話かけるのは?抱き締めるのは?
「天寧は…いつも俺を振り回す…」
だが、それが心地良い。
天寧が中心になって回る世界が心地良い。
天寧は大空だ。大空のように広い心で、包み込んでくれる。
「手、冷てぇな…俺より体温高ぇ癖に」
早く目を覚ましてくれ。
そう願いながら、冷たい手を握る。
いつものように名前を呼んでくれ。
抱き締めくれ、愛を語ってくれ、口付けをしてくれ。
「Ti amo…」
彼女から最初に教わった言葉を口にして
そっと天寧の瞼を擦る。
すると、彼女の長い睫毛が僅かに震えた。
「!天寧!?」
「…………………………と、しろ…?」
ふるふると瞼がゆっくり開けられ、
炎のような橙が日番谷へと向けられる。
掠れた声で名前を呼ばれて、目頭が熱くなるのを感じた。
「天寧っ…良かった…!良かった…!!」
「……わたし…ずいぶんと、ねてたみたい…」
天寧の手を両手で包み込み、額へと当てると、天寧の手が緩く握り返された。
「済まなかった…!
天寧を、護れなかった…!
痛い思いも、苦しい思いもさせちまった…!
ごめん…!ごめん…!」
謝り続ける日番谷に天寧は微笑む。
握られていない方の手をゆっくりと動かし、
日番谷の額に人差し指を当てる。
「!」
「わるい、こ…」
「天寧…」
「あなたが、あやまることなんて…ない…
かってにつっこんで…かってにまけたのは…わたし」
天寧の声は掠れていたが、その言葉は日番谷の耳にちゃんと届いていた。日番谷は一瞬だけ目を見開き、やがて悔しげに眉根を寄せて目を瞑る。
「卯ノ花を呼んでくる…寝てろ…」
「とうしろ…」
「…なんだ…」
天寧が目を覚ました事を伝えなければ…と無理矢理彼女から目を逸らした時、離した手を弱々しく掴まれる。
「ぶじで、よかった…」
「っ…俺より、自分の心配をしやがれ…
お前の方が重傷なんだぞ」
「わたしは、じょーぶだから」
「それでも何日も寝込んでんだ…意味ねぇだろ…」
日番谷は天寧の髪を撫でた後、
ゆっくりと重たそうな瞼を親指で擦る。
するとくすぐったそうに目を細め、やがて眠るように目を瞑った。
「おやすみ、天寧。
ゆっくり休んでくれ…」
卯ノ花の治療によって傷が癒えた日番谷はあれから毎日のように四番隊の綜合救護詰所に訪れた。
「…天寧…」
詰所の一室にて、死んだように眠る天寧には呼吸器が装着され、荒い息を繰り返していた。
……数日間…ずっと。
『天寧はっ…!天寧の状態は…!!』
日番谷が目を覚ました時には全て終わっていた。
藍染、市丸、東仙の裏切りにより多くの者が傷付いた。その中にはもちろん天寧も入っていた。
藍染や市丸により重傷を負った天寧は
海燕に助けられたとはいえ万全とは言えない状態で瀞霊廷を駆け回り、相当な無茶をした。その結果が今の状態だと卯ノ花に言われた。
『志波副隊長補佐は多くの血を流しました。
肩から腰にかけての裂傷や腹の刺傷も深く、
あの場であれだけの動きができたのは奇跡にも等しいです。
その分、彼女の眠りは深いものになったと考えていいでしょう。どうかお声をかけてあげてください』
頭を鈍器で殴られた感覚がした。
全身から血の気が引き、目の前が真っ暗になった。
あの時、ふらふらと覚束ない足取りで天寧の元へ行ったのは覚えている。包帯に包まれた手を取ったのも覚えている。
けれど、どうやって帰ったのかは解らない。
気付いたら天寧と住んでいる家にいた。
『見兼ねた志波副隊長が連れて行ってくれたんですよ、流石のあの人も今の隊長は見ていられなかったんじゃないですか…?』
翌日、松本から聞けばそういう事だったらしい。
お礼を言いに行けば、目の下に隈を拵えた海燕が出迎えて……
『礼なんざいらねーよ。
礼言ってる暇あったらさっさとその面どうにかしろ』
そう言われた。こっちの台詞だと言おうとしたが
言う前に追い払われてしまった。
去り際に“天寧、待ってんぞ”と言われ
大人しく救護詰所へと向かった。
声をかけてと卯ノ花に言われたが
その言葉が思いつかなかった。
いつも喋っているのは天寧であり
自分は相槌を打って、聞き手に回る事が多かった。
それに気付いた時、日番谷は項垂れた。
彼女に惚れた時はどうにか振り向いてもらおうと自分から話しかけに行っていたというのに…今ではそれができなくなっていた。
「…あの時は、必死だったんだな…」
笑ってほしい、楽しんでほしい、
自分の事だけを見てほしい。
好きだと言ってほしい、愛していると言ってほしい。
その目を自分だけに、向けてほしい。
その一心だったんだ。
だから慣れない事をしたんだ。
天寧と付き合ってからはどうだ、
愛を語るのは?話かけるのは?抱き締めるのは?
「天寧は…いつも俺を振り回す…」
だが、それが心地良い。
天寧が中心になって回る世界が心地良い。
天寧は大空だ。大空のように広い心で、包み込んでくれる。
「手、冷てぇな…俺より体温高ぇ癖に」
早く目を覚ましてくれ。
そう願いながら、冷たい手を握る。
いつものように名前を呼んでくれ。
抱き締めくれ、愛を語ってくれ、口付けをしてくれ。
「Ti amo…」
彼女から最初に教わった言葉を口にして
そっと天寧の瞼を擦る。
すると、彼女の長い睫毛が僅かに震えた。
「!天寧!?」
「…………………………と、しろ…?」
ふるふると瞼がゆっくり開けられ、
炎のような橙が日番谷へと向けられる。
掠れた声で名前を呼ばれて、目頭が熱くなるのを感じた。
「天寧っ…良かった…!良かった…!!」
「……わたし…ずいぶんと、ねてたみたい…」
天寧の手を両手で包み込み、額へと当てると、天寧の手が緩く握り返された。
「済まなかった…!
天寧を、護れなかった…!
痛い思いも、苦しい思いもさせちまった…!
ごめん…!ごめん…!」
謝り続ける日番谷に天寧は微笑む。
握られていない方の手をゆっくりと動かし、
日番谷の額に人差し指を当てる。
「!」
「わるい、こ…」
「天寧…」
「あなたが、あやまることなんて…ない…
かってにつっこんで…かってにまけたのは…わたし」
天寧の声は掠れていたが、その言葉は日番谷の耳にちゃんと届いていた。日番谷は一瞬だけ目を見開き、やがて悔しげに眉根を寄せて目を瞑る。
「卯ノ花を呼んでくる…寝てろ…」
「とうしろ…」
「…なんだ…」
天寧が目を覚ました事を伝えなければ…と無理矢理彼女から目を逸らした時、離した手を弱々しく掴まれる。
「ぶじで、よかった…」
「っ…俺より、自分の心配をしやがれ…
お前の方が重傷なんだぞ」
「わたしは、じょーぶだから」
「それでも何日も寝込んでんだ…意味ねぇだろ…」
日番谷は天寧の髪を撫でた後、
ゆっくりと重たそうな瞼を親指で擦る。
するとくすぐったそうに目を細め、やがて眠るように目を瞑った。
「おやすみ、天寧。
ゆっくり休んでくれ…」
