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刀+さに 短編

プテラノドン


 シールを集めるのが好きで、気に入ったものはすぐに買ってしまう。大きいのも小さいのも、ぷくぷくしたのも中に水が入っているものも、全部かわいい。見てるだけでもわくわくするし、実際に使うときなんかはニタニタひとりで笑うのだ。
 そんなわけでシール売り場にはすぐに吸い込まれるし、気がつくとレジでお会計をしている。シールの収納場所はあっという間にいっぱいになって、入りきらないものが机の上に置きっぱなしになってしまうこともある。それを見逃してくれないのが、一期一振であった。「主、大事なコレクションが置きっぱなしになっていますよ」「おや、また増やしたのですか」「あるじ」声色は優しいのに、ちくちくわたしを刺してくる。片付けられないのであれば買うなとおっしゃいますか。
 わたしの本丸では、皆が皆わたしを甘やかしているわけではなく、歌仙兼定、燭台切光忠、一期一振、へし切り長谷部らはさながら学年主任の先生のように、よぉくわたしの行動を見ている(ちなみにうんと甘いのは薬研だ)。今日も文房具屋さんでノートを購入するついでに新しいシールもお迎えした。デフォルメされて随分と可愛らしくなった恐竜のシールだ。うきうきする一方で、一期に見つからないようにしなければと思った。でもそういうときほど見つかってしまうもので、本丸の門をくぐったところで水色の髪が目に入った。

「帰られましたか」
「ただいまァ」

 軽く挨拶を交わして自室に向かう。エンカウントはしたものの、相手もわざわざ何を買ったかは聞いてこないから、このまま片付けてしまえば問題なし。完全勝利Sだ。

「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」

 決して、悪いことをしているわけではないのに、反射的に机の上に並べたシールを抱えるようにして隠してしまった。

「……今、何か隠しましたな?」
「いえ、いや、はい」
「シールですか。文房具屋に行ったと聞きました。前田から」

 逃げられないかと諦めて一期を手招く。持ってきてもらったお茶とおまんじゅうを机のはじに置いて改めてブツを並べる。堂々としようと覚悟を決めた。

「これね、買ったの」
「ええ」
「かわいいでしょ、恐竜」
「そうですね」
「ピンクのプテラノドンは一期にあげる」

 小言を言われるかと思ったが、そんなことはなく話を聞いてくれた。一枚台紙からペリッと剥がして一期の右ほっぺにはりつけた。なんとも言えない空気が流れたが、一期が口を開いた。美人の沈黙は怖い。

「別にシールを買うな、と言っているわけではないんですよ」
「だめと言われても買うと思う」
「そうでしょうね。主はそうだと思います。ですから……」
「でも目が言ってるんだよ」
「ですから、片付けてくださればいいんです。散らかさなければ」

 わたしの言うことを半ば無視しながら一期は続けた。まだ何か言っている気がしたが、わたしはずっとプテラノドンと見つめあっていた。かわいい。

「聞いておられますか」

 ため息をつきながらおまんじゅうを手に取った一期は、包みから値札シールを綺麗に剥がして、それをわたしの左ほっぺにはりつけた。

「まあ確かに、はりつけるという行為は楽しいですね」
「楽しさが伝わってよかった」
「今なら主が格安の百九十八円」
「貴重な審神者が格安すぎるよ」

 お互いにほっぺにはりつけたまま、ハハと笑う。わたしはシールを引き出しに無理やり詰めて、一期はそれを見届けてから立ち上がった。今日の小言はここまでらしい。
 結局、夕食のときまでわたしは百九十八円で、一期はプテラノドンを引き連れていた。秋田くんが目を輝かせていたから、秋田くんにはきいろのトリケラトプスをはってあげた。そのあとわたしはシールを片付けるのを忘れて、やっぱり一期に怒られた。
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