短編小説

 バシュウ、バシュウ、永久の暗闇の中で、電気の光が何度も閃く。
 燈京、元素結界内部に出現した侵食領域の中、純位の志献官とデッドマターとの乱戦現場である。

 「サクッと防衛しちゃいましょ!」
 大ぶりの電気銃から放たれた光が、まるでミラーボールのように常闇を照らす。闇の中、よりどす黒く溜まった影が、蜘蛛の子のごとくあちこちへ散る。
 三宙は冷静に自身を取り囲むデッドマター形成体の数と、それらとの間合いを瞬時に測った。光のない侵食領域内部でも尚外さぬ奇抜な遮光眼鏡が、元素力をとらえてきらりと光る。

 いち、に、さん……六体。可もなく不可もない数字だが、油断は禁物だ。
 今回観測されたデッドマターは、一般に群体型と呼ばれるもの。成人男性よりも若干大きいくらいのダミー用形成体を複数発生させ、その中に本体を紛れ込ませるのが特徴だ。本体はダミーと同じ姿をしていることもあれば、攻撃能力を持たないコア状に変化してどこかに隠れていることもある。

 三宙は電気銃を構え直した。――この形成体達を一掃する。
 ダミーの中に本体がいるかどうかわからない以上、どこかに隠れているかもしれない本体を探す役と、ダミーを処理し、いるかもしれない本体をまとめて倒すことを狙う役が必要になる。
 既に役割分担は済んでいる。三宙の役割は後者。できるだけ速やかにダミー達を片付け、場合によっては本体の捜索に合流する。
 
 三宙は黒々と闇を吐くダミー形成体を見上げる。人型というわけでもなく、かといって明らかなモデルのある造形でもない、没個性な形成体だ。六体の形成体は三宙をぐるっと取り囲んで、何をするでもなくただ立っている。

 間合いを測っているのだ、三宙は直感的にそう思った。ダミー達は分割されている分、他の型の形成体よりも侵食術による攻撃力に乏しい。数で勝っているとはいえ、一体ずつ倒されてはたまらないだろう。三宙の隙を見つけ出して、そこを目掛けて全員でかかってくるはずだ。

 しかしそれは――――三宙も同じこと。

「ここが腕の見せどころ……っすよねェ!」
 大音声を上げるや否や、三宙は右側に立つ形成体を、三体続けざまに撃ち抜いた。そして、形成体の倒れた右側に向かって走り、追い越す。
  
 黒い砂を巻き上げながら軽やかなステップを踏む後ろで、レンコンの如く穴だらけになった形成体が仰向けに倒れた。
「どんなもんよ〜!」
 
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