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摩擦


 ガチャリと、錠の開く音がする。テレビも何も、音の出るようなものは一つとして点いていないため、恐らく玄関の鍵が開いた音だ。
 それに気づくと、スザクは微睡みかけていた頭を奮わせ、音の方に目をやった。やがて開くであろう扉をじっと見つめ、何かを待っている。
 その表情は、未だ睡魔が居座っているためか、それとも何か別の理由か、眉を寄せ目を眇め、とても機嫌が良いとは思えない様相だ。
 やがて玄関とリビングを繋ぐ扉がゆっくりと開かれ、男が一人、入ってくる。白いシャツに黒のスキニーというラフな格好ではあるが、目鼻立ちのすっきりとした美麗な顔立ちから、それだけでも絵になるような麗人だ。
「おかえり、ルルーシュ」
「……起きてたのか」
 麗人はスザクを視界に入れるなり眉を顰め、小さく言った。
 もう日付が変わって二時間あまりが経過している。規則正しい生活を送るスザクが、こんな時間まで起きているだなどとは思わなかったのだろう。ばつが悪そうに目をそらし、ため息をついた。
「どこ行ってたの」
 ルルーシュの言葉はさらりと躱わし、スザクは問うた。その声の低さ、冷たさに、スザクは内心で自嘲した。
 その態度が気にくわないのか、ルルーシュもまた眉間のシワを深くし、吐き捨てるように言う。
「どこでもいいだろ。お前に関係ない」
「関係あるよ。普通恋人がこんな時間まで出歩いてたら心配するって、思わないの」
 荷物を床に下ろしながら、ルルーシュはまた深い嘆息を吐く。ひどく気だるげに、髪の隙間から横目でじとりとスザクを見る。
 スザクの言葉にもはや白々しさすら覚えるルルーシュは、口の端を一方だけ吊り上げ、ハッと鼻を鳴らして笑った。
「心配。お前がか」
 徐にルルーシュは冷蔵庫を開け、上から下まで確認しながら、とても愉快だという風に薄ら笑いを浮かべている。まるで馬鹿にされているかのようなその態度に、スザクの瞳が一層細くなった。
「僕が君の心配するのは、何かおかしいか」
「……いいや?」
 やがてその中から水の入ったペットボトルを一本取り出すと、肘で乱暴に扉を閉める。バタンと大きな音が静寂に響く。そして真っ直ぐにスザクを見据えながら、それにぐっと力を込めた。

「俺はお前の恋人、だからな」

 パキッと、乾いた音が静寂に響いた。
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