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刀さに 短編

告白の行方


 宗三に告白された。二週間前に。

「どういうつもりです」
「どういう、つもり、とは」
「僕の告白を反故にするつもりですか、と聞いているんです」

 ぐ、と息が詰まる。反故だなんてそんなつもりはなかったが、今の宗三との距離感が心地良すぎて関係を変えたくなかった。完全にわたしのわがままにより彼を待たせてしまっている状態だ。告白をされた時点で関係は変わってしまっているのでは、なんて意見は聞かないことにする。勿論、宗三のことは大好きだ。しかし恋仲になって何かが変わってしまったら、と考えるとなかなか一歩が踏み出せなかった。
 ただ、ひとつ言い訳をさせてもらうと宗三も悪いのだ。本当に唐突だった。なにも大福を食べてる時に言わなくたって良いではないか。そりゃあ、「ちょっと待って」になるではないか。ぐるぐると頭の中で考えながらしばらく黙っていると、痺れを切らした宗三が口を開く。

「もう一度言います。好きです。愛しています。僕を」
「わァ!」

 あの日のように、また急に告白を始めるもんだから、宗三の口を手で塞いだ。彼は不機嫌な顔をして、こちらを見やる。

「……」
「ぎゃっ」

 大人しく黙っているなと思っていると、あろうことか私の手を舐めてきた。驚きで手を離すと、宗三はその手を掴んで引き寄せ、逃げられないように私を抱き止める。密着しているせいで宗三の匂いが鼻をくすぐった。どうにか離れようと押し返すが全く動かない。薄い体をしているくせに、見た目に反して力強かった。

「僕を貴方の最後の男にしてください、貴方にだったら執着されるのも悪くない」

 抵抗している間も口説き文句が止まらず、流石に体が火照ってきた。

「こ、恋仲になったら、ちゅーとかするんだよ?私にできる?」

 無駄だとわかってはいるものの、どうしても悪あがきをしてしまう。愛だの恋だの、この刀が理解していないことはないだろうが、聞かずにはいられない。だって私は宗三のことが大好きどころか、ベタ惚れなのだ。そう言う関係になったら、否応なしに彼を求めてしまうだろう。やっぱり無理です、なんて言われたら死んでしまう。

「愚問ですね」

 そう言うと、宗三は私に顔を近づけ、唇に噛み付いてきた。何が起こったのかと目を白黒させていると、もう一度口付けが降ってきた。そっと触れるだけの短くて優しい口付けだった。

「良いよって言ってない。私、宗三に好きなんて言ってないのに」

 睨みつけながら文句を言うと、

「呆れた。聞かずとも答えなんてわかってるんですよ。貴方の視線はわかりやすすぎる」

 と宗三は鼻で笑いながら言い放った。私の気持ちがバレていると思うと悔しくて、その余裕もムカついて、反抗心で黙ってそっぽを向いていると、耳元に口が寄せられた。そして心なしか手つきが怪しくなっている気がする。

「答えをもらえないなら、今、ここで、抱きます」
「ごめんなさい!好きです!凄く重い女なんですけど、よろしくお願いします!」

 抱くという単語に恐れをなして勢いよく答える。この雰囲気では本気で抱いてくるだろう。しかし、大きな声で元気よく答えたのに宗三の手は止まらなかった。それどころか本格的に脱がしにかかってきている気がする。

「重い女上等です。覚悟なさい。僕を待たせた二週間分まとめて愛します」

 解放されるのは何時間後になるだろうか。言っても無駄であろう「お手柔らかに」という台詞を飲み込んで、たった今、恋仲になった男の首に腕を回す。すると満足気に「優しくしますよ」と呟いた。
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