FF編
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「ありえない…まさか、もうここまで…」
秋葉名戸から数日。
いつも通り検診を受けると、
医師から信じられないような目で見られた。
「先生…黒也くんの足は大丈夫…ですよね?」
その様子から嫌な予感がするのか、
横で顔色を悪くしている知美が問いかけるも医師は頭を横に振った。
「むしろ逆です。
ほとんど治りかけてます」
「え…?」
「!じゃあ、このまま行けば…」
「えぇ、すぐ復帰できるでしょう」
「!!良かったぁ…」
医師の見解にホッと胸を撫で下ろし、
優しい眼差しを黒也に向ける。
黒也も微笑み、改めて医師の見解に耳を傾ける。
「黒也くんは身体が丈夫なんですね。
肉離れは1〜2週間かけて治るもの…骨のヒビなんて以ての外なのに」
「……あはは…まぁ、鍛えてますから…」
「だからと言って油断は禁物です。
焦らず治して行きましょう。
この調子で行けば決勝戦、出場できますから」
「ありがとうございます!」
「良かったわね、黒也くん」
「では、私はこれで。
何かあればナースコールで呼んでください」
ニコッと人の良い笑みを浮かべ医師は去っていく。
それを見届け、知美は笑顔で黒也の方を向く。
「無事に治りそうで良かったわ」
「……」
だがそれとは逆に、黒也の表情は暗くさっきとは違って眉を下げていた。
「黒也くん?調子悪い?」
「いや、大丈夫だ。 ただ……」
「……ただ?」
「これって……異常…なのか?」
「え?」
「……なんでもねぇ…変な事聞こうとした」
〝忘れてくれ〟とそっぽを向いた黒也。
すると自身の手が別の温もりに包まれ、ハッとそこを見る。
「黒也くん」
そこには優しい目をした知美がおり、
彼女の手が黒也の手を包みこんでいた。
「早く治ることは悪いことじゃないわ。
むしろ良いことだと、私は思う。
だって、あなたは早くサッカーがやりたいだけだものね」
「知美さん…」
「異常なんて思わない。
黒也くんは黒也くんだもの。 私の自慢の息子よ」
ニコッと屈託のない笑みを浮かべ、
眉を下げている黒也の頬を撫でる。
そうすれば彼は気持ちよさそうに目を細め、甘えるように擦り寄ってくることを知っている。
「……」
スリスリと犬のような仕草を微笑ましそうに見ていれば、微笑みを浮かべた黒也と目が合う。
「ありがと」
「ふふっ、母親として当然よ」
ーーーーーーーーーー
「ん……」
いつの間にか眠っていたのか、
既に日は沈みかけており夜になろうとしていた。
「……!」
知美もおらず、1人になった病室…
かと思ったが椅子には円堂が座っており、うつらうつらと船を漕いでいた。
「円堂…
……円堂、起きろ」
「んあ?…んー?
あ!黒也!起きたのか!」
「わりぃな、眠っちまってて。
起こしても良かったんだぞ?」
「へへっ気持ちよさそうに眠ってたからなんか起こしづらくって!」
んーっ!と伸びをした円堂は、
いつものようにニコニコ笑って黒也の様子を問う。
「あぁ、もうほとんど治ってる。
この調子で行けば決勝戦出れるってよ」
「ほんとか!?よっしゃー!」
「退院も間もなくって感じだからよ、
もうちょっと待っててくれ。
必ず戻る」
「あぁ!待ってるぜ!」
ニッと笑った円堂に笑い返すと、
面会終了のアナウンスが鳴り
円堂は慌てて帰る準備をする。
「それじゃあ黒也!お大事に!」
「ありがとよ、
何かあればまた来いよな」
「おう!」
ーーーーーーーーーー
〜翌日〜
検診の結果、
車椅子から松葉杖に変わり、明日には退院できることになった黒也は仲間たちに報告しようと雷門中までやって来た。
「(さて、みんなの様子はどうかな)」
急に来たら驚くだろうなと、上機嫌な黒也だったが、それはすぐに裏切られた。
「あ?」
グラウンドには誰もおらず、
風だけが虚しく吹いていた。
練習場所を間違えた
今日は河川敷だったのかと思考を巡らせていると奥の方から聞き慣れた声が聞こえ、そっちに足を向ける。
「これから起きようとしたであろう
恐ろしい犯罪を告発する内容です。
冬海先生、バスを動かせないのは
あなた自身がバスに細工をしたからではありませんか?
この手紙にあるように!」
送迎バスが置かれた車庫。
そこから夏未の声が聞こえたが
内容を聞いた途端、ギリッと歯を食いしばり眉間にシワが寄るのがわかる。
「そりゃ、どういう意味だ夏未譲」
「「「!!」」」
「「黒也!?」」
みんなは急に現れた黒也に驚き、声を上げる。
だがその顔が怒りに染まっていることに気付くと1年生は顔を青褪めた。
「あなた、まだ入院中じゃ…」
「明日退院になった。
今日はその報告…って思ってたんだが…
……おい、冬海、
どういうことか説明しやがれ。
バスに細工たぁ、どういう了見だ?
ここにいる全員殺したいってか?
あ"あ"!?」
「「「っ!」」」
御影専農戦と同等か、それ以上の気迫に運転席に座る冬海はともかく、みんなも思わず後退る。
「元々気に食わねぇヤツだとは思ってたけどここまでとはな…」
「っ」
「黒也、気付いてたの?」
「こんなヤツ最初から信用してねぇよ。
当たり前だろ?最初の帝国戦から秋葉名戸戦まで〝どうせ勝てない〟なんてずーっとニヤニヤ笑って見下してきたヤツなんだよ、コイツは」
キッと鋭い視線を送れば、
冬海は俯いてやがてくつくつと笑い始めた。
「そうですよ…
私がブレーキオイルを抜きました」
「なんの為に!?」
「あなた方をFFの決勝戦に参加させない為です」
「っ!なんだって!?」
「あなた方が決勝戦に出ると困る人がいるんですよ…その人の為に私はやったんだ」
「帝国学園総帥・影山零治」
「っ!」
バスから降りた冬海は黒也から発せられた言葉にビクッと肩を揺らす。
〝図星か〟と目を細め、また口を開く。
「影山零治の為なら守るべき生徒がどうなってもいいのかよ」
「君たちは知らないんだ!
あの方がどんなに恐ろしいかを…」
「知りたくねぇなそんなこと!!」
「あなたのような教師は学校を去りなさい!これは理事長の言葉と思ってもらって結構です!」
「クビですか。
そりゃいい。いい加減こんな所で教師やってるのも飽きてきた所です。
しかし、雷門中に入り込んだ帝国のスパイが私だけと思わないことだ。
ねぇ?土門くん?」
「っ!」
「「「!?」」」
冬海の言葉にみんなは目を見開き 後ろの方で暗い顔をしていた土門を見る。
土門もまさかここで名前を出されるとは思わなかったのか、目を見開いて固まっている。
「では…失礼しますよ」
「………あぁ…1つ忘れてた。冬海」
「なんです?」
だが黒也はジッと冬海を睨みつけていて、ゆっくりと彼に踏み寄る。
そして懐から何かを取り出すと冬海の手首に〝カシャン〟と取り付けた。
「なっ!?手錠!?」
「証言者は俺を含めた雷門中生徒。
証拠はこのバスとテメェの指紋。
これだけ証拠あれば立派な犯罪者だ。
罪状は…殺人未遂…とかか?」
スーッと細められた目は鋭く光っており
冬海の顔がどんどん青褪めていく。
「その手錠…本物…なの?」
「いーや、ただのおもちゃだよ。
俺にそんな権限ないし。
……ただ、テメェのことは見張らせて貰ってたぜ?一応協力者、なんでな」
ニッと口角を上げ、携帯を取り出せば
〝源さん〟とディスプレイに表示されていてそこから声が漏れた。
『もうすぐ着くぜ。
そいつをしっかり捕えて置くんだ』
「……ってことだ。
洗いざらい吐いてもらうぜ、冬海」
「っそ、んな…」
ガクッと膝をついた冬海を一瞥し、
驚いた顔でこっちを見ている土門に目を向ける。
「スパイってのは知ってたぜ」
「!」
「最初は警戒してたけどよー
でも、お前は俺たちに危害は加えてねぇし…むしろ勝利に貢献してくれた。
例え、情報が漏れてようがな。
……お前を信じる理由は、それだけで十分だ」
「!彪…狼…」
ウーッと鳴り響くサイレンに気付き、
黒也は冬海を立ち上がらせて 踵を返す。
「ゆっくり話し合え。
俺は円堂の決めた事に従う」
そう言い、円堂を見れば
彼は大きく頷いて土門と向き合った。
「おら、さっさと行くぞ冬海」
「……」
ふらふらと覚束ない足取りの冬海を引っ張り、校門まで行けば、2台のパトカーと鬼瓦を含む警察官が数名いた。
「無事だったか」
「あぁ、みんな無事だ」
「オイルブレーキが抜かれたというバスは?」
「奥にあります。
まだサッカー部の連中がいるのですぐわかるかと」
「ご協力、感謝します」
走っていった警察官を見送り、
黒也は冬海についたおもちゃの手錠を外すとパトカーの中に押し込んだ。
「お前さんも乗りなさい。病院まで送ろう」
「ありがとな源さん。
(さーて、新しい監督どーしよーかなー)」
顧問の冬海がいなくなり、
監督不在となってしまった雷門中。
FFは監督不在のチームは出場を認められないとしている為、土門のことは解決しても…と黒也は思わず遠い目をした。
そんなこんなで放課後……
「すまなかった!!」
黒也の元に円堂と豪炎寺、土門が来て、土門から謝罪と同時に頭を下げられる。
「黒也、改めて土門を雷門中サッカー部に迎え入れる!それが俺の決定だ!」
「わかった。
今後もよろしくな、土門」
あっさりと発された言葉に土門は唖然とし、豪炎寺は苦笑を漏らす。
「だから言っただろ。
気に病まなくても黒也なら大丈夫だって」
「い、いやいや!!にしてもでしょ!?」
「土門、ここ病院」
「うっ…でも…」
「クドい」
「くどっ…!!」
「円堂の決定に従うって言っただろーが
円堂が仲間と認めたなら俺からは何もねぇよ」
〝はい、話終わり〟と無理矢理話を切るも、土門は納得の言ってないような顔であり…思わず溜め息を吐く。
「他のヤツも認めてるんだろ?
ならいいじゃねーか。度胸あるいいヤツだよ、お前は」
フッと柔らかい微笑みを向ければ、力んでいた肩の力が抜け、小さく〝ありがとう〟と呟かれる。
「よしっ そんじゃ次は監督だな」
「黒也ー、どーしよー」
「キャプテンが情けねぇ声出すんじゃねぇよ。
(……相手は無敗の帝国……
もうイナズマイレブンに頼る他ねぇか…)
円堂」
「ん?」
「明日、監督候補と話をしてくる」
「!心当たりがあるのか?」
「やってくれるかは……わからないが…な…」
秋葉名戸から数日。
いつも通り検診を受けると、
医師から信じられないような目で見られた。
「先生…黒也くんの足は大丈夫…ですよね?」
その様子から嫌な予感がするのか、
横で顔色を悪くしている知美が問いかけるも医師は頭を横に振った。
「むしろ逆です。
ほとんど治りかけてます」
「え…?」
「!じゃあ、このまま行けば…」
「えぇ、すぐ復帰できるでしょう」
「!!良かったぁ…」
医師の見解にホッと胸を撫で下ろし、
優しい眼差しを黒也に向ける。
黒也も微笑み、改めて医師の見解に耳を傾ける。
「黒也くんは身体が丈夫なんですね。
肉離れは1〜2週間かけて治るもの…骨のヒビなんて以ての外なのに」
「……あはは…まぁ、鍛えてますから…」
「だからと言って油断は禁物です。
焦らず治して行きましょう。
この調子で行けば決勝戦、出場できますから」
「ありがとうございます!」
「良かったわね、黒也くん」
「では、私はこれで。
何かあればナースコールで呼んでください」
ニコッと人の良い笑みを浮かべ医師は去っていく。
それを見届け、知美は笑顔で黒也の方を向く。
「無事に治りそうで良かったわ」
「……」
だがそれとは逆に、黒也の表情は暗くさっきとは違って眉を下げていた。
「黒也くん?調子悪い?」
「いや、大丈夫だ。 ただ……」
「……ただ?」
「これって……異常…なのか?」
「え?」
「……なんでもねぇ…変な事聞こうとした」
〝忘れてくれ〟とそっぽを向いた黒也。
すると自身の手が別の温もりに包まれ、ハッとそこを見る。
「黒也くん」
そこには優しい目をした知美がおり、
彼女の手が黒也の手を包みこんでいた。
「早く治ることは悪いことじゃないわ。
むしろ良いことだと、私は思う。
だって、あなたは早くサッカーがやりたいだけだものね」
「知美さん…」
「異常なんて思わない。
黒也くんは黒也くんだもの。 私の自慢の息子よ」
ニコッと屈託のない笑みを浮かべ、
眉を下げている黒也の頬を撫でる。
そうすれば彼は気持ちよさそうに目を細め、甘えるように擦り寄ってくることを知っている。
「……」
スリスリと犬のような仕草を微笑ましそうに見ていれば、微笑みを浮かべた黒也と目が合う。
「ありがと」
「ふふっ、母親として当然よ」
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「ん……」
いつの間にか眠っていたのか、
既に日は沈みかけており夜になろうとしていた。
「……!」
知美もおらず、1人になった病室…
かと思ったが椅子には円堂が座っており、うつらうつらと船を漕いでいた。
「円堂…
……円堂、起きろ」
「んあ?…んー?
あ!黒也!起きたのか!」
「わりぃな、眠っちまってて。
起こしても良かったんだぞ?」
「へへっ気持ちよさそうに眠ってたからなんか起こしづらくって!」
んーっ!と伸びをした円堂は、
いつものようにニコニコ笑って黒也の様子を問う。
「あぁ、もうほとんど治ってる。
この調子で行けば決勝戦出れるってよ」
「ほんとか!?よっしゃー!」
「退院も間もなくって感じだからよ、
もうちょっと待っててくれ。
必ず戻る」
「あぁ!待ってるぜ!」
ニッと笑った円堂に笑い返すと、
面会終了のアナウンスが鳴り
円堂は慌てて帰る準備をする。
「それじゃあ黒也!お大事に!」
「ありがとよ、
何かあればまた来いよな」
「おう!」
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〜翌日〜
検診の結果、
車椅子から松葉杖に変わり、明日には退院できることになった黒也は仲間たちに報告しようと雷門中までやって来た。
「(さて、みんなの様子はどうかな)」
急に来たら驚くだろうなと、上機嫌な黒也だったが、それはすぐに裏切られた。
「あ?」
グラウンドには誰もおらず、
風だけが虚しく吹いていた。
練習場所を間違えた
今日は河川敷だったのかと思考を巡らせていると奥の方から聞き慣れた声が聞こえ、そっちに足を向ける。
「これから起きようとしたであろう
恐ろしい犯罪を告発する内容です。
冬海先生、バスを動かせないのは
あなた自身がバスに細工をしたからではありませんか?
この手紙にあるように!」
送迎バスが置かれた車庫。
そこから夏未の声が聞こえたが
内容を聞いた途端、ギリッと歯を食いしばり眉間にシワが寄るのがわかる。
「そりゃ、どういう意味だ夏未譲」
「「「!!」」」
「「黒也!?」」
みんなは急に現れた黒也に驚き、声を上げる。
だがその顔が怒りに染まっていることに気付くと1年生は顔を青褪めた。
「あなた、まだ入院中じゃ…」
「明日退院になった。
今日はその報告…って思ってたんだが…
……おい、冬海、
どういうことか説明しやがれ。
バスに細工たぁ、どういう了見だ?
ここにいる全員殺したいってか?
あ"あ"!?」
「「「っ!」」」
御影専農戦と同等か、それ以上の気迫に運転席に座る冬海はともかく、みんなも思わず後退る。
「元々気に食わねぇヤツだとは思ってたけどここまでとはな…」
「っ」
「黒也、気付いてたの?」
「こんなヤツ最初から信用してねぇよ。
当たり前だろ?最初の帝国戦から秋葉名戸戦まで〝どうせ勝てない〟なんてずーっとニヤニヤ笑って見下してきたヤツなんだよ、コイツは」
キッと鋭い視線を送れば、
冬海は俯いてやがてくつくつと笑い始めた。
「そうですよ…
私がブレーキオイルを抜きました」
「なんの為に!?」
「あなた方をFFの決勝戦に参加させない為です」
「っ!なんだって!?」
「あなた方が決勝戦に出ると困る人がいるんですよ…その人の為に私はやったんだ」
「帝国学園総帥・影山零治」
「っ!」
バスから降りた冬海は黒也から発せられた言葉にビクッと肩を揺らす。
〝図星か〟と目を細め、また口を開く。
「影山零治の為なら守るべき生徒がどうなってもいいのかよ」
「君たちは知らないんだ!
あの方がどんなに恐ろしいかを…」
「知りたくねぇなそんなこと!!」
「あなたのような教師は学校を去りなさい!これは理事長の言葉と思ってもらって結構です!」
「クビですか。
そりゃいい。いい加減こんな所で教師やってるのも飽きてきた所です。
しかし、雷門中に入り込んだ帝国のスパイが私だけと思わないことだ。
ねぇ?土門くん?」
「っ!」
「「「!?」」」
冬海の言葉にみんなは目を見開き 後ろの方で暗い顔をしていた土門を見る。
土門もまさかここで名前を出されるとは思わなかったのか、目を見開いて固まっている。
「では…失礼しますよ」
「………あぁ…1つ忘れてた。冬海」
「なんです?」
だが黒也はジッと冬海を睨みつけていて、ゆっくりと彼に踏み寄る。
そして懐から何かを取り出すと冬海の手首に〝カシャン〟と取り付けた。
「なっ!?手錠!?」
「証言者は俺を含めた雷門中生徒。
証拠はこのバスとテメェの指紋。
これだけ証拠あれば立派な犯罪者だ。
罪状は…殺人未遂…とかか?」
スーッと細められた目は鋭く光っており
冬海の顔がどんどん青褪めていく。
「その手錠…本物…なの?」
「いーや、ただのおもちゃだよ。
俺にそんな権限ないし。
……ただ、テメェのことは見張らせて貰ってたぜ?一応協力者、なんでな」
ニッと口角を上げ、携帯を取り出せば
〝源さん〟とディスプレイに表示されていてそこから声が漏れた。
『もうすぐ着くぜ。
そいつをしっかり捕えて置くんだ』
「……ってことだ。
洗いざらい吐いてもらうぜ、冬海」
「っそ、んな…」
ガクッと膝をついた冬海を一瞥し、
驚いた顔でこっちを見ている土門に目を向ける。
「スパイってのは知ってたぜ」
「!」
「最初は警戒してたけどよー
でも、お前は俺たちに危害は加えてねぇし…むしろ勝利に貢献してくれた。
例え、情報が漏れてようがな。
……お前を信じる理由は、それだけで十分だ」
「!彪…狼…」
ウーッと鳴り響くサイレンに気付き、
黒也は冬海を立ち上がらせて 踵を返す。
「ゆっくり話し合え。
俺は円堂の決めた事に従う」
そう言い、円堂を見れば
彼は大きく頷いて土門と向き合った。
「おら、さっさと行くぞ冬海」
「……」
ふらふらと覚束ない足取りの冬海を引っ張り、校門まで行けば、2台のパトカーと鬼瓦を含む警察官が数名いた。
「無事だったか」
「あぁ、みんな無事だ」
「オイルブレーキが抜かれたというバスは?」
「奥にあります。
まだサッカー部の連中がいるのですぐわかるかと」
「ご協力、感謝します」
走っていった警察官を見送り、
黒也は冬海についたおもちゃの手錠を外すとパトカーの中に押し込んだ。
「お前さんも乗りなさい。病院まで送ろう」
「ありがとな源さん。
(さーて、新しい監督どーしよーかなー)」
顧問の冬海がいなくなり、
監督不在となってしまった雷門中。
FFは監督不在のチームは出場を認められないとしている為、土門のことは解決しても…と黒也は思わず遠い目をした。
そんなこんなで放課後……
「すまなかった!!」
黒也の元に円堂と豪炎寺、土門が来て、土門から謝罪と同時に頭を下げられる。
「黒也、改めて土門を雷門中サッカー部に迎え入れる!それが俺の決定だ!」
「わかった。
今後もよろしくな、土門」
あっさりと発された言葉に土門は唖然とし、豪炎寺は苦笑を漏らす。
「だから言っただろ。
気に病まなくても黒也なら大丈夫だって」
「い、いやいや!!にしてもでしょ!?」
「土門、ここ病院」
「うっ…でも…」
「クドい」
「くどっ…!!」
「円堂の決定に従うって言っただろーが
円堂が仲間と認めたなら俺からは何もねぇよ」
〝はい、話終わり〟と無理矢理話を切るも、土門は納得の言ってないような顔であり…思わず溜め息を吐く。
「他のヤツも認めてるんだろ?
ならいいじゃねーか。度胸あるいいヤツだよ、お前は」
フッと柔らかい微笑みを向ければ、力んでいた肩の力が抜け、小さく〝ありがとう〟と呟かれる。
「よしっ そんじゃ次は監督だな」
「黒也ー、どーしよー」
「キャプテンが情けねぇ声出すんじゃねぇよ。
(……相手は無敗の帝国……
もうイナズマイレブンに頼る他ねぇか…)
円堂」
「ん?」
「明日、監督候補と話をしてくる」
「!心当たりがあるのか?」
「やってくれるかは……わからないが…な…」