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刀+さに 短編

やめられない


 夜食がやめられない。
 現在の時刻は一時六分。こんな時間ではあるが、お腹が空いてしまったので今からカレーでもチンして食べようかと台所へ向かう。冷凍食品バンザイ。一昨日はオムライスを食べた。
 運良く今は肥えていないけれど、年齢的にそろそろやめた方が良いかなとは考えている。考えているけれども、考えているだけで、わたしの足は「我慢は良くないよ」と言いながら台所へとわたしを運ぶのだ。
 
 ここからうちの刀剣男士の話になるが、日々戦場に出ている男たち、夜に腹が空かないわけもなく、ご想像の通り夜食部隊がいるわけです。(たぶん他の本丸もそうだと勝手に思っている)
 筆頭は肥前忠広、薬研藤四郎、大和守安定の三ふりで、他の男士に比べて台所での遭遇率が非常に高い。たくさん食べる男は好きです。口いっぱいに頬張って食べるその姿と盛られたご馳走がなくなっていくその様は見ているだけで気持ちよくて、満たされる。
 そんな彼らと夜食場せんじょうで顔を合わせるうちに仲間認定されたのか、肉まん三個パックとかチンするポテトとかチャーハンとか、いわゆる大容量パックみたいな、全部平らげるにはひとりだとちょっと……っていうのを開けるときにわたしにお呼びがかかるようになった。わたしがいなくても、ぺろっといけるはずだけれど、わざわざ声を掛けてお皿を用意してわけてくれる。これは愛だね、分け愛だね。
 
 そんなことを考えながら歩いていると、台所に到着するのなんてあっという間だった。暖簾の隙間から煌々と光が漏れている。声が複数聞こえるから何口か集まっているな、とにんまりした。

「よっ、やってますか」

 行きつけの居酒屋に入るときみたいに声を掛けて暖簾をくぐると、さっき紹介した三口が揃っていた。別々で会うことはあっても三口揃うのは稀である。

「大将、ちょうどいいところに来たな。起きてたら連れてこようと思ってたんだ」

 薬研が鍋を掴みながらこちらに目を向ける。その隣では安定が蕎麦の袋の裏面を睨みつけており、肥前はネギを刻んでいた。

「お蕎麦食べるの?」
「うん。僕と薬研と肥前が揃っちゃったらもう、これくらいやっちゃった方がいいかなって。主も食べるでしょ」
「ちょっともらう」
「了解」

 当初の予定だった冷凍カレーはまた後日にしよう。深夜の蕎麦も十分に魅惑的だ。何か手伝えることはないかと肥前の隣にいそいそと向かったが、彼は無言で折りたたみの椅子が置いてあるところへ顎をしゃくった。座って待ってろと言いたいのはわかったが、めげずにそのままでいると肥前は大層わざとらしく「ハァー」とため息をついた。握っていた包丁を丁寧に置いてから、椅子を用意してわたしを座らせると、冷蔵庫とキッチン用具入れをガサゴソ漁る。海苔とハサミと小皿を取り出してきて、わたしの前に置いた。

「おまえは刻み海苔だ」
「わたしは刻み海苔じゃない」
「切れ」
「はあい」

 私たちのやりとりを見ながら薬研と安定がくすくす笑っている。なんか良いなあ、なんて海苔を可能な限り細く切りながら思った。真剣にハサミを動かしていると茹で時間は終わったようでザバっとお湯を流しに流す音が聞こえた。顔を上げると頬杖をついてこちらを見ていた肥前と目が合った。

「いつまで切ってんだ」
「わあ、主たくさん切ったね。てんこ盛りだ」

 一度あげた顔を小皿を見るためにもう一度下げる。そこには安定の言う通り薬味に使うには多いてんこ盛りになった刻み海苔の山があった。

「肥前くん、見てたなら言ってくださいよ」
「さっき言った」
「遅いよ」
「まァ、たくさんあった方がケチらなくて良いんじゃねえか」

 薬研はそう言いながらテーブルの真ん中に大きい平皿を置き、その上にいっぱいに蕎麦が入ったざるを置いた。

「このままでいいよな。水で冷やしただけだから、ちとぬるいかもしれん」
「オッケー、そしたら僕めんつゆの中に氷入れようかな」

 ぬるい蕎麦に適度なネギと山盛りの刻み海苔を添えて大好きな仲間たちと箸をつつき合う深夜一時過ぎ。この愛おしい時間があるなら、やっぱり夜食はやめなくてもいいかもしれない。
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