FF編
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「黒也くん、最近どう?」
〝FFへの出場、決まったんでしょ?〟
古株からイナズマイレブンのことを聞いた夜、黒也は知美と共に明日の下拵えをしながら会話する。
「今日、イナズマイレブンのこと聞いた」
「!…まぁ、雷門中にいれば…耳にするわよね…」
「幸い、決勝戦間際のことは誰も聞いてないし、古株さんもはぐらかした」
「……お父さんもだけど…みんなトラウマなのよ…守くん、知らないんでしょ?」
「あぁ、いずれは知るだろうけどさ、
今は目標として憧れとして見てくれればそれでいい」
そう話しているとガチャと店の扉が開き、外からコートを羽織った中年の男性が入ってきた。
「お父さん!」
「源さん、おかえり」
男性は知美の父であり刑事をしている鬼瓦源五郎で、2人はすぐに椅子に座らせお茶を出した。
「夜遅くにすまねぇな」
「何言ってるのよ、家族なんだから気にしなくていいの!ね、黒也くん」
「そうだぜ、源さん。
何か食うか?簡単なものしか用意できねぇけど」
「いや、食って来たから大丈夫だ。」
「また雷雷軒?
たまにはちゃんと食べないとダメよ?」
「そうだぞー、ほら暖かくなってきたとはいえまだ冷えるからスープでも飲んでくれ」
「すまねぇな」
鬼瓦は出されたスープを一口飲んで息を吐く。すると〝この前の試合、見てたぞ〟と口を開いた。
「帝国戦か?」
「あぁ、まさかゴッドハンドを使えるとはな…あの坊主はまさか…」
「察しの通り、円堂大介の孫だぜ。
円堂守、面白いやつだろ?」
「黒也が気にかけるだけあるな、尾刈斗戦も大活躍だったそうじゃないか」
〝必殺技出したんだろ?〟と続けられ、思わず顔を顰める。
「知美さん情報か?」
「ふふ、大事な息子の活躍だもの、
お父さんに報告しなきゃってね!」
「ったく…」
ニコニコとしている知美となんだかんだ言いつつもそれを受け入れる黒也、2人を微笑ましそうに見ながらまたスープを飲んだ。
「そういや、関係あるか知らねぇが…
最近、顧問の冬海せんせーがコソコソ動いてるらしいんだ」
「なに?」
「結構な頻度で電話かけてるのを見た。
あいつの様子見る限り恐らく…」
「…影山か…」
「断言はできねぇけど、やる気のねぇ…しかも負けろって遠回しに言うヤツがサッカー部の顧問をやってる理由が思いつかねぇんだ…」
思い浮かぶのは帝国戦と尾刈斗戦のニヤニヤしていた冬海。元々やる気のない先生だと思っていたが試合中のあの態度は気に食わないと黒也は話す。
「どんな態度だったの?」
「試合中ずーっとニヤニヤしてんだ、何やっても無駄って言われてるような…そんな感じ」
「何それ、嫌な先生がいたものね」
「元々弱小ってこともあってナメられてたんだけどよ…まさかあそこまでとはな…」
〝嫌な臭いさせやがって…〟とあからさまに嫌悪を見せた黒也。
「…黒也、冬海ってやつの動向をそのまま見ててくれはしねーか…子供に頼むのは違うのはわかってるんだが…」
「別に構わねぇよ、俺のこと養ってくれてる恩もあるしな。
ニッと笑えば、鬼瓦も少し顔を緩めて黒也の頭を雑に撫でた。
「わっ」
「14の坊主が養ってくれてるとか言うもんじゃねぇぞ、もっと甘えてもいいんだ、遠くに住んでるっていうお前の兄弟もな」
「!……そっか…なら全力で甘えようかな、兄弟を甘やかすのは俺の役目だから誰にもやらねぇけど」
「あら黒也くんったらブラコン?」
「どうだかー」
もうすぐ日を跨ぐ時間帯。 小さな喫茶店で賑やかな笑い声が響き夜が更けていく…
翌日、学校が終わってすぐ喫茶店へと向かえば、既に慌ただしく動いていた知美がいて黒也も慌てて準備に入った。
「これ1番席!」
「了解!」
料理やらお茶やら出しては客を捌きを繰り返し、落ち着く頃には日が傾いていた。
「黒也くん、お疲れの所悪いんだけど買い出しお願いしていい?」
「ん、何?」
「牛乳と醤油…砂糖はまだあったから大丈夫で…あと…小麦粉も。これ、お金ね」
「わかった。牛乳は2本?」
「うん、醤油は1本でお願い」
「了解。んじゃ行ってくる」
「気をつけてね」
メモと金を持って近くの商店街まで急いだ。
ーーーーーーーーーー
「あれ、黒也?」
「ん?あ、円堂に風丸、豪炎寺。
なんだ、練習終わったのか」
買い物を終わらせて重いエコバッグを持って歩いて行くと後ろから制服姿の3人と遭遇した。
「なんだ黒也、買い出しか?」
「色々と頼まれてな。
で、何か進展あったか?」
練習風景のことを聞けば明らかに苦い顔をされ、すぐにあぁ…と察する。
「まぁ、昨日の今日でできたら苦労しねぇわな…」
「黒也、明日は練習出られるか?」
「一応出られるが、お嬢から呼び出し入ってるから遅くなるぞ」
「お嬢?」
「豪炎寺も会ったことあるだろ? 雷門夏未、あいつだよ」
「あぁ…」
「何かあったのか?」
「面白いもの見つけたってぐらいにしか聞いてねぇからわからねぇけど…とりあえずFFまでの期間は俺も練習出られるようにする」
「あぁ!黒也がいれば百人力だ!頼んだぜ!」
「おう!あ、やべ…!
そろそろ戻らねぇと…わりぃ!俺行くわ!」
〝じゃあな!また飯食いに来いよ!〟と言い残し、黒也は去っていった。
「あの様子だとかなり忙しそうだな」
「たしか母親代わりの人と2人で切り盛りしてるって言ってたな。」
「黒也の作る飯!すっげー美味いんだぜ!豪炎寺も食っただろ?サンドイッチ!」
「あぁ…確かに美味かった」
「今からでも行けるかな」
「やめとけ、黒也が誘ってこないってことは店が混んでるか、店仕舞かどっちかだろう」
「なら雷雷軒に行って作戦会議だ!」
〜翌日〜
「ノートだぁ?」
夏未に呼び出されていた黒也は理事長室の横に位置する談話室に来ていた。
「えぇ、伝説のイナズマイレブンが見ていたとされるノートよ。でも…これ読めないの」
古ぼけているノートを受け取れば 暗号のような模様のような…文字とも取れないものが書かれていた。
「……汚ねぇ字だなぁ…」
「やっぱり字なのね…」
「…しっかし、秘伝書なんてよくあったな、理事長が保管してたのか?」
「えぇ、イナズマイレブンのことは私も気になってたの、だからパパにお願いして出してもらったわ」
夏未の話を聞き流しながらパラパラとノートをめくっていく。やがて全てに目を通すと本を閉じた。
「お嬢、これ貰っていいか」
「貰って…って…あなた読めるの?」
「いや…でも…」
ヒソヒソ…ヒソヒソ…
「あ?」
「?なんだか騒がしいわね」
突如、外から足音と声が聞こえ始め 2人は様子を見ようと立ち上がる。扉の方へ近づけば聞き覚えのある声が耳に届いた。
「…あいつらなんでここに…」
「もしかして、これかしら?」
夏未が指差すのは黒也が持っている秘伝書
「……どこから聞いたか知らねぇが、
目的がこれなら話は早い」
「あ、ちょっと、黒也!」
ガチャと談話室の扉を開ければ
すぐ横でドーン!!と何か倒れるような大きな音が響いた。
「「!?」」
「お、重いー!!」
「どうした!何があっ…た…?」
黒也の目の前には山のように倒れているサッカー部一同がいて、黒也も夏未も呆れたような目線を送った。
「おいおい、大丈夫かよ…」
「黒也!どうして…!?」
「すぐ横の談話室にいたんだよ。
…たく、ケガは?大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫!」
スッと立ち上がったみんなを見渡し、
黒也は自分が持っていたノートを見せる。
「お前ら、これを探しに来たのか?」
「!じいちゃんの秘伝書!!」
すると円堂はすぐに気付いて黒也からそれを奪い取る。
「たく、落ち着かねぇヤツだな」
「でも大丈夫なの?それ、読めないのに」
「「「え!?」」
ーーーーーーーーーー
いつまでも留まる訳には行かず、
一旦部室に戻ってノートを見る。
「暗号で書かれてるのか?」
「外国の文字ッスかね…」
「いや、おっそろしく汚い字なんだ」
「汚いんですか…」
「多分…」
「誰も読めないんじゃあ…」
「それ使えねぇよ…」
「「円堂!!!!」」
「すっげー!! ゴッドハンドの極意だって!!」
「「「読めるのかよ!!」」」
流れるようなツッコミに耐えきれなくなったのか黒也は吹き出し、ヒーッと爆笑する。
「「笑うな!!」」
「ぶはっ…無理…!あっはは!
…ははっ…お前ら最っ高!!」
お腹を抱えてヒーヒー言ってる黒也は置いておき、みんなはまた円堂を見る。
「だってじいちゃんの特訓ノート読んてるから!俺も最初、何書いてあるのかわからなかったけどさ、少しずつ読めるようになったんだ!」
気を取り直して、文字が読める円堂に解説を任してみんなは聞き耳を立てる。
「うん、相手の高さに勝つにはこれだ!
〝イナズマ落とし〟!」
「イナズマ落とし!」
「カッコイイッス!」
「読むぞ、いいか… 1人がビョーンと飛ぶ、 その上でもう1人がバーンとなってクルッとなってズバーン!これぞイナズマ落としの極意!!……え?」
疑問ばかりの説明にみんなはずっこける。円堂もこれには目を点にして、助けを求めるように黒也を見た。
「ビョーンとバーンとズバーンか…」
「円堂、お前のじいさん国語の成績良かったのか?」
「さぁ…サッカー一筋の人だったらしいから…」
「「「…」」」
得られる情報は少なく、みんなは肩を落とす。だが黒也だけは違うようで、スッとホワイトボードの方に移動した。
「黒也?」
「1人がビョーンと飛ぶ。
その上でもう1人がバーンとなって、
クルッとなって、ズバーン…」
ホワイトボードの前に立った黒也はペンを持って2つの丸と矢印を描いていく。
「わかったのか!?」
「あくまで俺の予測に過ぎねぇよ…
てことで、豪炎寺、あと頼んだ」
「なんでだ」
グッと親指を立てれば豪炎寺に手を叩かれた。
「ちぇ… まぁ、恐らく…1人が飛ぶ。
もう1人はその1人を踏み台にしてさらに飛んで…クルッとだから…オーバーヘッドキック」
〝こんな感じか?〟と円堂の方を見れば、キラキラとした目で黒也を見ていた。
「黒也ー!!俺は信じてたぞー!!」
「っ!急に抱き着くな!!あぶねぇ!!」
ゴチーン!!と黒也の拳が円堂の頭に直撃しその場に沈む。
シューと煙を立てて沈んだ円堂を見て、みんなは恐ろしいものを見るように黒也を見上げた。
「い…いてぇ…」
「危険なことするからだバカ野郎!」
〝狭いんだから暴れんなよ〟と円堂を立たせ頭を乱暴に撫でる。
「わりぃ」
「わかれば良し。
で、問題はやるヤツだ。1人を踏み台にしてシュートを打てるやつだと俺か豪炎寺しかいねぇ」
「黒也にはブラックブラストがあるからそっちを優先してくれ!…てことは、豪炎寺!お前だな!!」
「俺が?」
「適任だろ。あとは…踏み台になれるヤツだが…」
黒也と円堂の視界に大きな体躯を持つ壁山が映る。
「黒也」
「俺はお前の意思に従うぜ。
何かあれば呼べ、特訓なら付き合う」
「ありがとな!!」
キャプテンと副キャプテンによる意思疎通が終わり、早速特訓に入る。
「この前も言ったが野生中の身体能力はずば抜けている。てことで喜べ。土門含め、俺が直々にしばき倒してやる」
ニッと意地悪そうに笑った黒也。
その笑顔の真意を知っているメンバーは顔を青褪めており、土門も嫌な予感がするのか頬を引き攣らせていた。
「さっ、お前らは全力で俺を止めに来い。
強豪相手なんだ、俺も手加減しねぇよ」
イナズマ落としが完成しなかった場合、みんなのフォローする力が必要になる。
そう考えた黒也はチーム全体の力の底上げに尽くすことにした。
不安定な足場からのジャンプと、
ジャンプ力を鍛える豪炎寺と壁山に負けないよう、黒也も全力で取り組んだ。
最終的にはボロボロになっていたが、
日が暮れた頃には大分上達した。
「よぉしみんなー! あと一踏ん張りだ!野生中との試合はもうすぐだぞ!!」
「「「おー!!」」」
〝FFへの出場、決まったんでしょ?〟
古株からイナズマイレブンのことを聞いた夜、黒也は知美と共に明日の下拵えをしながら会話する。
「今日、イナズマイレブンのこと聞いた」
「!…まぁ、雷門中にいれば…耳にするわよね…」
「幸い、決勝戦間際のことは誰も聞いてないし、古株さんもはぐらかした」
「……お父さんもだけど…みんなトラウマなのよ…守くん、知らないんでしょ?」
「あぁ、いずれは知るだろうけどさ、
今は目標として憧れとして見てくれればそれでいい」
そう話しているとガチャと店の扉が開き、外からコートを羽織った中年の男性が入ってきた。
「お父さん!」
「源さん、おかえり」
男性は知美の父であり刑事をしている鬼瓦源五郎で、2人はすぐに椅子に座らせお茶を出した。
「夜遅くにすまねぇな」
「何言ってるのよ、家族なんだから気にしなくていいの!ね、黒也くん」
「そうだぜ、源さん。
何か食うか?簡単なものしか用意できねぇけど」
「いや、食って来たから大丈夫だ。」
「また雷雷軒?
たまにはちゃんと食べないとダメよ?」
「そうだぞー、ほら暖かくなってきたとはいえまだ冷えるからスープでも飲んでくれ」
「すまねぇな」
鬼瓦は出されたスープを一口飲んで息を吐く。すると〝この前の試合、見てたぞ〟と口を開いた。
「帝国戦か?」
「あぁ、まさかゴッドハンドを使えるとはな…あの坊主はまさか…」
「察しの通り、円堂大介の孫だぜ。
円堂守、面白いやつだろ?」
「黒也が気にかけるだけあるな、尾刈斗戦も大活躍だったそうじゃないか」
〝必殺技出したんだろ?〟と続けられ、思わず顔を顰める。
「知美さん情報か?」
「ふふ、大事な息子の活躍だもの、
お父さんに報告しなきゃってね!」
「ったく…」
ニコニコとしている知美となんだかんだ言いつつもそれを受け入れる黒也、2人を微笑ましそうに見ながらまたスープを飲んだ。
「そういや、関係あるか知らねぇが…
最近、顧問の冬海せんせーがコソコソ動いてるらしいんだ」
「なに?」
「結構な頻度で電話かけてるのを見た。
あいつの様子見る限り恐らく…」
「…影山か…」
「断言はできねぇけど、やる気のねぇ…しかも負けろって遠回しに言うヤツがサッカー部の顧問をやってる理由が思いつかねぇんだ…」
思い浮かぶのは帝国戦と尾刈斗戦のニヤニヤしていた冬海。元々やる気のない先生だと思っていたが試合中のあの態度は気に食わないと黒也は話す。
「どんな態度だったの?」
「試合中ずーっとニヤニヤしてんだ、何やっても無駄って言われてるような…そんな感じ」
「何それ、嫌な先生がいたものね」
「元々弱小ってこともあってナメられてたんだけどよ…まさかあそこまでとはな…」
〝嫌な臭いさせやがって…〟とあからさまに嫌悪を見せた黒也。
「…黒也、冬海ってやつの動向をそのまま見ててくれはしねーか…子供に頼むのは違うのはわかってるんだが…」
「別に構わねぇよ、俺のこと養ってくれてる恩もあるしな。
ニッと笑えば、鬼瓦も少し顔を緩めて黒也の頭を雑に撫でた。
「わっ」
「14の坊主が養ってくれてるとか言うもんじゃねぇぞ、もっと甘えてもいいんだ、遠くに住んでるっていうお前の兄弟もな」
「!……そっか…なら全力で甘えようかな、兄弟を甘やかすのは俺の役目だから誰にもやらねぇけど」
「あら黒也くんったらブラコン?」
「どうだかー」
もうすぐ日を跨ぐ時間帯。 小さな喫茶店で賑やかな笑い声が響き夜が更けていく…
翌日、学校が終わってすぐ喫茶店へと向かえば、既に慌ただしく動いていた知美がいて黒也も慌てて準備に入った。
「これ1番席!」
「了解!」
料理やらお茶やら出しては客を捌きを繰り返し、落ち着く頃には日が傾いていた。
「黒也くん、お疲れの所悪いんだけど買い出しお願いしていい?」
「ん、何?」
「牛乳と醤油…砂糖はまだあったから大丈夫で…あと…小麦粉も。これ、お金ね」
「わかった。牛乳は2本?」
「うん、醤油は1本でお願い」
「了解。んじゃ行ってくる」
「気をつけてね」
メモと金を持って近くの商店街まで急いだ。
ーーーーーーーーーー
「あれ、黒也?」
「ん?あ、円堂に風丸、豪炎寺。
なんだ、練習終わったのか」
買い物を終わらせて重いエコバッグを持って歩いて行くと後ろから制服姿の3人と遭遇した。
「なんだ黒也、買い出しか?」
「色々と頼まれてな。
で、何か進展あったか?」
練習風景のことを聞けば明らかに苦い顔をされ、すぐにあぁ…と察する。
「まぁ、昨日の今日でできたら苦労しねぇわな…」
「黒也、明日は練習出られるか?」
「一応出られるが、お嬢から呼び出し入ってるから遅くなるぞ」
「お嬢?」
「豪炎寺も会ったことあるだろ? 雷門夏未、あいつだよ」
「あぁ…」
「何かあったのか?」
「面白いもの見つけたってぐらいにしか聞いてねぇからわからねぇけど…とりあえずFFまでの期間は俺も練習出られるようにする」
「あぁ!黒也がいれば百人力だ!頼んだぜ!」
「おう!あ、やべ…!
そろそろ戻らねぇと…わりぃ!俺行くわ!」
〝じゃあな!また飯食いに来いよ!〟と言い残し、黒也は去っていった。
「あの様子だとかなり忙しそうだな」
「たしか母親代わりの人と2人で切り盛りしてるって言ってたな。」
「黒也の作る飯!すっげー美味いんだぜ!豪炎寺も食っただろ?サンドイッチ!」
「あぁ…確かに美味かった」
「今からでも行けるかな」
「やめとけ、黒也が誘ってこないってことは店が混んでるか、店仕舞かどっちかだろう」
「なら雷雷軒に行って作戦会議だ!」
〜翌日〜
「ノートだぁ?」
夏未に呼び出されていた黒也は理事長室の横に位置する談話室に来ていた。
「えぇ、伝説のイナズマイレブンが見ていたとされるノートよ。でも…これ読めないの」
古ぼけているノートを受け取れば 暗号のような模様のような…文字とも取れないものが書かれていた。
「……汚ねぇ字だなぁ…」
「やっぱり字なのね…」
「…しっかし、秘伝書なんてよくあったな、理事長が保管してたのか?」
「えぇ、イナズマイレブンのことは私も気になってたの、だからパパにお願いして出してもらったわ」
夏未の話を聞き流しながらパラパラとノートをめくっていく。やがて全てに目を通すと本を閉じた。
「お嬢、これ貰っていいか」
「貰って…って…あなた読めるの?」
「いや…でも…」
ヒソヒソ…ヒソヒソ…
「あ?」
「?なんだか騒がしいわね」
突如、外から足音と声が聞こえ始め 2人は様子を見ようと立ち上がる。扉の方へ近づけば聞き覚えのある声が耳に届いた。
「…あいつらなんでここに…」
「もしかして、これかしら?」
夏未が指差すのは黒也が持っている秘伝書
「……どこから聞いたか知らねぇが、
目的がこれなら話は早い」
「あ、ちょっと、黒也!」
ガチャと談話室の扉を開ければ
すぐ横でドーン!!と何か倒れるような大きな音が響いた。
「「!?」」
「お、重いー!!」
「どうした!何があっ…た…?」
黒也の目の前には山のように倒れているサッカー部一同がいて、黒也も夏未も呆れたような目線を送った。
「おいおい、大丈夫かよ…」
「黒也!どうして…!?」
「すぐ横の談話室にいたんだよ。
…たく、ケガは?大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫!」
スッと立ち上がったみんなを見渡し、
黒也は自分が持っていたノートを見せる。
「お前ら、これを探しに来たのか?」
「!じいちゃんの秘伝書!!」
すると円堂はすぐに気付いて黒也からそれを奪い取る。
「たく、落ち着かねぇヤツだな」
「でも大丈夫なの?それ、読めないのに」
「「「え!?」」
ーーーーーーーーーー
いつまでも留まる訳には行かず、
一旦部室に戻ってノートを見る。
「暗号で書かれてるのか?」
「外国の文字ッスかね…」
「いや、おっそろしく汚い字なんだ」
「汚いんですか…」
「多分…」
「誰も読めないんじゃあ…」
「それ使えねぇよ…」
「「円堂!!!!」」
「すっげー!! ゴッドハンドの極意だって!!」
「「「読めるのかよ!!」」」
流れるようなツッコミに耐えきれなくなったのか黒也は吹き出し、ヒーッと爆笑する。
「「笑うな!!」」
「ぶはっ…無理…!あっはは!
…ははっ…お前ら最っ高!!」
お腹を抱えてヒーヒー言ってる黒也は置いておき、みんなはまた円堂を見る。
「だってじいちゃんの特訓ノート読んてるから!俺も最初、何書いてあるのかわからなかったけどさ、少しずつ読めるようになったんだ!」
気を取り直して、文字が読める円堂に解説を任してみんなは聞き耳を立てる。
「うん、相手の高さに勝つにはこれだ!
〝イナズマ落とし〟!」
「イナズマ落とし!」
「カッコイイッス!」
「読むぞ、いいか… 1人がビョーンと飛ぶ、 その上でもう1人がバーンとなってクルッとなってズバーン!これぞイナズマ落としの極意!!……え?」
疑問ばかりの説明にみんなはずっこける。円堂もこれには目を点にして、助けを求めるように黒也を見た。
「ビョーンとバーンとズバーンか…」
「円堂、お前のじいさん国語の成績良かったのか?」
「さぁ…サッカー一筋の人だったらしいから…」
「「「…」」」
得られる情報は少なく、みんなは肩を落とす。だが黒也だけは違うようで、スッとホワイトボードの方に移動した。
「黒也?」
「1人がビョーンと飛ぶ。
その上でもう1人がバーンとなって、
クルッとなって、ズバーン…」
ホワイトボードの前に立った黒也はペンを持って2つの丸と矢印を描いていく。
「わかったのか!?」
「あくまで俺の予測に過ぎねぇよ…
てことで、豪炎寺、あと頼んだ」
「なんでだ」
グッと親指を立てれば豪炎寺に手を叩かれた。
「ちぇ… まぁ、恐らく…1人が飛ぶ。
もう1人はその1人を踏み台にしてさらに飛んで…クルッとだから…オーバーヘッドキック」
〝こんな感じか?〟と円堂の方を見れば、キラキラとした目で黒也を見ていた。
「黒也ー!!俺は信じてたぞー!!」
「っ!急に抱き着くな!!あぶねぇ!!」
ゴチーン!!と黒也の拳が円堂の頭に直撃しその場に沈む。
シューと煙を立てて沈んだ円堂を見て、みんなは恐ろしいものを見るように黒也を見上げた。
「い…いてぇ…」
「危険なことするからだバカ野郎!」
〝狭いんだから暴れんなよ〟と円堂を立たせ頭を乱暴に撫でる。
「わりぃ」
「わかれば良し。
で、問題はやるヤツだ。1人を踏み台にしてシュートを打てるやつだと俺か豪炎寺しかいねぇ」
「黒也にはブラックブラストがあるからそっちを優先してくれ!…てことは、豪炎寺!お前だな!!」
「俺が?」
「適任だろ。あとは…踏み台になれるヤツだが…」
黒也と円堂の視界に大きな体躯を持つ壁山が映る。
「黒也」
「俺はお前の意思に従うぜ。
何かあれば呼べ、特訓なら付き合う」
「ありがとな!!」
キャプテンと副キャプテンによる意思疎通が終わり、早速特訓に入る。
「この前も言ったが野生中の身体能力はずば抜けている。てことで喜べ。土門含め、俺が直々にしばき倒してやる」
ニッと意地悪そうに笑った黒也。
その笑顔の真意を知っているメンバーは顔を青褪めており、土門も嫌な予感がするのか頬を引き攣らせていた。
「さっ、お前らは全力で俺を止めに来い。
強豪相手なんだ、俺も手加減しねぇよ」
イナズマ落としが完成しなかった場合、みんなのフォローする力が必要になる。
そう考えた黒也はチーム全体の力の底上げに尽くすことにした。
不安定な足場からのジャンプと、
ジャンプ力を鍛える豪炎寺と壁山に負けないよう、黒也も全力で取り組んだ。
最終的にはボロボロになっていたが、
日が暮れた頃には大分上達した。
「よぉしみんなー! あと一踏ん張りだ!野生中との試合はもうすぐだぞ!!」
「「「おー!!」」」