ギャグ系一護✕織姫のお部屋








「…ふふふ、一護、次のミッションだぜ。」
「…何だよ。」
「だからぁ!その振りかざした手は下げて聞いてくれる!?」

啓吾が右腕で頭を庇いながらそう言うので、俺は仕方なく手を下ろす。

「ちっ。…で?」
「今から、井上さんと屋上でランチするんだろ?そこでさ、ブラのカップのサイズを聞いて来てく…げほぁっ!!」
「…くそっ!」

啓吾の腹に条件反射の一発を入れて。
俺は自分の弁当をひっつかみ、井上の待つ屋上へと向かった。








「あ~…井上。」
「あ!黒崎くん、いらっしゃいませ~!一緒にパン食べよう!」

実に無邪気に俺を待っていてくれた井上に、気まずさを隠すように軽く片手を上げて。
2人並んで腰を下ろし、俺は弁当を、井上はパンの入った袋を広げる。

「…あのさ、井上。」
「むぐ…なぁに?」
「そ…その…。」
「うん?」

しばらくは2人で当たり障りのない会話を楽しんでいたけれど。
あんなに沢山あった筈の菓子パンが、あっという間に残り少なくなったことに気がついた俺は、ついに覚悟を決めた。

「…もし…良かったら、教えてくんねぇ?井上の…その…Aとか…Bとか…ってヤツ…。」

俺が思い切って…けれど極めて小声でそう尋ねれば。
井上はきょとんとした後、ちょっと困った様な顔を見せた。

「…え?やだ、黒崎くんたら…意外とはっきり聞くんだね…。」
やべぇ、引かれた!当たり前だけど!

「うあ、悪い!ごめん、嫌なら…!」
「でも…黒崎くんならいいよ?」
「へ?」

慌てて前言撤回しようとした俺の耳に、本日二度目のまさかの言葉。

「私なりの、成長の証だもん。でも、他の人には内緒だからね。」
「も…勿論だぜ!」

そう言って、恥ずかしそうに肩を竦める井上に全力で頷く。

…いや、本当に成長したよな。
高一の頃からデカかったけど、高三になってからの伸び率が更にハンパなくてだな…!
制服もかなりキツそうだし、いつかボタンが弾け飛ぶんじゃないかと、俺は心配で心配で…!

「はい、どうぞ!」
「…はい?」

そんなことを考えていた俺に井上が差し出したのは、1枚の紙。

「黒崎くんになら、教えてあげるね。今回のは、自分でも良かったなぁって思ってるの。」

…それは、今日担任から渡されたばかりの、模試の結果だった。







「…すげぇな、井上。判定AとBばっかじゃねぇか…。」
「えへへ、たまたまっすよ。それで、黒崎くんは?」
「……(恥ずかしくて見せられねぇよ…)。」












「一護ぉ、最後のミッションだぜぇ~!」
「…何そんな遠くから話しかけてんだよ。」
「殴られるからに決まってるだろぉ!?」

夕方。
1日の授業が終わり、部活やらバイトやらへと皆が去っていった教室の端から、啓吾がそう叫ぶ。
殴られるのが嫌なら、俺に何も要求しなきゃいいのに。
啓吾は手に入れた権利は何が何でも行使したいタイプらしい。

「井上さんがぁ、夜寝るときにもブラを着けてるかぁ、聞…ぎゃんっ!」
「デカい声でなんつーこと叫んでるんだよ、バカ野郎!」

偶然、たまたま、実に都合良く手にしていた黒板消しを啓吾の顔面に投げつけて、教室を出る。

今日はバイトの上がりが遅い井上を、バイト先まで迎えにいく予定があるんだ。








「…あのさ、井上。」

すっかり暗くなった帰り道。
俺の右手にはバイト先からもらった廃棄パン、左手には井上のちっさい手。

「はぁい?」

街灯に照らされた井上の無垢な瞳が、俺に向けられる。

「井上は…さ、この後飯食って、風呂に入るだろ?」
「?…うん。」
「…で、でさ…その後…夜は毎晩ちゃんと着けてるのかな…ってさ…。」
「うん?」

少しの沈黙。

多分、遠回しな俺の質問の意味するところを考えている井上と、それをドキドキしながら待つ俺。

どちらもしばらく黙ったまま2人で歩いていれば、やがて井上が「そっか!」と小さく声を上げて、嬉しそうに俺を見た。

「…うん、着けてるよ!」
「…!」
「やっぱりね、毎晩コツコツ続けるのが大事だと思うんだ。」

成る程、そうなんだな。
あのデカさで地球の重力に逆らい続けるあの丸み、弾力。
やっぱりあれを保ち続けてるのは、井上の日々の努力の賜物なんだな…!
「で、どんなデザインの…なんだ…?」
「うんとね、すっごく可愛いやつだよ!使い心地もいいから、同じのばっかり買っちゃうの。」
「へ、へぇ…。」

俺の突っ込んだ質問にも、屈託ない笑顔で答えてくれる井上。

「良かったら、今からウチに寄って見ていく?」
「な…何ぃっ!?いいのか!?」
「うん、いいよ。」

み、見せる…って、ブラそのものをか?
それとも…「黒崎くん、せっかくなら着けてるところも見たい…?」なんて話になって…。

ちょっ…ヤベェ、この展開だと場合によっちゃ、いくトコまでいっちまうか…?

井上からの大胆な誘いに、否が応にも膨らむ俺の期待。
俺は繋いでいる井上の手を、きゅうっ…と握りしめた。







「…はい、これが私の家計簿だよ!って…あれ?どうしたの?黒崎くん。」
「…………。」













「はよー、一護!なぁなぁ、昨日の3つのミッションの結果を報告してくれよ!」
「…断る。」
「な、何でだよ!?」
「啓吾の願いは、『井上に質問してくること』だろ?その中身まで教えろ、とは言われてねぇよ。」
「そ、そんなぁっ!一護の意地悪、ズルいぞぉ!一護だけが井上さんの秘密を知っているなんて…!」
「ウルセェ。」


…まぁ俺の知ってる秘密も、今んとこ大したもんじゃねぇけどな?

畜生め。




(2015.10.03)
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