「_____これが今ここで起こっている現状だ。
理解したな」


「は、はい…」


「ん、んじゃ言ってみろ」


アヤメが話し終わる頃には、菓子パンは無くなっていて、ゴミをまとめながらクロームから、今話たことを復唱させる。


「えと……まず…ここは10年後の、黒曜…」


「ん」


「敵は、ミルフィオーレ…
…ボンゴレは、ミルフィオーレの、せいで壊滅…
ボスも…ミルフィオーレに、殺された…」


「そうだ」


「…ボス達は、10年前の、ボス達と…入れ替わって…ミルフィオーレと戦う為に…修行中…」


「なんで入れ替わったか」


「ボンゴレリングを、持ってるから」


「正解だ、んでテメェはどうすんだったか」


「ボス達と、合流…！」


「よくできました。
改めて、私は六道アヤメ。
ボンゴレファミリー9代目直属の暗殺部隊ヴァリアーの幹部だ。

今は朝陽の親友ってだけ頭に入れとけ」


「骸様の…奥さん…」


「今はスルーしろ。
私にはどうでもいいことだ。」


窓が壊れているからか風が通る。
風邪ひいちゃ困ると、アヤメはヴァリアーの制服であるロングコートを脱いでクロームに着させた。

それによりアヤメの豊満な胸や引き締まった腹が露わになってクロームは慌てて返そうとするものの、アヤメに止められた。


「私は風邪とか無縁なんだ。
テメェが着てろ、風邪ひいて足手まといにでもなるつもりか」


「………」


アヤメの鋭い視線により萎縮したクロームは温かなコートに身を包み、小さくなる。


「あ、の…アヤメ様…」


「あ？」


「アヤメ様は…その…どうして、骸様と…」


「ほとんど成り行き。
私はクロームの傍にいたい、奴は私に惚れたからっていう理由で一緒になったに過ぎねぇ」


「え、私…？」


「私は暗殺者以前に医者だ。
テメェは私の患者、失った右目と内臓を提供し、定期検診を行ってんだよ」


「！！」


ガシガシとプラチナの髪を乱暴に引っ掻き、アヤメは紫と金のダイクロイックアイをクロームに向ける。
クロームは見るからに驚いており、アヤメはハッと鼻で笑った。

すると、外から物音がしてアヤメはクロームを立たせると、入口の方を睨みつける。


「まさか再び相見えるのが10年前の姿とはな」


外から聞こえてきた男の声。
クロームはアヤメのコートを握りしめ息を呑む。


「だがここの情報が
ガセでなかったことは喜ばしい。
あったあーった本当にあった
クローム髑髏、試食会場。

しかもヴァリアーの六道アヤメまで…
これはいい、六道アヤメも試食と行こう。」


白い服に身を包み、
雨属性の炎を纏うフクロウを連れた男。
アヤメはチッと1つ舌打ちし、男を睨みつけた。


「ホワイトスペルのグロ・キシニア…
クローム、戦えるな」


「！はい…！」


クロームはカバンの中から槍を取り出すと
すぐに伸ばして構える。
アヤメもコートを羽織り直し、
懐から小さな刃物…メスを取り出した。


「試食だのなんだのうるせー野郎だ、
私達を試食する前に私がテメェのイカれた脳でもイジってやろーか。
今ならタダで女を見ると露出狂になって発情する変態野郎にしてやるぜ？」


「ヒッ」


ピキッとグロのこめかみに青筋が立ち、
持っていた馬上ムチを振り上げるが、
振り下ろすと同時にアヤメの投げたメスがムチを切り刻んだ。


「な！？」


「骸の野郎がテメェに負けたっつー噂は聞いてんぜ、その実力がこんなんかよ、幻滅。」


「え…」


「噂ではない！事実だ！
脳にありもしないことを思い込ませ、
でっちあげる子供騙しが通じるものか！

私の誇る雨フクロウ（グーフォ・ディ・ピオッジャ）に手も足も出ずに、やられたのだ！！」


「アヤメ様…」


「それはそれで傑作だなァ、
あいつをからかうネタが増えたぜ。
んで？テメェは骸を倒してやったぜってふんぞり返ってるわけか？それはまぁ、めでてぇ頭してんな」


ハッと嗤えばグロは怒りで顔を真っ赤にし、
雨属性の炎を滾らせていた。
アヤメもメスを構え、ヒールを鳴らす。
するとグロの足下からトゲだらけのロープが現れ彼を縛ろうとうねる。


「そんな小細工が効くものか…っ！？」


グロは炎でそのロープを消そうとするが、
ロープは消えることなくグロに巻き付き傷をつけていく。


「幻覚…ではないのか…！？」


「いーや幻覚だ。
ただ私の幻覚は骸（あのバカ）曰く現実に近いものなんだとよ」